再会を誓って
「離れ難い、など」
ウィッテルド公の馬車でフォルクナー侯夫妻の家まで連れられることになって、ベラたちと別れ、別れの挨拶をしようとしたわたしを抱き締めて、王様が言う。
「誰かに思ったのは、いつ振りだろうか」
ハグにはすっかり抵抗がなくなったようで、なによりだ。
抵抗がなくなり過ぎて、離して貰えないのが、新たな問題なのだけれど。
「王后教育の名目で」
王様越しに、ウィッテルド公の声が聞こえる。
「王宮に住まわせることは可能です。ただ、すぐに、とは行かない。お互いに、準備は必要ですから」
「わかっておる。わかっておっても、離し難いものは離し難いのだ」
そう言えば、通過儀礼のときも、王様はなかなか手を離そうとしなかったな、と思う。
夢のように消えて、二度と会えないのではないかと。
少し考えて、首のロザリオを外す。今日のわたしが持っている私物は、これしかない。
「王様」
「……みっともないとわかっている。こんなことでは嫌われるとも」
「そんなことはないですよ。ですから、これを」
片手で掴んだロザリオを、王様の顔の前に掲げた。
「夢ではないし、わたしは消えません。その、証拠として、これを、持っていて下さい」
「これは」
「洗礼を受けた日からずっと、肌身離さず持っていたロザリオです。もう、わたしの一部みたいなものですよ」
木製の珠を、細い紐で連ねたもので、王様に渡すには、ちょっとみすぼらしくはあるけれど。
「そんな、貴重なものを」
「見ての通り、高いものではないので、お渡しするのはどうかと思うんですけど、いま、お渡し出来るものがこれくらいしかなくて」
なにせ、ドレスもリボンも靴も、なんなら下着だって、モルガン家に用意して貰ったものだから。
「それでも良ければ、わたしと思って、持っていて下さい」
王様が、おもむろに、わたしを離して跪く。
「借り受けよう。首に掛けて、貰えるだろうか」
「わかりました」
髪や顔に引っ掛けないよう、慎重に、王様の首へロザリオを通す。
素朴なロザリオは、やっぱり王様には不釣り合いだったけれど、王様はそれはそれは大事そうに、首から提がったロザリオを握り締めた。
「大切にしよう。そなたと再び、会えるまで」
「はい」
「そなたにも、代わりのロザリオが必要だな」
言って立ち上がった王様が、自分の首から、元々着けていたロザリオを外す。木の珠に紐を通したわたしのロザリオとは違う、金色の鎖に連なる珠は真珠。鎖は真鍮ではなく、金なのだろう。これひとつで、いったいどれほどの価値になるのか、わたしには想像もつかない。
畏れ多過ぎて触れるのも恐ろしいくらいなのに、王様は有無も言わせず、わたしの首にロザリオを掛ける。
「国宝のひとつだ。こうして渡しておけば、そなたならなんとしても返しに来なければと思うだろう?」
たった半日で、わたしに対する理解度がずいぶんと上がったようで。
「必ず、返しに来ておくれ。さもないと、この身でそなたを、迎えに行ってしまいそうだ」
ひょいと与えるにはあまりに高価過ぎる首輪を掛けられて、正直なところ、今すぐにも返したくて仕方ないけれど、それで王様が少しでも、心安くなるならば甘んじて受けよう。
「必ず返しに来ます。約束です」
差し出した小指は、今度は躊躇いなく絡められた。
「待っている。すでに、一日千秋の心地だが」
お別れのハグも自然で、これが半日前は、隣に座るのもおっかなびっくりだったひととは思えない。
「王様」
座っていたときと違い、立っている王様は顔が遠い。
「かがんで下さい」
「ああ」
近付いた美しい顔の、陶器のように滑らかな頬を啄む。
顔を離せば、至近距離で目が合った。
「離したくない」
