EP4ホブゴブリン討伐3
「なんか想定より遥かに簡単に攻略出来そうだし、一気に行くか!」
刹那、ヒロは加速し、加速して進みながら迷宮を観測、補正していく-進んでみると壁や床の状況が微妙に変化していた。
その度に微調整しながら、最初に描いたルートを修正、ここは意図的に魔力を散らしてあるとか、罠のパターンは一定の周期で繰り返されているとか、瞬時にルートの構造を判断記憶して行く。
「入り組んでいるが、どこか規則的な響きがあるな、どの道も無秩序に見えて、一本だけに完全に中央に向かうようになってる、、、たった一筋だけ、通り抜けるたびにホブのであろう魔力濃度が濃くなり間違えた道は薄くなっている」
一方のホブゴブリンサイドでは。
「魔力の流れで私の君主の座までのルートを把握してしまったか」
「ご安心を君主ホブゴブリン、我らが術中に嵌ったも同然、2層目最奥部に来たらば最後、先程考案されたあのトラップが発動するのですから-それに新たに張り巡らせた一層目は突破されててトラップの動作確認で遅れて32匹以外皆殺しにされたが、最初に新たに張り巡らされた2層目のトラップが控えています」
「あぁ」
一方ヒロは、と言うと。
「道の床に魔法陣が敷き詰められている、歩数が7歩、11歩ごとに魔法が発動している、これ素数ごとで魔法の魔力濃度が増して行ってる-多分だが素数周期で仕掛けられているな」
と看破し、わざと合成数歩でリズムを崩してステージフロアを突破し。
「複雑に交差する通路の中心に転移陣、だが本物の道は、多項式曲線の交点、でしか存在しない座標にあると仮定したら、この交点は虚数解しかない、つまり実在しない道を見せてるだけだな」
と一刀両断し、正しい道を抜けて行く。
「どれもこれも確かに厄介な性質だよ、俺じゃなかったらね」
鏡写しの幻影空間に辿り着き、ヒロは辺りを見回した、大ホールに鏡のような空間で、敵が何十体も見えるが、複素平面の写像で生まれた虚像だった。
「虚数成分を実軸に写せば1体しか残らない」
属性魔法の結合則を駆使したゴブリンメイジが炎と風を組み合わせて爆発を引き起こしたり、土と雷を組み合わせて電撃床を制作するなどなど連携魔法を仕掛ける。
だがしかし。
「(あ、いやこれ、演算の順序を逆にすれば崩壊するな)」
気づいて即実行し、環論的に結合律を逆用して罠を自爆させる。
と喝破して瞬殺していく-一方君主の座では。
「まずい、まずいですぞ!想定以上に突破速度が速すぎます!」
「まさか想定して書き直した推定力量の100倍以上の速度で突破するとは、残り82万通りのルートも先ほど100万以上あるルートとマップの組み換えをしても約10分以下で通過したことから、間違いなく次のルートでも10分いや8分は切られるかと」
「最終決戦型のプランKに変更だ!散らばらせていたゴブリンを皆集めろ!」
「おいお前ら!君主の座に戻れ!」
「分かりました!(こんな短時間で12回と対策を含めたプランニング、さすがは君主の頭と言われたゴブリンだ)」
やつらは、想定外に想定外を重ねるヒロ相手に計画の変更を繰り返しながら着実に近づくヒロの対策を組み上げ続けていた-着実にしかヒロは迷宮を解き進めながら前進していた。
「パターンを掴み公式を編み量を崩す、小学生ドリルかよ」
するとヒロは突然、身体をピタっと止める、
敵は迷宮内で通信呪文を用い「侵入者位置」を共有している。
今まではあまりにも多重で全員の声との聞き分けに少し時間が掛かったが、聞き分けに成功した。
「暗号自体は単純な置換式、お前らの君主への通信、全部傍受してるぞ」
そう言うとヒロを認識していたマジックカメラや熱の感知や音の伝達までを伝える精密な部分まで完全に阻害する。
