第8話『聖竜(マエストロ)と聖女(ネオエルフ)』
マリア、イヴ、クロスは。町の中心部から見えるマルドゥ城へ向かうことにした。イヴの保護をお願いするために、国王カルティ・マルドゥに合う必要があるからだ。国王はどんな人柄かは町の人やイヴに聞いた。イヴも噂でしか知らない部分があるらしい。イヴが言うには「温厚で民に優しい」とのこと。町の人から聞いた感じでもイヴと言っていたことに近い返答だった。気掛かりなのはカルティ・マルドゥに合うのが難しいらしい。優秀な警備が整っていて面会をするには何日も前から予約をしないとダメだとか。だが一度城に行かなければなんとも言えないし行動ができないため、3人は城を目指す。
『王カルティ・マルドゥか。顔も見たことないからわからないがマリアは会ったりした事は?』
『私は過去に一度だけです。お顔は見たことありませんが、とても人柄が良さそうなお声でしたよ?』
マリアは顎に人差し指を置いて話す。イヴもひょこっと顔を出し。
『私は名前だけしか聞いたことがないです。どんな方㌨なのか楽しみですが。も、もし怖い人だったら....うぅ』
『大丈夫ですよ!ただのオジサンです!』
その返答にズッコケそうになるクロス。マリアはボケをかます位には気持ちに余裕が出来たと言っても良いのかもしれない。そう感じた。
『ですが。お城に行くのは初めてなんです。お声を聞いたのは演説放送だけでしたので。』
演説放送。各国が数ヶ月に1回自分の国をアピールしたり、他国の直すべき点等々を話す場。
『演説放送か。真面目に聞いたことがないな、俺は山篭りさせられた時期があったからな。』
『山篭り?』
イヴは首を傾げる。
『あぁ、イヴには言ってなかったけど。俺の父親は色々極めていてな。それで山なり海なり連れていかれたんだよ。』
なるほどぉ!とイヴは笑顔で答える。
『でも山篭りって何をなさっていたんですか?』
マリアはクロスに質問をぶつける
『まぁ。熊とか倒したり......まぁ獣退治ってやつだよ』
山篭りの話なんて長くなりそうだから掻い摘んで話した。するとイヴが急に立ち止まる。
『どうした?何かあったか?』
『あ、いえ。熊を倒せる力がある身体にはあまり見えなかったので、あ、別に弱そうだなとかそういうのではないですよ!?』
イヴは慌てて訂正する。クロスは苦笑いで。
『わかってるよ、あはは..まぁ確かに見た目はあんまり筋肉質じゃないけど。力とかはあるよ、一般男性並よりちょっと上くらいにはね?』
力こぶを見せるとマリアがクスクス笑う。
『ふふっ。クロス様は熊を倒す力があるのですから私やイヴを守ってくださいね?』
ニコッとマリアが微笑むとイヴも口に手を当ててクスクス笑う。
『マリアさんやクロスさんが居てくれるなら私は何も怖くありませんねっ』
イヴは俺達の正面に出てくるっと回ってそう答えた。
『あははっ、そう言われるとがんばらないといけないな。』
クロスはイヴに微笑む。話をしながら歩いていると。一際大きな正門が現れた。
『で、でかいな。これが町の人が言っていた聖平和門か。』
俺達は門を見上げる。イヴも、「ほぇ」となんだか気の抜けた声を出す。
『いよいよです。王カルティ・マルドゥにイヴさんを保護してもらえるか。話し合うのですっ』
マリアはやる気満々。俺も深呼吸する。スーハースーハー。すると近くを警備していた騎兵隊が近づいてきた。隊長らしき男性が俺達に話しかけてくる。
『君達、城に何かようかな?町の者には見えないが』
隊長らしき男性は俺やマリアを上から下まで見る。
『俺達は王カルティ・マルドゥに話があって来ました。』
俺がそう告げると。名簿を開く。
『君達名前は?予約をしているのか?』
ペラペラ捲りながら話しかけてくる。
『俺はクロス・ハイド。こっちがマリア・イクリス。この子がイヴ・サクリスです。予約はしていません、ゲリラです。』
隊長は名簿をパタンと閉じて。
『悪いが王との面会をするには前日には予約してくれないとダメなんだ。悪いがお引き取りを』
やっぱりダメか。予約しないと会えないのはわかっていたが、なんとかなると思った考えが甘かったか。するとマリアが
『お、お願いいたします!このイヴさん(このお方)の事についてご相談がありまして、なんとかならないでしょうか?』
マリアは俺より前に出ると強気に喋る。隊長らしき男性は頭を掻きながら。
『困るんだよね。直々に許可が降りないとねぇ。おっと女王のお帰りだな、悪いがお引き取りを。我々も忙しいんだ。』
隊長らしき男性に、しっしっ!と追い払うようにされる。男性は空を見つめている。俺達はそれに釣られて空を見ると。
『な、なんだあれは!?ど、ドラゴン?なんでこんなとこに?』
マリアは俺達に聞こえるように呟く。
『あれは聖竜というドラゴンです。しかし、聖竜は聖女かそれ以上のエルフでないと言うことは聞かないはずです。』
マリアはゆっくり降りてくる聖竜と、背中に跨る女性を見つめる。イヴもマリアの横に立つ。
『マリアさん。聖竜に跨っている女性はもしかして。』
『はい。きっと上級のエルフ。聖女に違いありません。特長的な耳が長いですし。』
俺はちょっと会話に付いていけないが雰囲気だけで察しがついた。聖竜と呼ばれるドラゴンが着陸し、隊長らしき男性がその女王に近づく。何やらこちらの事について話しているように見える。女王は話を聞き終わりこちらに向かってくる。マリアは俺の袖を掴む。女王は俺達の正面に立ち。
『私は。セレメリィ・マルドゥと言います。この王都マルドゥの女王にして。』
彼女の持つオーラに俺達は.....
『エルフの中で上級の。聖女をしています。お話を伺います。天女のお二人さん?』
圧倒されてしまった。