EP13亡国の姫様
滅びた峡谷-魔王軍により踏み荒らされたその地、地下のシェルターに一人の少女は隠された、その子は峡谷を仕切る者、言わば王、その御方の娘だった。
「もう何もないなぁ、殴り潰してぐしゃぐしゃにして、焼き焦がしたし、もう行こう」
「また人間ぶっ殺してえなぁ、きしゃしゃ!」
「、、、!!!」
息を殺し涙を流しながらなんとか悲鳴をあげぬ様に頑張った、親の悲鳴が聞こえようが、友達の悲鳴が聞こえようが、姫は恐怖に悶えながらも、抑えた。
「おぁさん、、、おとぉさん、、、」
もはや流す涙は涙を出し過ぎて、その雫は赤色に変わっていた、あまりの絶望と虚無感、踏み躙られた尊厳の大地に、少女は。
「ぶっ殺してやる、皆殺しだ、無惨に惨たらしく終焉を与えてやるっっっ」
静かに、だけれど致命的に、彼女は今まで抱いたすべての思想、考えが一瞬にして虚無に裏返るほどの膨大な殺意の渇望は、皆殺しの想念だった。
心の奥底から湧き上がる禍々しい狂気、赤黒く煮えたぎる殺意は、単なる少女が、いや、人間が、もはや凶暴で獰猛な野生の猛獣すらもだし得ぬような混沌とした殺意が宿っていた-それからの彼女は、まるで魔物/魔族絶対特攻、歩く死とも言うべき存在に成る。
「やめ!」
ぐしゃり、ブシャンー!!!たった一撃で魔族の頭を殴り破壊する。
「よ、良くも」
バゴーン!バン、バン、バン、発言する余地すら与えぬままに、たった1時間で総勢約100億匹のオーガの地下大帝国を殲滅し尽くす。
「、、、もう、私の家族は居ない、ならばお前らの大切なものも、絶望の連鎖も含めて蹂躙し尽くしてやる」
「ピギャアァァァ!」
奴らの赤子を大量に大剣に串刺しにすると、彼女は高く突き上げて血を浴びる。
「お前らが私にやった事、決して許しはしない、余りある滞在、償いきれぬ傷への代償、貴様らの種根絶を持って許してやる」
「じねぇぇぇ!」
赤子を殺された大量の母魔族が襲いくるが、皆蹂躙し、怒り狂った父もまた、蹂躙し尽くした-回復薬を使っても品質不足により蘇生不可となった、片腕を失い、片目を失い、片足を失い、それでも尚、怒りに伴い破壊力も指数的に上昇し、義手義足義眼を嵌めて残った身体で大剣を振り尽くした。
彼女はアービュスト・トリア、殲滅の女帝とまで魔王軍に恐れられる程に上り詰めた女だった、彼女は今、魔王と言う諸悪を完全に消し潰すために、魔物、魔族を潰し続けていた。
そんなある日、新聞記事を目にする。
「勇者だって、、、」
一瞬にして彼女の脳裏によぎったのは、何故助けに来なかったと言う疑問でも無く、自身の最終的な渇望を実現させる唯一存在者たる勇者への服従だった。
過去にも愛だった人は居た、可憐なお姫様は、色白な肌、狐色の髪、悪戯っ子な君が好きだった、だがその餓鬼は、魔王軍を誘導するスパイだったのだ。
立て続けに発生した最悪の中で、彼女の青の感情は、時間経過に伴って紫、赤に変色のだった-そうした経緯を経て、物資の補充や休息を兼ねてヘイワーに馬車で向かうヒロよりも先に走ってヘイワーに先回りしていたのだった。
「へ〜、じゃあその、アービュスト・トリアさんは、私のお供に成りに来たと?」
「はい、勇者様、私はあなたにお供しに来ました」
「え?あぁはい(えぇ?デッカくねぇ?勇者の冒険譚とかって普通、もっとこうなんて言うかさぁ)」
※彼女は身長2m60cm、体重180kgのパッキパキお嬢様です。
「勇者様、それでこれからどうするのですか?」
「今から冒険者ギルドに行って、登録証のランクを見に行くよ」
「なる、ほど?」
「魔王討伐のプランは随時伝えるから、そんな顔しないでよ、意図しない返答は悪かったから」
こうして勇者一行は、冒険者ギルドに向かう。
「プラチナム帯に上がった、後少しでダイヤ帯だ」
「何故ランクを上げるのですか?」
「カクカクシカジカで」
「なるほど、つまりお金稼ぎと経験を積む事を目的とした有意義なものと、理解りました!では私は何をしていたら良いですか?」
「う〜ん、、、魔王に関する情報収集かな、冒険しながら一応マルチタスクで収集しようとはしてたんだが、前線に出て戦ってる魔将軍については出るんだが」
「肝心な魔王については、調べがつかない、と、私も古今東西巡れる範囲をくまなく探し、
老若男女聞き込みはしましたが、一番重要そうな話は、風の噂程度、それは魔王軍に四天王が存在する、と言うものです」
「重要な情報だな、魔王すら一切わからなかったが、魔王軍と言う大規模な組織の重要な根幹を務めているに違いなさそうだな-あこれ受注で」
「はい、あと私とヒロさんを冒険者パーティとして登録して下さい」
「は〜い、ヒロさん、もしかして彼女さんですかぁ〜ニヤニヤ」
「違いますよ」
こうしてプラチナム帯の高難易度クエストを受注して、早速にも冒険に出かけようとして居た。
「よ、久しぶり」
不意に肩を掴まれたヒロは、咄嗟に肘を放つ-ガシッとエルボーが捕まえられた。
「凄いな、まさか不意に軽く打った背後のエルボーで俺の掌を粉々にするとは、まぁ再生可能だけどね」
「あんたは、ノヴァじゃないか、不滅の魔術師のクレハに俺の情報を伝えに行ってから久しいな」
「怖気付いていた訳じゃないからな?私も私で忙しかったのだ、クレハ様と共に前線で蘇生と量産を繰り返すコピペ魔族共を倒し続けていたんだ」
「コアを叩かないのか?」
「はぁ?あいつらは位相変移の魔法を使い感知も出来ない様な場所から無限に送られてきてんだよばーか!そんなことも分からないの」
バゴーン!急にノヴァの頭がぶっ叩かれる。
「ウガァァァァァ!?いってぇぇぇ隕石落下か!?」
「勇者様になんて口の聞き方だ無礼者!万死に値する!」
「あぁ待て待て待て!カオス過ぎる!」
なんやかんやで、場は収束していくのだった。