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7 兄王への疑念

 朝の光が、まだ開けられていないカーテンの隙間から柔らかく差し込み、鳥の囀りが窓の向こうから聞こえていた。

 従者が支度に訪れる前に目を覚ましたアレクシスは、ベッドの縁に腰掛け、ただその声をぼんやりと聞いていた。


 やがて控えめなノックの音。

「殿下、おはようございます。朝の支度に参りました」


 入ってきた従者が一礼し、盆を置く。

「今日も朝から聖騎士団の訓練場に行く。運動着を用意してくれ」


 顔を洗い、渡された布巾で水気を拭う。だが従者は布を受け取りながら、ためらうように言った。

「恐れながら……本日は訓練場に向かわれるのは、お控えになった方がよろしいかと」


「……なぜ?」


「昨日、陛下が狩に出られた際に、伝説級の魔物に遭遇なされまして。聖騎士団では重傷者が多数出たと伺っております。本日はその対応に追われているのではと」


 アレクシスの手が止まった。

「兄上は?」

「傷一つなく、ご無事でいらっしゃいます」


 安堵と同時に、胸の奥に重苦しいものがのしかかる。

「……そもそも狩りに行くのに、なぜ聖騎士団を連れて行ったんだ? 兄上の近衛隊で十分なはずだろう」

「それは……陛下のご命令で」

「どこへ行かれた?」

「エルデンブッシュの森でございます」


「……あそこは、魔獣の多い警戒区域ではないか。なぜ兄上はそんな場所に……」

「行ってみたいからと」


 あまりにも無責任な理由に、アレクシスの顔が険しくなる。

「聖騎士団は兄上のお守りではない! あれは対魔獣戦の最大戦力だ! なぜ狩りなんかに付き合わせて、無駄な損失を出させるんだ!」


 従者は怯えたように俯き、手が震えていた。

 アレクシスははっと我に返る。

「……すまない。兄上への怒りであって、お前に向けたのではない。知らせてくれて助かった」


 従者は深々と一礼し、静かに朝食を置いて退室していった。


 残された部屋に、鳥の声と食器の触れ合う音だけが響く。

 アレクシスは拳を握りしめ、ぽつりと呟いた。


「兄上は……何を考えておられるのか……」

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