「また、会いに来ます」
判断をするのはわたしではないけれど、王命ならば逆らえはしないだろう。
とは言え昨日の今日や、今日の今日で喚び出されては、養父母の負担になる。
「次に会うときは、王様のために、ハンカチに刺繍をして来ます」
刺繍が特別得意と言うわけではないけど、人並みの腕はある。王様への献上品としては許されないだろうけど、婚約者への贈り物だったら、普通に許されるくらいの腕。
「手は早い方ですが、それでも一朝一夕とは行きません。刺繍が完成するまでは、待って頂けると助かります」
「……」
「会えない間も王様のことを思っていますと、お伝えしたかったのですが」
王様が、わたしをしばし見下ろして、息を吐いた。
「そなた、悪女になる才能がある」
「王様にだけ、ですよ」
「……何日掛かる」
凝ったモチーフでなく、小さくイニシャルを刺すだけならば、一時間と掛からないけれど。王様に渡すのだから、きちんと凝った、見栄えのする刺繍を刺したい。
ぱ、と、片手を広げる。
「五日ほど」
「長い」
言うと思った。わたしの王様への理解度も、多少は上がったのではないだろうか。
「すぐですよ、五日なんて」
「そなたにとってはそうかも知れぬが」
「それなら」
王様の、漆黒の目を見据えて笑う。
「お手紙を書いて下さい。届いたら、返事を書きますから。そうしたら、手元に手紙も残りますよ。わたしがどんな紙とインクを使って、どんな文字で、どんな言葉を綴るか、気になりませんか?」
王様が、深々と息を吐いた。
「ほんとうに、悪女になれるぞ、そなたは」
言ってくしゃりと、わたしの頭をなでる。
「わかった。五日だな。それ以上は待てぬぞ」
「わかりました。頑張って、刺繍を完成させます」
「楽しみにしている」
すい、と顎を掬い上げられ、美しい顔が視界いっぱいに広がった。唇に触れる、温かく柔らかいもの。
「?」
「約束だ」
顔が離れてから、唇に口付けをされたのだと気付く。
顔に、熱が昇るのを感じた。
「はは」
王様が、楽しげに笑う。
「そなたも、そのような反応をすることがあるのだな」
だって。
「唇へのキスは、慣れないからしばらくはしないようにって、王様が」
それにわたしだって、唇同士で触れ合う経験なんてそうはないのだ。
「言ったな。言った。だが」
ひとの悪い顔で、王様が笑った。
「そなたにばかり、してやられるものだから、反撃してやりたくなった」
「そんな、子供みたいな」
「子供みたい、か」
王様が目を細める。
「そうかもしれぬ。経験がないのだ。こうして、誰かと触れ合うことなど、なかったのだから」
ああ、そうだった。
「それなら一緒に、進んで行きましょうか」
触れ合いの先輩とは言えわたしだって、婚約者を持つのは、未来の夫と過ごすのは、初めてなのだ。
お互い初心者ならば、初心者同士、支え合って進めば良い。
「勝負ではなく、支え合いですよ。ひとりとひとりではなく、ふたりなんですから。手を取り合って、仲良く進みましょう」
だから不意打ちは良くない。お互いに。
「ああ。そうだな。そなたとは、手を、取り合えるのだったな」
「そうですよ。手を取ることも、寄り添うことも、出来るんです。でもね、王様」
すぐに王宮に、住まわされることになる、と言うのならば。
「離れて暮らすから楽しめることも、あると思うんです。それこそ、文通だってそうですし、今なにしてるかなって想像したり、会える日を、指折り数えて待ったり」
ね、と、王様の手を取る。
「楽しんで下さい、王様。こうして共にいる時間も、離れている時間も。わたしが王宮暮らしでないあいだしか楽しめない、貴重な時間ですから」
「そなたはほんとうに」
