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姫重装と追跡者(クイーンボルデ)  作者: かずとん。
第一章『姫重装編』
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第2話『姫の思い、旅人の誓い』

俺は叫ぶと身体中が光に包まれる。

俺も覚悟を決めて叫んだからか、つい目をつむり手に力が入ってしまう。

銃声も聞こえた気がしたが痛みもない。

また彼女の声が聞こえた。優しい声で暖かくて落ち着く声。

『目をあけてください』

俺は言う通りにゆっくり目をあけていくと、賊は尻餅をついてこちらを見ていた。

『な、なんだよそりゃ!?エルフはエルフでも戦闘型のエルフかよ!!』


賊はこちらを指さしながらそう叫んだ。

戦闘型?良く分からない俺は改めて自分の手や足身体中に纏った武装を見る。


『これは君の力なのか?』

俺は姿のない彼女に問いかけると頭の中に。

『はい、私の力です、貴方を守るための力です』

と答えてくれた。

もう一度身体中を見る。手には手甲のような物が填めてあり察するに格闘タイプといったところだろうか?俺は賊に対して構えてみる。


『な、なんだ!や、やるのかよ!?』

賊は腰が抜けてしまったのか立てないらしい。

俺はため息をつく。抵抗できない相手を殴ったりする趣味もない。そう思うと俺は彼女に。


『悪い、装甲を解除してくれ。これ以上は何もできないだろう』

俺がそう伝えるとまた光に包まれて、元の姿に戻る。軽く体を動かし何も異変がないか確かめる。姿が無かった彼女は俺の後ろから右側に立つ。


『戦闘型か、今回は見逃してやるが次はねぇ!おぼえてやがれ!!』

賊は悪役台詞を吐き慌ててこの場から走り去った。

俺はホッとしたらその場に座り込む。少し手が震えているようだ。自分の手を見つめていると彼女もゆっくりしゃがみ、震える俺の手をそっと両手で包み込む。


『本当にありがとうございました。貴方が居なければ私は今頃....』

彼女は少し俯く。月の光があまり通らない森だから顔は見えにくいが、きっと暗い顔をしているはずだ。そう思った俺は空いた左手で彼女の頭を撫でながら。

『お互い様じゃないか、君が居なければあの賊に殺されていたかもしれない。』

暗い森の中だけどニコッとする。少し夜風が強くなると木々の間から月の光が漏れる。漏れた光が俺たちを照らし。

『あ....』

暗くてハッキリ分からなかった彼女の顔が、月の光でようやく見れた。思わず声が漏れてしまう。それくらい美人で、エルフでありながらも町にいる女の子のような。俺が少し思考が停止していると。


『やっと貴方の顔を見ることができました。私を救ってくれた。私のナイト様』

彼女は微笑む。その笑顔だけで心が癒される気がする。俺は顔を振り立ち上がりながら。


『俺がナイト様だなんて、ただの旅人さ。本当のナイト様に失礼じゃないか?』

俺も微笑む。彼女が握ってくれていた手で軽く力を入れて、彼女も立ち上がせる。

『いいえ、貴女は運命の人です。ナイト様です。これだけは譲りませんよ?』

俺は困った顔をする。生きてきてこんな女性には会ったことがないから対応に困ってしまうが。


『ぷっ、あははっ』

急に笑い出す彼女。目尻に涙を溜めながら笑う。俺もつられて笑ってしまう。

『あはははっ!』

彼女も俺も緊張から開放されたせいか気が変になってしまったようだ。しばらく笑い続けて。

『ふぅ、笑いすぎたな。俺はクロス・ハイドだ。ずっと旅をしている。』

彼女に自己紹介をする。

『先ほど名乗りましたが改めて。マリア・イクリスと申します。知っての通りエルフです。』

マリアはペコリと頭を下げる。つられて頭を下げる。俺はいくつか質問することにした。

『マリアでいいか?』

名前で呼んでいいか聞いてみると頷いてくれた。俺も名前でいいと伝えた。

『マリアはなぜ賊に?』

とりあえず気になったことから質問をした。

『はい、私はエルフです。本来はお手伝いの為に色々な町に派遣されているのです。私のように戦闘型、戦いを専門としない本当の援助型。私も援助型のはずでしたが。』

マリアは悲しい顔をする。


『近頃国同士の戦が増え援助型エルフまで戦闘型に改造され、軍隊でいいようにされてきました。』


俺は拳を握りながら話を聞く。

『今でも傷つきながら他のエルフ達は戦闘に参加させられています。』

同じ人形なのに扱いが酷い。つまりマリアも今までそういう経験をして来たのだろう。俺はマリアに呟く。

『マリアはそのエルフ達を助けたいのか?』

俺はマリアに問いかけると、強く頷いた。

『私は助けるためにある国から逃げ出してきましたが、途中先ほどの賊に見つかり追われていたのです。』

俺は「そうか」と相打つ。俺は今まで旅をしてきていずれは何か人助けをしたいと考えていたが、やはり神様はしっかり見ていてくれたようだ。俺は改めて決心した。マリアを見つめながら。


『わかった。マリア、一緒に他のエルフを助けに行こう。』

俺がそう伝えると。

『そ、そんな!クロス様の手を煩わせる訳にはいきません!これは私の問題なんです』

だが俺は揺るがない。司祭が父親の代わりなら俺は困っている人を見捨てることなんて出来るわけない。俺はマリアに強く言う。

『君も。君の仲間たちが傷ついてるのを放っては置けない!それに、乗り掛かった船だ。話も聞いてしまった。引き下がる訳にはいかないさ』


俺は微笑みながら言った。マリアは目を大きくあけてビックリしていたが、何か決心をしたのか。微笑みながら。


『わかりました。クロス様がせっかく仰ってくださったのです。お言葉に甘えさせてもらってもよろしいのですか?』


俺はシャキッと背筋を伸ばし、左手の拳を右胸に叩きつけ。


『お任せあれ。マリア姫』

マリアはクスッと笑い。

『はいっ!私のナイト様』


俺達は手を繋ぎ。森の向こうにあるであろう『王都マルドゥ』を目指し歩き出した

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