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その後のお話〜仲間を守る為に命を捧げた男、異世界を駆ける〜  作者: ライナ・スニーク


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三話〜事情聴取〜


「あら勇、おかえりなさい。遅かったじゃないの、鬼島さんとクロエさん、あんたに話があるってずっと待ってたわよ」

「ただいま婆ちゃん。ちょっと色々手続きとかあってさ。じゃあ先生、続きは俺の部屋で」

「ええ。麻里さん、お話にお付き合いいただきありがとうございました」

「いえいえこちらこそ! 勇のこと、よろしくお願いします」

「婆ちゃん、機密情報とかの話もあるから、絶対に部屋には来ないでね」


 麻里にそう告げて、鬼島とクロエを連れて階段を登り自室に戻った。

 鬼島とクロエは警戒しながら部屋に入り、そして今朝勇が壊した床を見て驚く。


「なんだ? 床が割れてる?」


 そんな二人に背を向け、勇は扉に固定化魔法をかけて更に消音魔法を室内に展開した。

 そして恐らく彰が準備したのであろう新しいベッドの上に腰かけて、深く深く溜め息を吐いた。


「はぁー……こういう勝手な事をされると困るんだが」

「驚いたわ、上級魔法の固定化に、中級魔法の消音まで使えるのね」

「遂に化けの皮が剥がれたか」


 クロエは勇の展開した魔法の方に注目し、鬼島は砕けた口調の勇にニヤリと笑った。


「化けの皮もなにも、後で説明はすると言っただろ。勝手に押しかけてくるなよ」

「俺は回りくどいのは嫌いなんだよ。じゃあ早速、テメェの事を教えてもらおうか?」

「………………分かった。ただ、俺が今からする話は全て真実だと言う事を前提に、途中で茶々を入れずに最後まで聞いてもらいたい。特に長い話にはならないけどな」

「あぁ、分かってる」


 鬼島とクロエが首肯したのを確認してから、勇は語り始めた。


「……まず、俺は元々はこの世界……地球とは異なる世界で生きていた人間だ」

「異世界ってこと!?」


 クロエは目を見開いて驚愕する。


「ああ。そこで俺は……傭兵を育成するイーラ学園に通っていた。最初は学園に来た依頼を受けるだけのただの学生だったが、いつの間にか魔王だの魔女だの自称神だの戦乙女だの……とにかく色々と現れては世界を滅茶苦茶にしようとしてきてな。仲間と共に国から国へ渡り歩き、その果てに黒幕の魔神クリストノヴァという邪神の存在を突き止めた。俺達はクリストノヴァを討滅する為、神々の地に向かい、神々の地の最端にある神々から見捨てられた地にいるクリストノヴァの元へ、一人で向かった」

「仲間達は、置いていったのか」


 鬼島に問われ、勇は小さく頷いた。鬼島の視線に、少し非難の色が浮かんでいる事に、勇は気付いていた。


「神から託宣を受けていたんだ。『進めば何かを失う。一人で行けば犠牲は一人。どちらにせよ悪は滅びる』と。それなら、他の誰かが犠牲になる必要はないだろう」

「マジかよ……」

「そして俺は、相討ちの形でクリストノヴァを滅ぼした。闇の中、俺もゆっくり死ぬ筈だったんだが……その後の事は、正直俺にもよく分かってないんだ」

「どういう事だ?」

「……気がついた時には、俺は神々の地にいた。いや、神々の地というか……神がいる地というか……そこには女神がいて……」


 勇はあの時のことを思い出そうとしてみる。

 ………………。

 しかし、今朝起きた事だった筈なのに、何故かハッキリと思い出せなくなっていた。


「……駄目だ、思い出せない。まったく……厄介な連中だ、神ってのは。とにかく、俺は何か理由があってこの世界に呼び出された。俺の強さの理由はこれで全部だ」

「その話を信じろって?」

「信じるかどうかはそちらの都合だろ。俺は一切嘘をついていない。信じないにせよ、これ以上の何かは俺からは出ない。無いものの証明を俺に迫るのはやめてくれ、それは誰であろうと不可能だ」


 鬼島達は勇が帰って来るまでの間に、真成家、並びに勇についての情報収集をさせていた。

 情報収集の専門家達への依頼をした結果、真っ白な経歴だけが報告されて来ていた。卒業した小学校・中学校に存在していた痕跡、亡くなった両親の経歴、真成祖父母との血縁関係有り判定など、まったく後ろ暗い所は無いと認定されていた。


