第13話『エルフの真髄』
「そんな簡単に殺めず倒す方法だなんて、あったか?」
俺は何かを忘れている。それを思い出せないのでマリアに問う。
「それは私のエルフの力です。初めて交わった時を覚えていますか?」
「あぁ、ひょっとしてあの装備が殺めずに戦う方法なのか?」
あの装備とは、マリアのエルフとしての能力『姫重装』だ。あの時体は光で包まれて、足には飛脚甲、手には轟手甲。深紅の色をした装備だった
「はい、確かに殴る、蹴るなどは打ちどころを間違えば殺めてしまいますが、エルフの力なら非殺傷モードにすれば殺めることはありません。」
「なるほど、だけどホントに大丈夫なんだろうか?」
マリアは俺の顔を見るなり微笑みながら。
「大丈夫です!練習は必要ですが、クロス様ならきっとやり遂げられます!私は信じております、貴方ならきっと」
マリアは手を握ってくる。それに答えるようにゆっくり握る。
「わかった。マリアに覚悟があるなら俺もいつまでも悩んでちゃダメだよな、よし。王に返事をして早速特訓をしようマリア!」
「はいっ!やりましょう!」
その後イヴとも合流し、食堂で食事をとる。しばらくして王の元へ行き、クロスは騎士団入りをするという話をした。
「よかったよ、君が騎士団に来てくれるなら安心できる。よろしくお願いするよ」
「はい、力を尽くします。少し特訓期間をください、マリアと交わったのはまだ一度だけでしたので。よろしいでしょうか?」
王は立ち上がり。
「あぁ!構わない練習場所を使ってくれ、城の裏にある。それではがんばってくれ!」
王に会釈し、その場を後にした。イヴも特訓を観たいと言って共に城の裏にある練習場所へ。様々なトレーニング道具やサンドバッグなどがあり、俺達以外の団員が特訓に励んでいた。
「よし、まずは交わる事から始めよう。まだわからないことがあるし」
「はい!ではいきます。」
「がんばってください、お二方!」
イヴの応援を聞きながら開始する。マリアは俺の手を優しく握り
「クイーンボルデ!!」
マリアがそう叫ぶと俺も同じように叫ぶ
「クイーンボルデっ!!」
すると身体は光に包まれ、ゆっくりと目を開けると、足には飛脚甲、手には轟手甲。ボディには深紅の鎧が装備される
「マリアさんはファイター型だったのですね、綺麗なカラーです!」
目ではマリアを確認できないが声が聞こえる。
『はいっ、私の能力は身体強化。少しの力で爆発的な威力を出します!』
「あの時は真っ暗だったから色はよくわからなかったけど、良い色をしているなっ!」
俺は軽くストレートパンチを繰り出す、ヒュンヒュンと風を切る音がする。
「これはすごいな、普通に繰り出すストレートより軽く、スピードも速い。」
『はい、身体強化はもちろん。防御力も格段と上がっています。並大抵では負けません!』
「よし、早速サンドバッグを相手にやってみるか」
サンドバッグの前に立つ。ストレートを繰り出す為に息をゆっくり吸い込み。右足を半歩後ろへ下げ、しっかり右の脇を閉じて右拳を後ろへ。静寂が訪れる
「ごくりっ」
イヴの唾を飲み込む音、風の音、足音。それらを無視し、サンドバッグへ集中。そして、一気に息を吐きながら!
「はぁぁぁっ!!!!」
サンドバッグに右拳を捩り込む様に打つ!!するとスパァァァァンと豪快な音がし、時間差でサンドバッグは木に縛られた鎖ごと吹っ飛んだ。
「ひゃぁぁ!?」
同時に強風も起きてイヴは尻餅をついた。
「ふぅ....これは力加減がむつかしいな...サンドバッグ壊しちゃったか」
『すごいですクロス様!瞬間威力が1000キロを超えています!』
マリアの声が頭に流れてくる
「いや、マリアがすごいんだよ。だけど力加減を考えないとマリアにも負担がかかるだろ?」
『いいえ、これくらいなら私は大丈夫ですっ』
「お二人ともホントにすごいですっ!うまく力をあわせていますよ!」
イヴは手をパチパチさせる。すると周りの団員まで拍手、少し恥ずかしい。
「あ、ありがとうな。それよりもう少しトレーニングしていこう、感覚を掴まないとな。」
『はいっ!私もがんばっちゃいますね!』
そして暫くトレーニングを続けていくと、団員の中から見たことある警備員がこちらへ来る
「王から選ばれたと聞いたよ、クロス・ハイドくん、最初の正門で話した以来だね。俺はガノだ、よろしく」
すると手を差し出してくる。
「はい。改めてよろしくお願いします」
俺は差し出された手を握る。トレーニングで汗ばんだ手だが嫌がる感じはない。マリアもイヴも微笑むと自然と心地よい疲れが現れた。