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第9話 皆さんの名前が決まりました

 それから数時間後、話し合いを重ね、ゴブリンさんたちと芝狼さんたちの名前が決定した。

 顔合わせ――というか、名前合せも兼て、皆さん洞窟に集合である。


「ではまずゴブリンの長さんから皆さんに自己紹介を」


「うむ。我が名は鬼灯ホオズキだ。みな、これからは我のことをホオズキと呼ぶがいい」


 うおおおおと、ゴブリンから声が上がる。

 次にマッチョゴブリンの皆さんだ。


「ホオズキの息子です。私の名はナズナに決まりました。どうか私の事はナズナと呼んでください」


 ナズナさんはホオズキさんの息子さんだ。物腰穏やかな雰囲気だが、怒るとすごく怖い。


「ワシの名はアカザじゃ! 皆、そう呼べい!」


 アカザさんはホオズキさんの幼馴染らしい。なんでも昔はホオズキさんと群れのボスを争ったんだとか。

 ゴブリンさんのなかでは一番体格がいい方だ。


著莪シャガ! シャガ! シャガ! うっほうっほ♪」


 次に名乗ったのはいつもうっほうっほ言っていたマッチョゴブリンさんだ。

 マッチョゴブリンさんの中では一番小柄。

 名前を貰ってとても嬉しそうである。

 ……あと、うっほ以外の言葉を話しているところを始めて聞いた。


「ワタシは馬酔木アセビよ。みんなもそう呼んでねぇ♪」


 マッチョゴブリンさんの紅一点の彼女の名前はアセビさんに決まった。

 ゴブリンさんたちで名前を付けられたのはこの五人だ。

 他の者にはつけないのかと聞くと、名前を持つかどうかで群れでの階級を示すことにするらしい。

 まあ、その辺はゴブリンさんたちの判断にお任せする。


「次は我々だな。我は芝狼の長、紫陽花アジサイである。今後はそう呼ぶといい」


 芝狼さんのボスの名はアジサイに決まった。

 というのもタンポポさんが花の名前から取ったのを聞いて、自分もそうしたいとなったらしい。

 といっても、彼等も花の名前など知らないので、自分が知っている向こうの世界の花の名前で付けさせてもらった。


「ジブンは蒲公英タンポポだよー。みんな、よろしくねー!」


 タンポポさんが元気よく挨拶をする。

 これは後で知った事なのだが、実はタンポポさんはアジサイさんの娘で、この彼らの群れの中では二番目に偉い個体なんだとか。

 芝狼さんの中でも名前を付けられたのはほんの数体で、ゴブリンさんと同じく、名前で群れでの順位を示すことにしたらしい。

 各自、自己紹介も終わったし、次は自分の出番だ。


「えー、皆さん、自己紹介も終わった事ですし、これからそれぞれの名前の発音の摺合せを行います。まずホオズキさん、もう一度自分の名前だけを大きな声で叫んでください」


「ホオズキ!」


 次に自分は芝狼さんの方を見る。


「今の聞こえた音が、彼の名前になります。ホオズキ、です。きちんと聞き取れましたか?」


『――ホ・オ・ズ・キ、だな。大丈夫だ。独特の発音だったので覚えやすい』


「ありがとうございます。では次に――」


 ゴブリンさんたちの名前の発音を、芝狼さんへと伝える。

 終わったら、今度は芝狼さんらの名前の発音を、ゴブリンさんらへと伝える。

 きちんと覚えたら、次はそれぞれ発声練習だ。

 お互いの名前がきちんと言えているかどうかを、互いに確認し、自分がそれをすり合わせる。


「アジ、サい」


「ホ、おズ、キ」


「たぁんぽーっぽ」


「あ、あー……あせぇべぇ?」


「あ・せ・びよ。もう少し滑らかに、はっきりと区切るの」


「あせぇびぃ」


「そうそう、良い感じ♪ もう少しよ」


 そうしている内に、だんだんとぎこちないながらも、お互いの名前を言い合えるようになってきたゴブリンさんと芝狼さん。


「おお、良い感じですね。ホオズキさんはもう少し一息で話す感じに。アジサイさんは、発音が少し高いですね。『オ』と『ズ』をもっと低く言ってみてください」


「アジサイ」


「ホオズキ」


 お互いの名前をきちんと呼び合うと、ホオズキさんとアジサイさんは眼を見開く。

 名前だけとはいえ、今まで何を言っているか分からなかった相手が明確に自分達の言葉を発したことにとても驚いたのだろう。


「アジサイ! アジサイ!」


「ホオズキ! ホオズキ!」


 二人は何度もお互いの名前を呼び合う。

 見れは、他の皆さんも二組になって同じように互いの名前を言い合っていた。

 名前を呼び合うのは、互いの理解を深める一歩になるだろう。

 この日は、皆、それぞれの名前を言い合い、そしてちゃんと発音できるようになる頃には、誰もが笑い合っていた。


 本当に、話が通じるって素晴らしい。


 ……というか、ゴブリンと芝狼って明らかに体構造が違うけど、発声器官はどうなっているんだろうか? 今更ながらそんな疑問が湧くが、そこは異世界。きっと地球とは違う法則があったりするのだろう。


「ねえ、ソースケ」


「なんですか、アセビさん?」


「ッ……んふ、んふふふふ……」


 自分が名前を呼ぶと、アセビさんは凄く嬉しそうに体をくねらせる。


「あぁ……名前で呼ばれるってなんか不思議な感覚ね。なんだか新しい自分に生まれ変わったみたい気分」


 名はその人物を表す象徴のようなものだ。あるとないとでは、やはり気持ちの持ちようが違うのだろう。


「ありがとう、ソースケ。私に素敵な名前を付けてくれて」


「いえいえ、これからもどうぞよろしくお願いします」


「ソースケェ! ワシの名ももう一度呼んでくれぇ! アカザじゃぞ! ワシはアカザじゃ!」


「シャガ! シャガ! うっほ、うっほ!」


「……アナタ達、名前を付けられた程度ではしゃぎ過ぎですよ。まあ、覚えやすく、気品がある私の名前、ナズナこそ至高であるのは間違いないでしょうがね。ソースケ殿が名付けたのです。何度呼ぼうと構いませんよ? ねえ、ソースケ殿?」


「あ、あはは……」


 みんな、喜んでくれたようでなによりである。

 こうして、ゴブリン、芝狼さんら全員に名前が決まったのだった。



ネームドゴブリン一覧

 鬼灯(ホオズキ)    ゴブリンの長さん マッスル

 (ナズナ)     長の息子さん   マッスル(細め)

 (アカザ)     長さんの幼馴染  マッスル(大)

 著莪シャガ    うっほ      マッスル(小柄)

 馬酔木(アセビ)   女性       マッスル(セクシー)


 芝狼さんもアジサイさんとタンポポさん以外にも数匹ネームドが居ますが、たぶん出番はない


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― 新着の感想 ―
なるほど、 これは作者が筋トレをしようと思って思いついたストーリーなのかな? プロテインを買って…
タンポポぅ!
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