呆れたような口調。けれどその目は、眩しいものを見るようで。
「なんにでも、幸せを見付けるのだな」
「だってその方が、楽しいじゃないですか」
「見習おう」
わたしをぎゅっと抱き締めてから、ようやく王様はわたしを手放した。
「そうだな。この、不安も、恐怖も、苦しみも、そなたと出会っていなければ、感じ得なかったものだ。そう思えば、それすら愛しく思えるか」
「はい。会いたいと言う気持ちが募れば募るほど、やっと会えたときの喜びも、深まるものですよ」
一歩離れて、礼をする。
「それでは、名残惜しくはありますが、御前失礼致します。また、お会い出来る日を、こころより楽しみにしています」
思わず、と言ったように手を伸ばしかけた王様が、ぐ、と耐えるように握った拳を引くのを見て、微笑む。
「では行こう、レニ。陛下、御前失礼致します」
陛下の未練を断ち切らせるように、ウィッテルド公がわたしを促す。
「はい。お祖父様」
「くれぐれも、丁重に扱ってくれ」
「ええ。息子夫婦としても、念願の可愛い娘です。すでに嫁入りが決まっているのが寂しくはありますが、ややもすれば実の子以上に、溺愛するかと思いますよ」
横に立ち、背を押すウィッテルド公の手は優しい。
高位貴族とはもっと、冷たく厳しいものかと思っていたが、違ったのだろうか。
「後継や、政略の駒ならば、相応に厳しくもするが」
わたしの疑問などお見通しだったらしいウィッテルド公が、王宮の廊下を歩きながら、静かな声で言う。
「きみは違うからな。もちろん、きみが傷つかないために必要な知識や知恵、技術は身に付けて貰う必要があるが」
わたしを見下ろすウィッテルド公の目には、敬意が見えた。こんな、底辺貴族の小娘に、大貴族が敬意を?
「王はただでさえ孤独だ。本来であれば后や妃がその孤独を癒すものだが、陛下はそれすら、望めない立場であらせられた。きみはやっと現れてくれた、陛下の孤独を癒せる女性だ」
そのような女性が、私が生きているうちに、現れるとは。
万感の思いが、込められた言葉だった。
「陛下の忠臣のひとりとして、そのことに、心から感謝している。心ある貴族の多くも、同じ思いだろう。わかるか?きみは、陛下だけでなく我々にとっても待望の王后候補。生きて陛下のそばにいてくれるだけで、尊くありがたい存在だ」
「わたし、が」
「百年以上、誰も成し遂げられなかったことを、きみだけが成したのだ。自信を持てとまでは言わないが、自覚は持ちなさい。自分の価値を理解していなければ、危険な立場になったのだから」
危険。そう。危険だ。
その魔力から、近付くことさえ難しい王様と違って、わたしには誰でも近付ける。狙いやすい弱点だ。
「もちろん私も、息子夫婦も、きみを守る策は講じる。だが、きみ自身も、己を守る術は持ちなさい。そのための協力を、惜しむつもりはない」
厳しい言葉と眼差し。けれどそれは、わたしの為を思ってのもの。
「ありがとうございます」
お礼を口にすれば、ウィッテルド公は目を細め、わたしの頭をなでた。
「陛下に触れられると言うだけで、愚かであっても価値はあるが、賢明であるならより望ましい。私は陛下に触れられる女性が、きみであったことを喜ばしく思うよ。ウィッテルドに連なる者として、きみを歓迎しよう。困りごとがあれば、遠慮なく言うと良い」
両親は、最後までわたしを認めてくれることがなかったのに、全く血の繋がりを持たない、昨日までは雲上人だった公爵閣下が、こんなにも簡単に、わたしを認めると言う。
「たとえ養子であっても、きみは私の孫だ。孫は甘やかすのが、祖父という者だからね」
実の祖父母に、甘やかされたことが、あっただろうか。兄姉は愛されていたけれど、落ちこぼれのわたしのことは、なきものとして扱っていたように思う。
