第14話『マルドゥ騎士団、始動』
その日の夜。俺達3人を含めマルドゥ騎士団達は王カルティに呼ばれて玉座へと集まった。マルドゥ騎士団を先頭に俺達3人は後ろの方で話を聞くことになった。
「皆に話した通り、ここ最近ウラネク帝国の動きが活発となり始めている。マルドゥから少し離れた諸国ではウラネクの兵により陥落され、侵略されていく情報がよく入っている。このままでは近々マルドゥにも勢いで流れ込んでくると予想している。今こそ我らの力を天下に示す時だ。戦争を求めない我々は生きるために戦わねばならない!皆力を貸してくれ」
『『『おおぉぉっ!!』』』
騎士団達の雄叫びが玉座に広がる。
「す、すごい気迫と声です。圧倒されて少し震えが」
マリアはクロスの腕に軽く抱きつくと
「わ、私もですっ!」
イヴまで抱きつく。クロスは成すがままにして話を聞いていく。
「今ウラネクの動きをちゃんと把握は出来ていない。拙攻を放っているが、未だにかえってこない。恐らくウラネクの兵に殺られた可能性がある。今ここで新たな拙攻を放っても無駄に終わることだろう。そこでマルドゥ近辺の諸国に行きウラネクについて調べてきて欲しい、諸国への偵察には2部隊に別れて行ってもらう。」
説明がはじまるとイヴ、マリアは元の姿勢に戻る。カルティは説明を簡単にして、部隊訳を開始した。
騎士団の偵察部隊は50人だ、つまり25人で分けるのだが。
「マリアさん、クロスくんも参加してもらうよ?構わないね?」
マリアは俺を見ながら頷く。俺も
「わかりました、がんばります!」
カルティはニッコリし、また騎士団に目を向ける
「皆の情報収集が今後の鍵となる!国の未来のためにも、よろしく頼むぞ!」
『『『おおう!!!』』』
騎士団達の叫びに、また怯む俺達だった。話が終わり俺達はマリアの部屋に集まった。
「とりあえず偵察部隊に行くことは決まった、イヴは城で待機だが、マリアは俺と行くことになる。」
「はいっ、私はクロス様のお役に立ちたいですし、自分の力がどこまで通用するか試してみたいのです。」
「え?た、戦いになるのですか!?」
イヴはバッと立ち上がる。
「それはわからないけど、奇襲を受ける可能性もある。とりあえずは一般人に紛れて偵察を行うから怪しいとは思われないはずだ、マリアも大変だろうが頼むよ」
マリアは強く頷く。しかし
「や、やっぱり私も行きたいです!力にならせてください!」
「い、イヴさん。」
「だがイヴはマスターがいないじゃないか、エルフ単体では力を発揮できないんじゃないか?」
「は、はぃ、少し階級が上のエルフならば可能ですがイヴさんは私と同じ位のエルフなので不可能かと」
マリアは俺の説明に補足を入れてくれた
「エルフは一人だけにしか交われないとは限らないですよ!クロスさんとも交わることはできるはずです!」
イヴは強くそう言う、気持ちは分かるがまだ踏み込んでいない段階だ。なにかあったら大変なことになるかもしれない、その時
「わかりました、なら試してみましょう!」
「「はい?試す?」」
「交われるかどうかですよ!やってみなければわからないじゃないですか」
「い、いや待て落ち着け。イヴは身体が弱いのに無茶なんかしてどうするんだよ?!」
「いいえっ!こんな時に私がなにもできなければ死んでしまいます!いざマリアさんが攫われたりしたらクロスさんはどうやってたたかうのですか!」
イヴは俺達にズイっと近づく。
「き、気持ちはわかった!イヴがそこまで言うなら朝のトレーニングと一緒にやると言うことでどうだ?」
「クロス様の意見に賛成致します、今日はゆっくりとお休みを致しませんか?」
イヴは渋々頷く。とりあえずかなりやる気まんまんなイヴを抑えてホッとするクロスとマリア。クロスはマリア達の部屋を後にした。
翌朝、イヴとマリアを連れて城の裏のトレーニング場所へいくと早速イヴと交わることにする。
「でもさ、エルフは一人の人間と交わると他のエルフとは交わることはできないんじゃないか?こういうのってさ」
「私が知っている限りでは、ほんの人握りの人間が複数のエルフと交わることができると聞いた事があります、あとはその昔に追跡者がエルフを助ける為に複数のエルフと交わった等と歴史書に書いていたのもありました」
軽く説明をしてくれるマリア。追跡者の話はまるで自分を見ているかのようだ。まさに同じ事をやっているのだし。
「でも、俺は追跡者って言うか、ただ助けたいなって思ってやっているんだし。どうなんだろうな」
「クロス様は十分追跡者様かと。既に二人も救っていますし、ね?」
マリアはイヴに話しかける。
「はい!立派な追跡者さんですよ!それより早く試してみましょうクロスさん!」
イヴに急かされ俺は「はいはいっ」と返事をする。イヴと手を握りーーー
「「クイーンボルデ!!」」
イヴと俺は共にその名を叫ぶと、イヴから光が現れ、その光は俺とイヴを包み込む。長い時間光に包まれていた錯覚になるが、実際は数秒だろう。光は弾け飛ぶと
「こ、これは。槍なのか?」
手には長い、水色をした槍が握られていた。先端は三角を少し細長くした刃、その三角の中心に水色の玉石がある。
『はい!槍の名前はストラーダです、マリアさんとは違って少し距離がある戦闘が可能となりますよ!』
槍とは別にボディーにも水色の鎧が装着されていた。重みは無く服を着ているのと変わらない
「これはまたマリアと違っていいな、槍はこれが初めてだからしっかり物にしないとな」
「クロス様ならばきっと大丈夫です、がんばりましょうっ」
『私も身体が弱いですし、鍛えるには丁度いいです!』
三人で話をしていると、一人の騎士が走ってくる。
「クロス殿、偵察は明日に決まりました。近いとはいえ時間が掛かります今日の夜には出国します、準備をお願いします!」
「ストラーダの特訓の時間もないか、仕方ない。マリア、イヴ。偵察とはいえ戦いは戦いだ、俺達の戦いを始めよう!」
『はいっ!』
「必ず成功させましょう!」
二人の返事を聞くなり俺達は戦いの準備を始める