序章
今日もやってしまった。
毎日毎日今日で止めよう止めようと思っているのに…朝になればまた同じことの繰り返し…
もうすぐ仕事も無くなるというのにギャンブルに興じる毎日
どうしてもやめれない
俺は頭がおかしくなってしまったのか
給料をもらってからまだ4日だというのに、既に3分の1を競艇ですってしまった。
今日こそ次こその繰り返しで負けた額を取り返しすために次のレースにはより大きな額を突っ込んで…結果ハズレ
このままじゃ生きていくことさえできない。
俺は途方にくれて部屋の外に出た。
今の時代ギャンブルをやるのに別に競艇場や競馬場に直接足を運ぶ必要はない。携帯電話一個とネットパンクの口座さえ持っていれば全国の競艇場競馬場の投票ができる。
全く便利な世の中になったもんである。
同僚に勧められて口座を開きWeb投票権を得てから約半年。
その間に競艇競馬に突っ込んだ額は既に300万を超えている。貯金はとうの昔に無くなった。幸いまだ借金まではしていないが、このままではいつ無人貸付機に走ることやら…
とぼとぼと歩いているとふと銀行が目に入った。
この中には腐るように金が有るんだろうな…
いっそのこと銀行強盗でもやるかな…
俺の脳裏にそんな思いが浮かび上がってきた。
いやいや、いくらなんでもそれは出来ないな。
そこまでやってしまったらそれこそ人生終わってしまう。
俺は頭を振った。
馬鹿な思いを振り払うために。
しかし…来月の給料までどうするかなぁ
どう考えても来月まで生きていくことは難しい。給料の前借りはもう駄目だと上司から言われてる。
そりゃそうだ。3ヶ月連続で前借りしてる。それも殆ど給料をもらってから一週間以内に…
先月なんか上司から蔑むような目で見られた。
困った。本当に困った。自業自得ではあるけれど、さすがに今月はもうヤバい。
頭の中がぐるぐると渦巻いている状態で、俺はなんとなく銀行の自動ドアをくぐってしまった。
いらっしゃいませ
一番近くの窓口の女の子が可愛らしい声で言った。
いやいや、俺は別に何の用事もないんだけど…
迂闊に入ってしまったことを後悔した。
何にも反応を示さない俺を見て不信に思ったのだろう。壁際に立っていた警備員が俺に近づいてきた。
お客様 今日はどういったご用件で?
いや、口座を開こうと思ったんだけど印鑑を忘れてきたのに今気づいてしまって。
もちろん嘘である。
我ながらとっさにうまい言い訳が出たなと思った。
そうですか。ではまたのご来店をお待ちしております。
さすが銀行の警備員である。対応の仕方もちゃんと教育されているようだ。
俺は警備員にうながされて外に出た。
この出会いが後で俺の人生を大きく狂わしてしまうとはこの時にはまだ知る由もなかった。
つたない文章ですが、寛大な気持ちで受け入れてもらえればありがたく思います。