でも、仕方がない。裕福さは余裕を生み、貧困は余裕をなくす。貧乏なメレジェイ家に、家への大きな貢献が望めない魔力なしの落ちこぼれを、大事にする余裕などなかったのだ。
「ありがとうございます。ご期待に添えるよう、努力します」
「きみは」
ウィッテルド公は言葉に迷って、そして、発言を取りやめたようだった。
「きっと、きみと陛下は仲良くなれるだろう。私がきみに望むのはそれだけだ。陛下と仲睦まじく過ごせるよう、そして、その生活を一日でも引き延ばせるよう、努力すると良い。それだけで、ウィッテルド家からきみに与えるすべてのものへの対価は、十全に返せてお釣りが出るほどだから。だが、気負う必要はない。きみはきみのままで、あれほどまでに、陛下に必要とされたのだから」
馬車に着く。ウィッテルド家の紋章、吼える双頭の狼を掲げた、立派な馬車だ。ウィッテルド公は自分が進行方向に背を向け、進行方向に向く席にわたしを座らせてくれた。
「ウィッテルド家が与えるものは、遠慮せずに受け取ると良い。すべて、きみを他家に取られないようにと、下心あってのものだ。私ときみの養父母の親切は、親切にする正当な根拠があるものだから、気にせず受け取りなさい。その代わり、それ以外の者からの親切は、迂闊に受け取らないように」
「はい」
身を守るためだ。絡め取られてはいけない相手に、捕まらないようにするために。
「よく、頭の回る子だね」
ウィッテルド公が目を細める。
「将来が楽しみだ」
そんなこと、未だかつて言われたことがない。
「刺繍をすると言っていたか。道具は明日朝には揃うように手配しておこう。それで間に合うか?」
「はい。大丈夫です」
手は早い方だ。
ああ、でも、そうか。手に馴染んだ実家の道具は、もう使うわけには行かないのか。
「そうだな。家格に合ったものを使って貰うことになる。問題ないか?」
「しばらくは慣れないと思います」
「無理もない話だ。いずれ慣れれば良い」
ウィッテルド公が肩をすくめる。
「モルガン家がきみの衣類を結構な数仕立てているそうだ。当面はその恩恵に預かるが、当然、それ以外にも仕立てることになる。小物や道具類、化粧品も買い揃える必要があるな。きみから見れば、とんでもない出費に感じるかもしれないが、必要経費だ。飲み込んでおくれ」
それは、ちょっと、いや、かなり、怖い、んだけども。
「あとから請求したりしない。きみから見れば恐ろしい金額でも、ウィッテルド家としてはさしたる額でもない。浪費家になる必要はないが、お金を掛けられることには、早めに慣れておきなさい。王后の年間経費は、なかなかの大金だから」
なんて恐ろしいことを言うのだろうか。
「国の面子を保つためにも、国の経済を回し、雇用を生むためにも、王后には見栄え良くいてもらう必要がある。まあ、難しければ侍女や補佐官を頼ると良い。信頼の置ける者を付ける」
「ありがとうございます……」
「魔力遮断が不要な分、衣類の値段は下がる。国王陛下や太后陛下に比べれば、衣装代は低くなると思うが」
服代が、安くなったとしても。
「魔力がないから、身を守る道具や人手に、その分お金が掛かりませんか」
「そうだな。ほんとうに、頭の回る子だ」
ウィッテルド公は微笑んで頷き、ただし、と続ける。
「きみが、国王陛下と太后陛下に溺愛されていると広まれば、そこまで心配することもなくなると、私は予想しているよ。あの方々を敵に回すなどと言う蛮勇、まともな神経ならやろうとは思わないだろう」
「そう、ですか」
「ただまあ、警戒は必要だな。きみも、監禁されたくはないだろう」
かんきん。監禁?なぜ?
