EP3ホブゴブリン討伐2
小鬼の大森林中央地帯-分かりやすく開いた洞窟の出入り口を発見する。
「なるほど、さっきの小さくてすぐに壁に直面する小さな洞窟じゃなく迷宮となっているんだな」
ヒロは、出入り口の門を開く-カチット何かが発動した音が小さく響く。
「(何だ)」
ビュン!門を開いた直後、幾百の矢が噴き出る。
「しゅ」
ヒロは、瞬時に判断し、バックステップと同時に床に仰向けに着いて回避する。
「人間、よく今の罠を回避したな」
開いた門から、ゆっくりと巨大で有りながら傍若では無い者が歩いて来た。
「ゴブリンアークじゃないか」
「君主ホブゴブリンの座に辿り着けると思っているのか?」
瞬間、途轍もない速度でアークはヒロの背後を取り-剣を振り上げて思いっきり振り下ろした-
ガキーン!剣を後ろに立ててヒロはその剣撃を防ぐ。
「へ〜、真っ向から1対1とは、中々自信家なアークだな、ゴブリンは性質上群れでの行動が基本だろ?狩も冒険者への強奪も」
「我は人間程度に集団で襲うほど卑怯ではない」
カキーン、ヒロが接着状態の剣を剥がすと同時に背後に振り向くと同時にバックステップで距離を取る。
「はいどうぞ!」
バシュ!地面を大量の木の根っこごと蹴り上げ多量の土粉塵を巻き上げる。
「視界を悪くしたからって我が位置を把握出来ないとでも?」
瞬間、アークは熱や呼吸音がする部分に向けて思いっきり横振りの斬撃を放つ-周囲にある幾数十本の木々を真っ二つにする。
「むっ手応えが無い、土煙に隠して分身を魔法で作ったか?それとも」
「ばーか、一瞬で動いて避けたんだよ」
「な!?貴様も土煙で我を認識出来てなかった筈!?まさか今振られた剣で大雑把な位置を特定して背後に回ったと言うのか!?」
「ビンゴ」
ザシュ、ヒロはアークの首を切断する、だがしかし-ジュワジュプププ、切った瞬間から肉体が再生し始めたのだった。
「素晴らしい、まさか細胞分裂の加速を使わされるとは、見事なものよ!」
瞬間、膨大な熱エネルギーが空間を占めた。
「なんだ?」
「ふん!」
アークが一気に力を込めた瞬間、熱が一気に押し寄せる、土煙が一気に晴れる。
「戦いで本気を出させられたのは、幾十年振りか、貴様本当に良いぞ!」
「あっそ、はよ掛かって来いよ」
「我の窮屈だったゴブリン生に、開放感をくれ!」
瞬間、アークは口に熱エネルギーが集中した。
「熱集咆線!!!」
瞬間、放たれた爆大なエネルギーの放出により、大森林の一部を抉り壊す、一列の熱線は
触れた物体の殆どを分子スケールレベルで粉砕し尽くした、だが。
「直撃して尚不動、それどころか装備以外は無傷とは、やるでは無いか!」
「お前も良い力の持ち主だが、俺には効かないな」
「我が君主にもお褒め頂いた力だぁ!」
「ふん」
バガーン!ヒロが少し強く力を込めて放った拳が直撃するや否や全身爆散して粉々に成る-だがしかし。
「ふんぬぁ!」
「凄い回復力だなぁ、(核に由来する回復力なのか?)-お前、どんだけ潰したら死ぬんだ?」
その発言により、アークの背筋がピンと立つような悍ましくも懐かしい感覚を呼び起こす。
「さぁな、自分でも自分の限界は知らん!それより貴様!素晴らしい窮地だぞ!」
「喜んで貰えたみたいで何よりだ」
刹那、シュシュシュシュシュとヒロが放った連続ジャブによりアークの身体は更に細かく粉砕されていく。
「(防御しても無駄、その上こいつなんて腕力してやがる、自然治癒能力が間に合わない!)」
再生した直後から破壊され続けて行く。
「ま、死」
「お疲れさん」
ブシャン!完全にエネルギーを枯渇したゴブリンアークは再生力を完全に失い即死する。
「大体8発か〜、、、体力を温存するにしても、いや体力温存するほど疲れてないな、良いや」
