第5話『小さな勇気』
『クロ....起きて.....さい。』
誰かに呼ばれている。だがもう少しだけ寝たい俺は布団に深く潜ると。
『クロス様っ!起きてくださいませ!もうお昼なんですよ?!』
ガバッと布団を剥ぎとられる。
『んんー、もう少しだけ寝かせてくれぇ。』
俺はマリアを見ながら訴えるが。
『ダメですよ。今日からお仕事をはじめるんですよね?なら早く行動しないと。』
マリアは布団を畳む。俺は諦めてむくりと起き上がる。
『そうだよな....んんー!!ふぅ』
俺はベッドから降りて身体を伸ばしながら窓の外を見る。夜とは違い広場も人で溢れている。
『私早く町に行きたいですっ。活気のある場所に行くのは大好きなんです。』
マリアは目をキラキラさせている。森で会った時とは大分違う。素直に可愛い。そう思った。
『身体の調子はどう?よく眠れたか?』
俺はマリアに聞いてみる。
『はいっ!バッチシです!』
『そうかっ、じゃあ早速準備をして町に行こう!』
俺とマリアは荷物をまとめて、お世話になった宿を後にした。人の往来が激しい為。一度広場へ向かう。噴水の周りにベンチがあるのでそこへ腰掛ける俺とマリア。
『まずは派遣所を探さないとな。初めて来たから場所がわからないな。』
大通りにそれらしい看板は見当たらない。路地や少し離れた場所にあるのだろうか?考えていると。
『やはりここは人に聞くのが定石かと。聞き込みをしてみませんか?』
マリアに言われ俺は立ち上がる。
『それがいいな。じゃあいこうか』
マリアに手を差し出すと。
『はいっ、行きましょう。』
マリアは手を掴み立ち上がった。
町の人に聞き込みをしていく。王都の人達は親切に答えてくれた。派遣所はいくつかあるらしく。その中でも人が一番出入りが激しい場所を選びそこへ向かう。
ゆっくり歩きながらマリアに質問をする。
『そう言えばマリア。あの時俺と交わって変身したよな?あの姿は格闘っぽい装備だったけど、他のエルフも同じなのか?』
『いいえ。それぞれ特化した武器をエルフは持ちます。私の場合は格闘特化タイプです。まだ他の戦闘型エルフと会っていないので詳しくはわかりませんが。見分け方としてはエルフの瞳の色で判別をします。私は灰色です。』
マリアの瞳は灰色だが。濁ったような感じではなくシルバーに近いような色。見ていると吸い込まれそうになる。
『綺麗な目だな。でも他のエルフを相方に持つ奴と当たったりしたら。』
そう。全ての者が俺達のように悪い奴を懲らしめる活動なんてしない。中には戦いが好きな奴だっているはずだ。そう考えていると不安や緊張が込み上げてくる。
『大丈夫です。私が付いています。ね?』
マリアはそっと手を繋いでくる。繋いだ手から伝わる温もり。それだけで不安や緊張は少しばかり消えた。続けて質問をする。
『エルフを相方に持つ人をなんて呼ぶんだ?』
『重装の契約者と呼んでいます。または姫の騎士です。後者はあまり使われていませんが。』
馴染みのある呼び方が前者と言う訳か。納得していると。
『ここでしょうか?』
マリアに言われて着いた場所。確かに人がよく出入りしている。年齢層は様々だ。早速派遣所に入る。
『すごいな。ここまで賑やかな派遣所は初めてだよ。』
あまりの多さにビックリするが、中にはエルフと思われる女の子と男のコンビも数名居るようだ。なぜエルフかどうかわかったかというと。人間の女の子とエルフでは決定的な違い。耳だ。それだけで解る。
『クロス様。早速どんなお仕事があるか探してみませんか?』
マリアが掲示板に指をさす。貼り紙が沢山掲示板に並んでいる。
『そうだな。俺達の第一歩を決めようかっ。』
マリアはニッコリ微笑む。俺達は掲示板の貼り紙を見に歩き出した