「それはそうね。鬼島、日本では証拠の無い訴えは却下されるものでしょ?」

「怪しい証拠なんて、あの戦いを見たら誰の目にも明らかだろ!?」


 クロエはわざとらしく、やれやれ……と言わんばかりに首を横に振り、ニヤリと笑った。


「話は分かったわ。じゃあ何か少しでも、無実を証明出来そうな物は無い? 何の証拠も出せていない私達が言えた義理でも無いけど、この国の上の連中は、貴方の秘密を是が非でも探るつもりよ。このまま行けば、貴方の今後の生活は息苦しいものになるわね。それじゃ面倒でしょ?」

「……証拠か」


 何かあるか、と考えた勇はすぐに今朝の事を思い出し、左手を上げた。


「そうだ、この指輪だ。これは女神から贈られた物だ」

「め、女神から!? この指輪が!?」


 クロエはすぐに食い付いた。クロエは自他共に認める魔法オタクなのだが、同時にドが付くほどの魔導具コレクターである。

 正直なところ、元々クロエは別にそこまで勇の正体に関心は無かった。鬼島……というよりは日本側と違って、裏を取り白という結果は出ていたので、問題は無いという判断していた。

 何か秘密があるのならそれを知りたい、あわよくば研究したいというのが本心であった。


「これはどういうものなの!? 身体能力の強化とか魔力増加とかかしら!?」

「残念ながらそういう物じゃない。これは俺の能力を抑制する為に造られたものだ」

「よ、抑制? なんでよ?」

「この指輪を付けることで、俺の能力は2割以下にまで軽減されるんだが、これが無いと……」


 勇は破壊された床に指先を向ける。


「今朝起きた時には自分に何が起きているのかも分からなかったせいで、ベッドを壊してその拍子に床も破壊してしまった。これが無いと普段の生活に支障を来す」

「……じゃあ、あの訓練の時は指輪を外したのか?」

「いいや、折角だからこっちに慣れておこうと思って外してない」

「馬鹿な!? それじゃあ二割以下の能力でアレとやり合ったのかよ!?」


 鬼島の背中に冷たいものが走る。現状でも十分に勝てる気がしないレベルの差を感じていたのに、全開で来られたら……と嫌な想像が脳裏に過って顔色を青くさせていた。


「あとはそうだ、これもあったな」


 勇はポケットの中に入っている収納袋を取り出して、二人に見せる。

 いきなりただの布を見せてきた勇に、二人は眉をひそめるが勇の説明でその顔はすぐに驚愕に変わった。


「これは通称、収納袋だ。前生ではほぼ全ての人間が持っていた。この中には魔法で時間固定化がかけられていて、中は無限に物が入れられるようになっている。……いや、実際には有限らしいが、底は俺も知らない。取り出すのも簡単で、この中にこうして手を入れると中に入っている物が脳内に一覧で表示される。必要な物を思い浮かべると……」


 勇は脳内に表示されている物の中から、ずっと使って来た剣を思い浮かべた。するとその手に感触が出現し、それを掴んで手を引き抜く。


「こんな感じに物を取り出せる」


 勇が引き出したのは、両刃で白銀の剣身に白金の意匠が輝く、神々しいと評するに相応しい剣だった。

 クロエは、ごくり、と喉を鳴らす。


「こ、これは……?」

「この剣か? これは神々から貰い受けた、聖剣エクスカリバーだ。これで魔神を討ち滅ぼした」

「Beautiful……」

「この指輪と同じで神造装備だ。別に俺は要らなかったんだが、誰も使わないから持っていけと押し付けられてな」


 勇は剣を収納袋に入れる。


「こうすれば中に入れられる。注意点としては、魔力登録をしている人間ではないと入れることは出来ても取り出す事はできない事。魔力登録は、既に登録されている人間から許可を得る事で登録者を増やす事も出来る。仮に収納袋が破れたりすると、その穴から中に入っていた物が一気に飛び出てくるのも怖い所だな。とはいえ、登録者の魔力量に応じて生地が強化されるから、実力者の収納袋を破壊する事は殆ど不可能だけどな」

「ヤバ過ぎるだろ……」

「それと、収納袋は主要登録者の身につけている服のポケットに自動で入るようになっているから、紛失する事も無い。1キロ以上離れると転移してくるが、どうでもいい事だが主要登録者がポケットの無い服を着ていると転移して来れない」


 勇は説明を終えて収納袋を畳んでポケットにしまった。

 クロエは震える声で質問する。


「そ、それって……作れる物なの?」

「まぁ錬金術が出来る人間なら誰でも作れるな。そもそもこの収納袋も俺が作ったものだ。冒険者は自分で収納袋を作れて一人前だからな」


 それを聞いたクロエは、顔を青くさせている鬼島とは対象的に喜色満面で、勇に駆け寄ると手を握った。


「素晴らしいわ! 貴方は救世主よ! 貴方のような人間を待っていたの! 貴方アメリカに来る気は無い!? 日本なんて窮屈で頭が固くて融通が利かない所より、よっぽど素敵よ! 日本には出る杭は打たれるなんてろくでもない言葉もあるけど、アメリカは完全実力主義! 才能のある人間は大歓迎!」