アークを打倒してすぐに門を潜り迷宮に入るのであった-一方の地下では。
「弓やトラップは避けられる前提で力量を推し量るためにメイジで身体能力を強化した精鋭のアークを向かわせたんだが、まさかあれほどまでに差があるとは」
「いやはや汗一つかかずに、ああも一方的な戦いに成るとは」
「なんと言う強さだ、トラップの数と強度をすぐさまあげよう、ゴブリングリーンに囮役になって貰い、その間にメイジ1000とスィーフゴブリン1000の部隊で各ルート物理と魔法の罠を可能な限り設置してくれ-出し惜しみしてる場合ではない」
「承知致しました!メイジ1000スィーフ1000で100号組んで各ルートに可能な限り罠を敷け!あまり組は配属出来ない位置で張れ!」
「うぉぉぉ急げ!!!」
「罠を張れー!」
敵はヒロに対する対策で大忙しであった-迷宮一層目。
「ずいぶんと広いな、、、」
カツ、カツ、カツ、一歩一歩が空洞の静寂に音を反響させる-ヒロが進んでいくと5本の分かれ道を発見する。
分かれ道に立った瞬間、ヒロはただ目の前の通路だけを見ているわけではない-洞窟全体の構造を頭の中で俯瞰し、通路や壁のパターン、光や音の反射から安全度を推測する。
「土壁の苔、これは湿気の高いところで根付くコケ植物の分類群じゃないか、床の魔力の濃淡、湿り気、足跡、風の通り道、、、ふむ」
様々な要素を確認してヒロは、瞬時に解析する-こっちは罠の匂いが濃い、あちらは人や魔力の気配が薄い、といったリスク管理を行う。
「こっちだな、と見せかけている、な〜んだ既に幻影のベールの術中だった訳か、中央に近づく道も罠に引っかかりにくいルートも様々な計算が意味が無い」
ヒロは指をパチンッと鳴らす。
「な!?貴様何故気づいた?入り口に貼られた魔法陣を通ることで、特定の場所で違う光景や香りが見えるように成る幻影の魔法を」
「答えは簡単だよ、大森林地帯のこの層では絶対に現れぬ筈の苔が生息していたり、罠があるであろうルートに足跡が繋がっていたり、見え見え過ぎるね」
「くぅ、こうなったら、おいお前ら!」
するとゴブリンメイジとシールドの軍団が押し寄せて来た。
「メイジを守れ!」
「(くっくっく、バカな人間め、シールドには耐久力が向上する身体能力向上属性系統の魔法を使っているのだ)」
前衛のタンクに後衛に補助とアタック要員と、基本に忠実、単純明快にして強力強固なパーティ編成でヒロを襲ったり
「(狭い空間、撤退も出来まい!)」
だがしかし。
「甘いな、とことん隙だらけだ」
「な!?」
常人ならば縦の横並びに迫る壁を前にして-逃走を選ぶだろうが、ヒロは違う、盾のほんの数ミリの隙間を見つけると。
「ふん」
指を差し込む。
「な!?魔法か?バカ目!そんな攻撃が通用すると」
「閉所で崩れる可能性があるのに魔法なんか使うかよ!」
バン!シールド共をぶっ飛ばす。
「いがゃぁぁ!?どんな筋力してんだ!、、、-え?」
最後尾で見ていたメイジは驚愕する-今さっきまで生きていたゴブリン部隊がたった一撃のパンチで皆殺しのミンチ状態になっていたのだから。
「総勢180体、その上効果バフ付きだぞ!ならば尚更君主の元には行かせられないな」
覚悟を決めたメイジが全力で魔法を放とうとした、だがしかし。
「あ?」
ぽた、ぽた、ぼた、ぽた、ぽた、、、。
「哀れなものだな、思考と同時に魔法陣を展開しようと足りない思考回路とオツムで頑張ったんだよな」
「な、あ、が(喋れない)」
気づいてしまう、メイジは自身の下半身が無いことに。
「さっきの奴と違って魔法で擬似肺を形成出来ないか」
「、、、」
「あらら、既にこときれてるや」
ポイっとメイジの生首を投げて迷宮の奥に足を進めて行くのだった。