「陛下が誰かによってきみを傷付けられることを、許すとは思えない。もし、きみが刺客にでも襲われることがあれば、陛下はきみを安全な場所に閉じ込めて、一歩も出さなくさせる可能性がある」
そんなことはと否定しようとして、けれど、否定出来ないと思ってしまう。だって今日ですら王様は、わたしを離したがらなかったのだ。
「そうしないためにも、きみはお金に糸目を付けず、守られた方が良い」
「はい。ありがとう、ございます」
「……嫌気が、差すか?」
わたしが逃げ出しやしないか、王様を嫌いやしないかと、危惧しているのだろうか。けれど。
「お祖父様、わたしは、魔力なしです」
わたしが、予測していた未来予想図は。
「子爵家男爵家から、まともな縁談が来れば儲けもの。祖父母ほども歳の離れた相手の後添いや、何人も妻が死んだり逃げ出したりしているような相手の妻に、される可能性が十分ありました」
それも、魔力の低い相手が選ばれることになるだろうから、良い血筋の家ではないことがほぼ確定だ。良くて平民上がりの成金貴族。下手すれば、犯罪まがいに儲けた悪徳商人かもしれない。
「そんな縁談を覚悟していたので、監禁程度、大したこととは思いません」
「そうか」
ウィッテルド公が、眉を寄せる。
「それがきみの、魔力なしの、現実か」
わたしに、ウィッテルド公の魔力がどの程度かは、わからない。けれど、王様の前に普通に立てていたから、おそらく高い魔力を持つのだろう。
「レニ。これはきみが賢いから言うが、決して強制ではない。無理をすることはない」
「はい」
「きみは、魔力に恵まれたものと恵まれなかったものの、架け橋になれる存在だ」
魔力に恵まれたものと、恵まれなかったもの。持つ魔力の差が広ければ、対面することも難しいとなれば、分かり合うのは簡単なことではない。
つまり、魔力の強いものと弱いもの、どちらとも向き合って話せるのは、わたしだけ、と言うことで。
「はい」
「きみのように、魔力が少ないことで苦しむひとの一助に、きみはなれる。強い魔力を持たぬ者の、待遇改善を、きみが望むなら、しっかり学び、知識と力を持ちなさい」
それは、背負うには、あまりに重いものだった。だって、わたしの行動が、何千何万の、他人の人生を、左右してしまうんだ。
ああでも、けれど、王様は。
この国の、頂点に独りで立つひとは。
霜焼けで荒れた手を握り、知っていればと嘆いてくれたんだ。
知らなければ、動く必要があることにも気付かない。大それたことは出来なくても、知って、知らせることが出来れば。
王様は、動いてくれるひとだ。
「わたしに出来ることがあるならば」
「決して、楽な道ではないとしても?」
辛く苦しい道だとして、それがなんだと言うんだろう。
「わたしが辛い思いをしたと、王様は悲しんでくれたんです」
この国に、苦しむひとがいることは、王様の本意ではない。
「王様が、より良い治世を行うために必要ならば、わたしの苦労など、どうして惜しむことがありましょうか」
ウィッテルド公が、目を見開いてわたしを見つめる。
なにか、おかしなことを、言っただろうか。
「お祖父様?」
「あ、いや、すまない。そなたの言葉が、あまりに真っ直ぐで、老いぼれには少し眩しくてな。レニ。そのこころ、どうかなくさないでおくれ」
「ええと」
「素晴らしい王后の誕生に立ち会えそうで嬉しいことだ。しかもそれが、私の孫とはな。運の良いことだ」
なぜだかわからないけど、わたしの言葉が、琴線に触れたらしい。
当たり前に口に出したことにそう大袈裟な反応をされると、戸惑う。
「きみはそれで良い、と言うことだ」
「そう、ですか」
「ああ」
それからも、ウィッテルド公は穏やかに会話を続けてくれて、フォルクナー侯夫妻の屋敷に着く頃には、ずいぶんと打ち解けて会話が進むようになっていた。
このお陰で、のちのちわたしは、ウィッテルド公がその厳しさから財務部の鬼の異名で知られることを知ったときに、とても驚くことになる。
周囲のひとたちはむしろ、ウィッテルド公は優しいと語るわたしにこそ、度肝を抜かれていたらしいけど。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
続きも読んで頂けると嬉しいです




