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25 友の誓い

 学園の授業が終わり、帰り支度を整える生徒たちのざわめきが廊下へと流れ出していく。

 アレクシスはあえてゆっくりと教科書やノートを鞄に収めていた。

 指先がわずかに震える。胸の奥で、何かが変わろうとしているのを自分でも感じていた。


「殿下、帰りますよね? どこか寄る?」

 軽い調子で声をかけてきたのは、代々騎士団長を務める家の息子――ルーベン・リントホルム。

「少し話せるか?」

「いつも話してるじゃないか」

「なんだ? 悪巧みの相談? 僕も入れてよ」

「人払いってことだろ?」


 軽口を叩きながらも、三人の表情にはどこか真剣な色が滲んでいた。

 アレクシスはそんな変化に気づき、少しだけ肩の力を抜いて笑った。

 気づけば教室には彼らしか残っていない。


 椅子に腰を下ろし、鞄の上に両手を置いたまま、アレクシスは静かに言葉を落とした。

「……なぁ、騎士団長にお願いできないか。俺は軍務卿にお会いしたい」


 一瞬、空気が止まる。

 窓の外では、夕陽が傾き、机に橙の光が落ちていた。


 三人は顔を見合わせ、長い沈黙のあと、同時に頷いた。

 それからゆっくりとアレクシスの横へ進み出ると、膝をついた。


「殿下。父に話します。必ずや場を設けてみせましょう」

「お立ちになると決意される日を、我らはお待ちしておりました」

「必ずや、殿下をお支えします」


「お前ら……」

 声が震える。彼らの目は一様に潤んでいるのに、誰も涙を見せようとはしなかった。

 アレクシスも立ち上がり、彼らと同じ高さに膝をつく。

 肩を並べ、同じ視線で、未来を見据えるように。


「……ありがとう」


 夕陽が差し込み、四人の影を長く重ねた。


◇◇◇



 一方その頃。


「父上、僕です。お呼びですか」

「入れ」


 重厚な扉を押し開ければ、ホーエンベルク侯爵が執務机に肘をつき、こちらをじっと見つめていた。コンラートは優雅に部屋の中央まで歩む。


「お呼びと伺いましたが?」

「コンラート、王弟が動き始めたようだ。お前もちゃんとやっているんだろうな」

「やってますよ。アレクシス殿下はかなり焦っているようですし?」


 ホーエンベルク侯爵は口端を吊り上げた。

「アレクシス殿下にはいつまでもお子様でいてもらわなくては。腑抜けになった皇王は扱いやすい。我らが覇権を握る日まであと少しだ」

 指先で机を叩きながら、低く命じる。

「お前も王弟のお気に入りの女史を早く手に入れろ。せっかくお綺麗な顔に生まれたんだ。活かせ。いいな?」

「はい、父上」


 恭しく礼をして執務室を後にしたコンラートは、人気のない廊下で鼻先を歪めて呟いた。

「下品で嫌だ嫌だ。でも……クラリッサは綺麗だから、早く僕のものにしてしまわなくてはね」


 侯爵邸に静かに響く足音だけが、彼の声を飲み込んでいった。

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