「な!?まさか我々が常に認識していたことに気付いていたと言うのか?」
「しっかり隠匿していま筈なのに、細心の注意を払っていた、それに隠匿以外にも注意を引く偽物の電波まで垂れ流しにしていたのに」
バゴーン!次の瞬間、轟音が鳴り響く。
「軽く走ったらすぐに着いちまった」
「あ、あぁぁ(何ぃぃぃ!?まさか再想定より3倍も早く到着しただと!?最悪の上を毎回超えやがって!)」
軍団の布陣がだだっ広い君主の座に待機していた。
「(この陣形、、、あ、回転対称性を崩せば一瞬で全体が瓦解するな)」
と中央突破し一気に壊滅に追い込むのだった-ただ一人残され一瞬、唖然としながらも、仲間が皆殺しにされたことをすぐさま理解して逃走に移行する。
「(配下が用意してくれた我だけ一瞬で地上に出られる迷路脱出口!すまぬ我が配下立ちよ、我らゴブリンの存続のために我の敵前逃亡、なんとも情けない我を許してくれ!)」
一気に駆け込みギリギリ捕まる前にホブゴブリンは脱出に成功する。
「はぁっはぁっはぁっはぁっふ〜」
「み〜つけた」
「なぁ!?」
なんと背後にはヒロがいたのだ。
「な何故!我が使用したらその一回限りで魔法陣は使用不可になる筈!」
「即座に再構築した」
「は!?無理だろそんな芸当!-大誤算だ、見誤っていたぞ、、、まさかこれほどまでの存在だとは」
「お前を討伐する、その首寄越せよ」
ジャキン、ヒロは、鋼製のソードを構える。
「我がこの世に生を受けてこの数百年間で三人目だ、我が第二形態を披露するのは」
瞬間、ホブの肉体は歪に蠢くと一瞬にして質量、全長が増加する。
「うぉ〜」
「我の従来の実力を解放したのだ、ゴブリン生最後の時間、存分に堪能させてくれよ、その力を」
「堪能?何を言ってるんだ」
「なにをっだ」
「既に死んだ者に、次があるとでも?」
ホブは頭以外すべて消し飛んでいた、そう、既に戦いは始まり、始まりと同時に終わったのだ。
「、、、」
「こと切れたか、、、ん?」
瞬間、生首だけのホブが光出した。
「蘇生保険」
瞬間、ヒロの顔面に拳が迫る、だがその拳が掠ることすらなく避けられたのだった。
「はぁっはぁっはぁっ、死後の世界であいつらが待ってた、だがしかし背中を後押ししてくれたよ」
「優しいお仲間で良かったなぁ」
「、、、お前が皆殺しにしたんだろう!」
瞬間、四つの腕でぶん殴りにくる。
「ふんふんふんふんふん!」
1本1本が秒速3000発の拳を突き出す。
「秒間1万2000回のラッシュだぞ!」
「全くもって、脅威には感じないな」
「舐めるのも大概にしやがれ!」
「おいおい先に手を出しておきながら舐めるだなんてどの立場からの発言だ?人類を舐めるなはこっちの言い分だろうが!」
軽々とホブゴブリンのパンチを超える速度で木っ端微塵に切り刻む。
「我に魔法の才があれば、我に配下と同じ力があれば、、、子孫を残していれば、、、済まない、地獄で待っていてくれ」
「君主」
「君主」
「君主」
「お前ら、、、」
魂だけで現れたのは、先程殺されたゴブリン達だった。
「我が力を献上させてください」
「私の力をお役立てくださいませ」
「君主、力お貸しします」
「あぁぁ、ありがとうお前ら、本当にいい部下を持ったものだ」
、、、、、。
「完全に消し潰したな、だが倒した証拠が、耳しかない、ん?」
びくん、びくびく、びくん、耳になってもまだ蠢いていた。
「死後の反応じゃあ無いよな」
ピカァン!瞬間、発光する、閃光が迸った直後、光の元を見るとそこには。
「第2ゲームを始めようか、今までに類を見ぬハンターよ」
「(さっきよりも洗練されている)」
ホブゴブリンは、今や第三形態と呼ぶべき形態へと至っていたのだった。