EP2ホブゴブリン討伐
「けっけっけ、まんまと人間は騙されますよ、偽物巣窟にね!」
「、、、」
屍の積まれた座に沈黙し、ゴブリンを束ねるは地方のホブゴブリンそいつであった。
「次の命令を、我らが主君」
「最近暴れ過ぎたから、クジャナフの地方のギルドでは我々の手配書が出ているらしい、故に今は防戦するべきだろう」
「ならば更に偽物洞窟を掘らせましょうか?」
「あぁ、メイジ300にリーダ役にアークを1の編成の部隊を10号組め、効率的に土系統属性に秀でたメイジを駆使しなさい、あと行動隠蔽役に明るさ調節に優れたゴブリンメイジを最低一人は連れて行け」
「畏まりました!では王の護衛はアーク2万、グリーン15万、モンク1万、メイジ3万、ソード3万、シールド3万と、今月も従来と変わらず、地下の精鋭が計27万と成ります」
「わかった」
ホブゴブリンは自身の配下に役割を与える、、、一方でヒロはと言うと-ヒロはホブゴブリンが出現した地に訪れていた。
「土など目に見える痕跡は消えているな、だが爪が甘いな、配下にでも任せたのだろうが、土に微量に残る魔力の軌跡が消し切れてない(だが配分が妙だな、残るにしても、、、警戒はしておこう)」
畑から離れて小鬼の大森林地帯に突入するのだった-ざっざっざっざ、見渡しの悪い木々を歩く。
「木の根が歩くのを邪魔して通常よりも体力が持って行かれるな、一応携帯食料やナイフがあるし時間制限は無かったからゆっくり行こう」
すると、見え見えの罠が張ってあった。
「踏むかよ、いや待てよ、ふふふ、冒険譚では、こう言った魔物が張った分かりやすい罠は、お約束、だがしかし本命は朽木や枯れ葉の下にある魔法陣式の罠だな」
するとヒロは、そこら辺に落ちていた石を少し離れてから投げ入れる-カチャン、何かの罠が発動した。
「ビンゴ」
すると深い穴が空いていた。
「下には鉄製の棘、油断した冒険者のであろう装備と骨が、うぇ〜、、、」
ザッザッザ、魔力の残滓を追うと洞窟を見つける。
「ふむ、、、少し進んで、穴倉も見つけたが、あまりに少なすぎる、それに」
「きょぎょ!?」
「監視役が見え見え過ぎる」
「人間!よくぞ気づいたなぁ!」
ぴょんと飛び出てくる。
「おいお前ら!」
するとやつは黒い髑髏型の笛をぴーーー!!!っと鳴らすと-ゾロゾロと数十体のゴブリンが出てくる。
「ケケケ!まんまと掛かったなぁ!」
「これで今週は七人目だ!」
「今日はどうやって遊ぶ?」
「そうだな、頭を切り落としてサッカーでもしてやるか!」
「ケケケ!」
「ケケケ!」
「ケケケ!」
最初は三人編成で飛びかかって来た。
「くらえ!棍棒!」
飛びかかって来た一体が振り下ろした棍棒を避ける-バン!と土が弾ける、床には60cm程度の窪みが形成される。
「ぎひゃ!」
残りのやつは、木こりの片刃の斧を横に振る-その攻撃も軽やかに躱す。
「しゅ〜」
「ぎゃ!?」
ヒロは息を吐く間に鞘から素早く抜刀して3体を同時に三枚卸しにする-ボトボトっと肉片が地面に落ちるや否や、残りの個体は少し青ざめた顔をしながらも強く武器を握りこっちに走って来た。
「死にやがれ!」
「手加減は無しだ!」
「勇者の剣はなんだか魔王戦にとっておきたくて、鋼製のソードを購入していたが、中々切れるじゃないかぁ!」
「不味い!?皆盾を構え!」
地面を蹴ると地が爆ぜる、瞬間、軽く飛び突進したヒロは、同時に残りの盾を構えようとしている14体のゴブリンの頭と胴を切り離してやる。
「なは!?」
ボトボトボトボトと奴らの肉は床に転がった。
「ふん」
シュン、空に剣を振り下ろし、奴等の血液を落とし、洞窟を出ようとした瞬間-洞窟の入り口が塞がれ、更にシューっと洞窟の入り口横からガスらしきものが噴出される。
「残念だったな」
「へ〜頭だけでも生きていけるんだ」
「これは我々が死亡したと上層部に判断された際に自動的に発動される毒ガスのトラップさ!俺らと地獄に行こうぜ冒険者ぁぁぁ!、、、」
「完全に事切れたか」
「さてと、どうしたものか、土塊の壁なら切り壊せるかなぁ、、、」
軽くノックして壁を叩き、ざっくり体積や材質を調査してみる。
「(音の響きから大体90cm前後の厚みに、横が10m、縦が6m程度あるな、だが材質、普通ならこうふわっと成るんだが、、、)」
「元来の土なら、岩石が風化した砂や粘土などの無機物と植物の遺骸が分解された腐植などの有機物、そして微生物や昆虫などの生物から構成されていてそこに空気と水も含まれている、基本的に柔らかいものだが、ふむ)なんで剣より硬いんだよ、、、剣で切っても折れるし勿体無いよな〜どうせ魔法的な作用が働いてるんだろうか、、、」
