第4話『王都の空と俺達と。』
俺達が王都マルドゥに着いた頃には、空に太陽が少し上がり始めていた。
町の噴水広場で開いている宿を探そうと考えて居た時のことだった。
『しまった。森にリュックサックを置いてきてしまった.....』
『え?』
マリアは俺の顔を見る。
『いや、あの時はマリアの悲鳴が聞こえて直ぐに行動しちゃったからな。置いてきたリュックサックに服とかお金が入った袋が入れてあるんだ。お金がないと宿を使えないし。困ったな...』
俺は髪を掻きあげる。困った俺をずっと見てくるマリアは。
『私もお金は持っていないですし。朝も近い時間、まだ誰も起きては居ないでしょうし。』
二人揃って考える。そう言えばと俺は自分の履いている右足のブーツを脱ぐ。ブーツの底を捲ると。
『忘れていたよ。何かあってもいいようにこの中に少しだけど隠してたことを。』
紙幣を取り出すといくらあるか計算する。どうやら食事ができるくらいの金額はあるみたいだ。
『これだけあれば一日くらいは泊まれると思うし。開いている宿を探そう。』
森を抜けてからろくに休めていないし。
マリアも眠そうな顔をしているし、これ以上歩かせるのは可哀想だ。俺はマリアの手を掴み歩き出す。
『く、クロス様?』
マリアに声を掛けられ。
『なんだ?早く宿を探さないと』
話しながら歩く。
『て、手をいきなり掴まれたので。その恥ずかしくて』
俺は無意識にマリアの手を掴んだのか。そう言われて立ち止まり思わず掴んだ手を離す。
『わ、悪いっ!俺も疲れてるのかな、あはは...』
苦笑いをする俺。マリアは少しだけどクスッと笑ってくれた。マリアの笑顔を見ると心が暖かくなる。マリアの顔をじっと見ていたせいか。
『わ、私の顔に何か着いていますか?』
『えっ?あ、いやなんでもない!』
慌てて目を逸らし歩き出す。ちょっとだけ空気が気まずくなりながらも宿を探す。しばらく町を歩いていると灯りが点いた看板を見つける。
『ここなら開いてるみたいだ。今日はここで休もう。』
マリアは頷く。俺たちは宿のスタッフに部屋は空いているか訪ねて、三階の一部屋なら空いていると教えてくれた。スタッフから鍵を預かり、マリアを連れて三階にある部屋に向かう。階段を上り切り部屋に移動中後ろからマリアが話しかけてくる。
『クロス様。私宿を利用するのは初めてなんです。ずっと帝国のボロ屋で閉じ込められていましたので』
俺は立ち止まる。マリアに背を向けたまま。
『でも今は違うだろう?今はこうしてお金は払わないといけないけど。食事もお風呂も寝泊りもできるんだ。とりあえず今は休もう。募る話とかはまた起きてからな?』
それだけを伝えると廊下の一番奥にある扉を目指し歩き出す。マリアが着いてくる足音がしない。振り向くと
『そうですね、クロス様の言う通りです。今はしっかり休みましょうっ。』
そう言うとニコッと微笑みマリアは駆け足で俺の傍までやってきた。部屋の扉の前に着き鍵を差し込み解除する。扉を開けると大きなベッドが1つ置いてある。マリアはベッドに腰掛けて。俺は窓があるので外の景色を見る。俺は窓を開けるとそこから見えたのはさっき歩いていた町の噴水広場だ。
『マリア。明日は仕事探しに出ようとおもうんだ。やはりマリアのボロボロの服では明るい町だと目立ってしまうだろうし。どうだ?』
俺は窓を閉めてマリアが腰掛けるベッドに振り向くと
『マリア....寝ちゃったか』
移動に疲れたのか腰掛けていたはずのマリアは横たわって寝ていた。
『司祭。俺はこの子助けて見せるよ。俺を助けてくれた司祭の様に。』
俺はマリアの頭を撫で。窓の外が明るくなり始めた王都の空を見つめた