「おいテメェ!? よくも俺の前で堂々と引き抜き工作したな!?」

「は? 日本の政府は今日の事でユウの事を危険人物としてマークしたじゃない。私はユウにより良い環境を勧めてるだけよ?」

「そ、それとこれとは話がちげぇだろ!」

「何がどう違うのよ。私だったら、ちょっと才能あるところを見せただけで監視が付くような国なんて御免だけど?」

「………………」


「そういうやり方で将来有望な人間を何人逃してるか、数えた事ある?」

「いや、俺だってこんな事は言いたくねぇけどよ……この国を守る義務だってあるし……」


 大分弱々しくなってしまった鬼島の声は尻すぼみに消えていく。

 クロエに言われた事にぐうの音も出なくなった鬼島は、勇の方をチラリと見た。


「アメリカに渡るのは個人的には有りだとは思うが……今は駄目だ。俺はしっかりと学校を卒業する、爺ちゃんと婆ちゃんを不安にさせたくない」


 クロエにそう告げると、クロエは満足そうに頷いた。


「ええ、貴方に一つの道を示せただけでも十分な収穫ね。素敵な返事を待ってるわ」

「検討しておく」


 固く握手するクロエと勇に、鬼島は「あー!」と叫びながら頭を掻いた。


「俺だってなぁ! 分かってんだよんなこたぁ! だがこの国の冒険者として、国を守る立場の人間として、何でもかんでも疑ってかかる必要があんだよ! テメェらみたいにちゃらんぽらんに何でもかんでも受け入れて、後で手痛いしっぺ返しを喰らいたくねぇんだ!」

「はぁ? 日和ったビビリ共の飼い犬の癖に良くも大口叩いたわね?」

「うるせぇ! 疑わしいものを疑えねぇなら冒険者になる資格はねぇ! 大体お前だってさっきまでは警戒してたじゃねぇか!」

「私は調査結果を全面的に信じて、危険な人間ではないと判断したわ。情報を信じられずに何を信じるって言うのかしら?」

「喧嘩なら外でやってくれないか?」


 口喧嘩を始める二人にそう言って、勇はベッドに寝転んだ。

 クロエは小さく息を吐く。


「ごめんなさいね。とりあえず事情は理解したわ。今回の事は上に報告する事になるけど、極力大事にはならないようにするから、よければ今後も協力してほしいの。と言うわけで……冒険者ネット、交換してくれるかしら?」

「ん? 学校関係者は予め登録されていたと思うが」

「こっちはプライベート用」

(何故プライベート用をわざわざ登録する必要が?)


 などと思った勇だったが、断る事でも無いのでそのまま冒険者ネットを相互フォローした。

 鬼島は黙ってそれを見守り、終わったのを確認してから口を開く。


「……とにかく、話は分かったが俺達に悪意が無い事は理解してほしい。自分の異端さはお前だって分かっているだろ?」

「俺だって、何故いま自分がこうなっているのか分かってない。神の気まぐれに理由を付けるのは無駄だが、必要に迫られない限りは俺から余計な事はしない」

「なら良いんだ。調査も完了したし、帰るぞ。邪魔したな」


 クロエに声をかけて鬼島は部屋を後にしようとしたので、勇は部屋にかけていた魔法を全て解除した。

 扉を開けようとしたところで鬼島は立ち止まり、振り向かずに言った。


「……一応忠告しておくが、これからのお前の人生は、騒動の連発になるぜ。俺の直感がそう言ってる。覚悟しておけよ」

「あー……こいつ筋肉馬鹿だけど、こいつの直感は本物だから、気をつけたほうが良いわよ。それじゃあね」


 そうしてようやく、二人は部屋を出て行った。

 勇は天井を見つめる。


(ああは言ったが、俺がこの世界に来る事になった理由はある筈だ。こっちで使命を終えれば、元の世界に帰してもらえるのか? ……皆に会いたいな)


 かつての仲間達の顔を思い浮かべながら、目を閉じ⸺


「勇ー! ご飯出来たわよー! 降りてきなさいー!」


 パッと目を開けて、勇はベッドから起き上がった。


(こちらの世界に目覚めて良かった事の一つは、食事が美味しい事だな)


 そんな、少し呑気な事を考える程度には、気が抜けてきていたのだった。




     *




「君に、私の騎士になってほしい」

「………………はぁ?」

話を書くに辺り、既に投稿分の内容を少し修正。

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