「発動したロジックは仲間の死、どうせ捨て駒と偽物の巣窟なんだろな、なら不可逆的なもので再利用は、あのゴブリンが言ってた上層部とやらが来て再建築するんだろうな」
「ならちょ〜っち力業で行くか」
ヒロは少し壁から離れる-ギュッと拳を握る-ヒロは、ふんっと、少し筋肉に力を込める、土壁に向けてパンチを放った。
旋風が巻き起こる、その拳圧から放たれた風は一瞬にして土壁全体を爆砕する。
「す〜っっっぱぁ〜〜〜空気うっま!息を止めてたから酸素が肺を満ちる感覚が鋭くなってるわ」
土壁をぶっ壊してからまた大森林を闊歩すると。
「はぁ?」
約130m進むと、そこには、また洞窟があった。
「(さっき追って来た魔力の痕跡が偽物の洞窟に繋がっていた、つまりあそこにある違和感を感じる魔力の痕跡も罠に誘導するためのものだろうな)」
「討伐対象であるホブゴブリンは、牛や鶏と言った家畜を残虐に殺したにも関わらず、バラバラの死体を放置したのだとか、ギルドでは発見者に驚いて食べる暇もなく逃げ帰ったと定義された」
「だがしかし、このゴブリンの偽の巣穴に来るまでにあった見え見えの罠に隠された自然に馴染む穴に落とし刺し殺す二重トラップ、これらから推測するに多分だが自身の嗜虐性を満たすため、あくまで愉悦からした行為だな」
「となると、ホブゴブリンは必然的に高い知性を持つと言うことだ、しかしながら先程のゴブリンにそこまで高い知性がある様には見えなかったことから、恐らくだがホブが指揮官と成り大森林地帯を様々な役職持ちを通して統括してると考えるべきだな」
歩き偽の洞窟を壊しながらヒロは、周期的なパターンを発見して仮説を30%から60%の信憑性に変えて行く。
「やはり中央に向かうたびに数が増え、更にゴブリンの数や強い役割のソードやシールドも現れ始めた、洞窟の配置は不規則に見えるが、繋げば必ず中央に収束する、トポロジー的には一つの穴を囲む構造だ」
「そして痕跡だ、この違和感のあるゴブリン達が意図して放ってある変異している魔力は、熱方程式みたいに拡散している、濃度が最も高い点が発生源は他の考えの甘いハンターなら奴らの本拠地と勘違いするだろう」
「魔力の拡散を方程式的に逆算すると中央に行かない様にうまく仕組まれている」
「ならば答えは簡単だな、大森林地帯で最も全体に伝達しやすく、組織の核としてのボスが仕組んだ筋書きを素早く動かすならば、必然的に中央、それも単に大森林の表面的な中央ではなく、自然に馴染み見つかりずらい地下だな」
こうしてヒロは大森林の中央に歩いて行くのだった-森林中央地下国家。
「君主ホブゴブリン、一人厄介な人間が迫っている、それは今後2日間で君主の首を刎ねる可能性がある」
「ふむ、ゴブリンディバイナーよ、貴様の未来観測は確かに高い精度を誇る、述べよ、未来を転換する分岐点を」
「畏まりました君主、はぁぁぁっは!確率解析学的演算!」
確率解析学的演算、王からは未来観測と呼ばれる占い師の技は、高い知性により発揮する-確率微分方程式に未来の揺らぎを代入し、カオス理論で収束する分岐点を探す。
それは確率論に微積分の概念を適用し、確率的現象を数学的に認識、それにカオス理論を組み込んで幾重にも積み重ねた計算から成る、高い精度の未来予測だ。
「占いが完了しました、結果として避けられない巨大な罠を貼ることが確実だと思われます、脅威と成り得る存在は既に我々の本拠地、君主の座を掴みつつあるようです」
「なのでそれを逆手に取ってやるのです、君主の座にメイジを呼び巨大なトラップを制作して罠に掛かったそいつをアークやソードなどで袋叩きにするべきかと」
「ふむ、だが失敗した際に座に既に到達した其奴目がもし仮に罠を破壊か脱出した場合、どうする?例え数の暴力で勝っているとはいえ敵は自爆特攻なり、策略を持っているだろう」
「我々だけならず敵にも損失を与える、君主らしい考え方です、防戦でもカウンター的で自分が一方的にはやられない獅子、、、おっと失礼、ならば水系統属性で破壊されにくいトラップなどに致しましょう」
「うむ、素晴らしい」
「それでですね君主、我々がもし仮に敗北した際にすぐさま撤退が出来る様に、多連結式の迷路を展開する準備も出来ています、後追いされた際に逃げ切れるように」
「貴様らが負けるとは思ってはおらぬ」
「!!!」
「有り難きお言葉、その言葉が似合う様、我々配下精進いたします!」
「ホブゴブリン様万歳!ホブゴブリン様万歳!ホブゴブリン様万歳!」
「ホブゴブリン様万歳!ホブゴブリン様万歳!ホブゴブリン様万歳!」
「ホブゴブリン様万歳!ホブゴブリン様万歳!ホブゴブリン様万歳!」
敵も前進する勇者相手に作戦を練っていたのだった。