第16話『フェルディナ』
俺は驚いた、まさか同じ騎士団がこの街に来ているとは思わなかったからだ。フェルディナ・アテナ。新境アイリスの団長。
「あ、あのさ。騎士団の団長って俺達に名乗ってよかったのか?」
「は?あんた達旅人でしょ?なら問題ないわよっ、それよりそこ二人、名を聞いていないわ」
マリアとイヴに指をさす
「私はマリア・イクリスです。」
「イヴ・サクリスですっ!」
イヴ....裏返ってるよ声が
「そっ、あんた達なんでまたこの街に?武器目当て?」
さっきの理由を話すことにした
「さっきも言ったが、イヴの調子が悪いんだだから近くの街に寄ったら此処についた。それで早く案内してもらいたいんだアテナさん」
「フェルディナでいいわ、仕方ないから教えてあげるわ。ついて来なさいっ」
歩き出したフェルディナに付いて行く俺達。まさか、初めて出会った女の子が別の国の騎士団で団長だとはおもわなかった。
「あ、あのさ新境アイリスってどんな国なんだ?」
素朴な質問をぶつけて何か情報を拾えないか探るクロス。
「あんた、この大陸に住んでるんじゃないの?」
振り向かずに質問を質問で返される
「いや、この大陸なんだけど田舎だからさ、あまり詳しくないんだよ。」
彼女は、ふーんとつまらなさそうに相打つ。
「新境アイリスは王と女王が一年で替わるのよ、選出されるのは一般人。その中から選ばれ次期王や女王となるの」
「変わった国だな、普通は家系が引き継ぐものだろう?なんでまた任期が一年で、それも一般人からなんだ?」
「公平な政治、法律、経済。これらを細かく決めるには民からの声がいるわ、ただの政治家が王や女王だと自分達が好き勝手にする。だから民は不平不満を吐き、暴徒化する。それを防ぐには毎年人事を入れ替えてそれぞれの意見を取り入れていく必要性がいるのよ」
「そうだったのか、色々な国を見てきたがそんなのは初めてだよ」
俺はイヴを軽く上に持ち上げ、ズレないようにおぶり直す。
「あんたは何で旅なんかしているのよ?それも女2人連れて」
歩くのを止めるフェルディナは、クロス達に振り向き質問をしてきた。
「さっきも言ったが俺は田舎者だ。情報の流れも遅い村だから自分の目や耳で今の大陸の状態を知りたかったんだ。で、マリアやイヴはたまたま旅をしていて出会ったんだよ。」
マリアはニッコリしながら
「私とイヴさんも田舎者ですので、右も左もわからない私達を一緒に旅をしないか?とお言葉をいただきましたっ」
フェルディナはマリアの笑顔に怯む
「うっ...そ、そう。それより、ほら着いたわ。」
立ち止まったのは話すためではなくどうやら着いていたようだ。
「私は仕事があるから、ま、会うことはないでしょうから、さようなら」
フェルディナはサイドポニーテールを翻し、背中を向け歩き出す。クロスは慌てて
「ありがとう!!助かったよ!」
マリアも軽くお辞儀をする
「礼なんて要らないわよっ、ふんっ!」
フェルディナの背中が見えなくなると、俺達は診療所に入った。イヴを見てもらうため、カウンターに居る看護師に病状などを伝えるとそのままイヴは診療室へ招かれた。
「何事も無ければよいのですが」
「大丈夫だよ、きっとな」
俺はマリアと待合室でイヴの帰りを待っていた。
「先ほどのフェルディナさん、アイリスの騎士と名乗っていましたが、目的はこちらと同じなんでしょうか?」
「わからないが、ここに来たのならきっと何かあるんだ。俺達とは違う目的が」
マリアと俺はむつかしい顔をして考えていると、イヴが入っている診療室から医者が出てくる
「お連れの方かな?イヴさんですが、一日だけ入院となります。」
「そ、そんなにやばいんですか!?」
「お、落ち着いてください。ただの食あたりですが、無理に歩かせるのはよくありませんので一日だけお泊まりをしていただきたく」
た、食べ過ぎだイヴ。初めて会った時のお淑やか?はどこへ....
「わかりました、よろしくお願いします」
俺とマリアは頭を軽く下げて、イヴの居る病室へ
「イヴ、大丈夫か?医者が言うには今日は入院した方がいいと言っていたぞ」
俺達はベッドの横にある椅子に座る。イヴの表情は先ほどの時より大分良さそうだ
「はい、すみません。明日からはがんばりますからっ!」
「イヴさん、無理だけはしてはいけませんよ?」
マリアの微笑みにイヴは、
「もちろんですっ、お仕事はお二人にお任せいたします」
それだけを聞くと、俺達は診療所を後にした。とりあえずまた町の人々に紛れて情報収集に務めることにした俺達はイトラルのシンボル、武器生産の工場へ向かう。今は上手く稼働していないらしいが。
「ここか、人気がないな」
「まるで廃墟ですが、ついこの前までは生産されていたと聞きましたね」
俺達が中に入ろうとすると
「待ちなさい、中に入ってどうする気なの」
聞き覚えがある声が後ろから掛けられ、振り向くと。
「そこは関係者以外は立ち入り禁止よ、見たらわかるでしょ」
確かに進入禁止のロープが張られている
「あぁ、悪い。ちょっと旅の記念に写真でもとね」
「嘘つかないで、貴方達のことを調べさせてもらったわ。王都マルドゥの調査隊じゃない!」
どう調べたかはわからないが、バレているなら隠す必要性はないな。
「あぁ、俺達はこの町に調査に来た。君らと同じ目的だと思うぞ」
俺は毅然とした態度で話す。
「私達と?笑わせてくれるじゃない!王都マルドゥはアイリスを見捨てた国よ!!」
「見捨てた?すまないがよくわからないぞ」
そこまで奥深い話はされていなかった為に理解することができない俺達。
「惚けないでよ、私はあんた達を許さないわよ。同盟国を見捨てたあんた達なんかっ!」
駄目だ、このままでは話は進まないはずだ。だが質問をするしか
「ふ、フェルディナ話をーーー」
その時、町の中央で爆発が起きる。激しい爆発に煙が空へ上がる
「町の中央からじゃない!!まさか盗賊?!」
「お、おい!待て!」
俺の投げかけた言葉を無視し走って町に向かったフェルディナ。
「クロス様、どうされますか?」
「いくしかない、盗賊をなんとかしよう!その後に、フェルディナから話を聞かないと」
俺達はフェルディナが走っていった後を追うように走りだした