第6話『病弱な少女(エルフ)』
マリアとクロスは仕事内容が書かれた張り紙を見に掲示板へ向かう。内容は様々で、獣退治に護衛。土木作業と言った自分では中々できない。または困難な仕事を掲載していた。クロスはその中から一番手頃な仕事をチョイスする。
『まずは軽い仕事から掛かろうか。お買い物だが』
クロスはマリアに張り紙を見せる。
『町にお買い物をしてきてくださいと言った内容ですね。』
内容の依頼主の名前はイヴ・サクリスと書かれていた。女の子のようだ。
『歳がいくつかわからないけど。買い物にいけないってのは何故だろうか?』
俺は疑問に思いながらカウンターへ向かう。
『お忙しい方とかでしょうか?活気のある町ですし。』
『どうかわからないが。よし手続きは終わったし行こう。』
カウンターで手続きを終えて派遣所を後にする。町を歩いているとマリアから素朴な質問をぶつけて来る。
『そう言えば。派遣所での手続きはどう言う事をなさるのですか?』
『あぁ。まずは派遣所にこの仕事をしたいと張り紙を渡すよな?その時に受注金を払うんだ。今回のはお買い物だから500g派遣所に支払う。何故支払いをしないとダメなのかと言うと、依頼主は仕事を頼みたい人を探したい。けど自分から探しても見つからない。そんな時に張り紙をしてもいい場所。派遣所に頼むんだ。そこで場所提供をする代わりに俺達受注者が場所代を払う。報酬は依頼主本人が支払う形が基本だな。依頼主が場所代を支払わなくていい理由は、仕事を与える側だからと言った理由だ。』
マリアは目をキラキラしながら。
『そんなシステムだったなんて知りませんでしたっ。三者損がないように出来ているんですね!』
俺が頷くと納得したようで受け取った依頼主の自宅までの地図をマリアは見る。
『お買い物内容はまだわからないのですね?てっきり書いているものかと。』
『そこもプライバシーの問題があるんだろう?特に女の子みたいだし。』
マリアはなるほど!と頷く。しばらく話しながら歩いていると。目的の家に着く。場所は活気ある町から少し離れた路地にある家。
『ここみたいだな。少し町から離れている見たいだが。』
『町から少し離れているだけですが。歩いても10分くらいですよね?』
マリアは顎に指を置き首を傾げる
『まぁ。会ってみればわかるだろう?行こうかっ。』
マリアの手を掴み歩き出す。依頼主。イヴ・サクリスの下へ。家のチャイムを鳴らすと声だけが返ってくる。
『どうぞー。』
声から察するに15歳くらいか?扉をあけて中に入っていくと、俺は名乗る。
『派遣所から来ました。クロス・ハイドです。こっちは。』
『マリア・イクリスですっ。』
俺達が目にした少女はベッドに入っていた。
『わざわざありがとうございますっ。私はイヴ・サクリスですっ。どうぞこちらへっ。』
ベッドから降りてくるとテーブルに誘導してくれた。俺達は椅子に座ると、イヴも正面に座る。俺は軽く質問をした。
『イヴでいいかな?俺もクロスでいいよ。』
イヴは頷くと俺は話を続ける。
『見た感じでの質問なんだけど。体調が悪いのか?町に買い物にしてはそこまで遠くないと思うし。ベッドにも居るみたいだから気になって。』
イヴは質問に答えてくれる。
『体調が悪いのは確かです。えとマリアさんと同じエルフなんです。』
イヴはニット帽を脱ぐとエルフの特徴である耳が出てくる。
『支援型のエルフなんでしょうか?』
マリアも質問をする。
『いえ、戦闘型です。でも仕える主はもう居ませんし。それから体調も悪くなりまして。生まれながらあまり身体は良くなかったので。』
苦笑いをしながら答える。今の会話で気になったとこを俺は質問する。
『もう居ないってことは離れ離れとかか?家も1人みたいだけど。』
イヴはテーブルにある写真立てを見る。そこには家族と思わしき人達とイヴの姿が写っていた。
『私の主は養子で入ってきた兄でした。当時は家族と旅をしていて、最後にたどり着いた場所がここでした。』
マリアと俺は最初までは普通に聞いていたが。
『ですが。ある日この王都に忍び込んできた盗賊が私達のこの家にやってきました。もちろん私は兄に家族を守るために。家を守るために交わる事を言いました。でも兄は。たまには兄として家族を守りたいと言って。愛剣を握って盗賊に立ち向かいました。母もエルフでしたが支援型で。父は人間でしたので家にあるもので立ち向かいましたが。盗賊に首をはねられ。即死。母も私を庇い背中を刺され。私はどうすることもできず。母を刺した盗賊から逃れる為に兄が向かった盗賊の方へ走りましたが。既に居なくなっていました。その日は大雨で足跡すら分からなくなって。母や父を殺した盗賊が後ろから現れて私にこう言いました。お前みたいな化物は価値がある、成長したころにまた来てやる。と』
その話を聞いていたマリアは口を手で抑えていた。俺もあまりの残酷さに俯いてしまう。そんな過酷な状況でも彼女は一人で生き続けた。俺ならばきっとこの世界にはいないだろう。そんな彼女の強さはどこからきているのだろうか?
『イヴはつらくないのか?あまりにも酷いじゃないか。俺なら生き続けるのも嫌になる。』
すると。イヴはニコッとし。
『私はずっと母と一緒に花を植えていたんです。その花を見捨てて死ぬことなんてできません。今では花も私の家族です。育てるのは生きるもの全て同じ道理です。ですから。私は笑っていられるんですっ。』
マリアは耐えかねて、椅子から立ちイヴを抱きしめる。
『よく頑張ったね、泣きたい時は泣いていいんです!そこまで強くならなくても!』
イヴはゆっくり首を横に振る。
『強気とかじゃないです。毎日泣いていたんです。でも泣いてばかりじゃ何も変わりません。ですから。私は花を育てて。成長していく姿を見ていきたいのです。』
マリアは、そうなんだね。やっぱりすごいよ。そうイヴに呟く。俺も負けじと。
『俺はただの旅人だった。だけどマリアと出会って目標が決まったんだ。俺も自分の目標に向かって精一杯がんばるだけさ。だからイヴもがんばれ!』
はいっ!と元気良くイヴは笑顔で答えてくれた