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魔物にプロテインをあげたらとんでもないことになった件  ~会話と筋肉で始める魔物の国づくり~  作者: よっしゃあっ!
第二章 現地人との交流とエルフの里

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第38話 エルフの里へ別れを告げて


 一連の騒動から十日ほどが経過し、ようやく神殿の資料を見せて貰えることになった。現在、エルフの里は世界樹(マッスール)さんの成長によって、地形が大幅に変わり、その再建が急ピッチで行われている。


 そんな中で最優先で行われたのが、神殿の復興だ。

 他の建物は無事だったのだが、世界樹の根元にあった神殿だけは、完全に世界樹の中に飲み込まれてしまった。

 神殿には稀人の資料だけでなく、エルフにとっても重要な資産が山ほどあるみたいで、クレマさんを初め偉い人たちが大急ぎで作業をしていた。


 え? 神殿が世界樹に飲み込まれたのにどうやってって?

 そこは勿論、世界樹さんにお願いして道を拓いてもらったのである。

 お願いしたのは、自分ではなくクレマさんだ。

 クレマさんは自分の予言の仕組みを知り、世界樹さんと自由に話が出来るようになったらしい。これは世界樹(マッスール)さんの力も上がったからこそ出来た芸当だ。

 十日掛けて、神殿内の安全確認が終わり、ようやく自分も中に入る許可が下りた。


「これが我が里にある稀人の資料じゃ」

「ありがとうございます」


 エルフの里にあった稀人の資料はイヌマキさんの残したものと同じ手書きの本が多かった。使われていた言語はやはり日本語。

 しかしこれがかなり古い。

 劣化が激しく、読めないものも多かった。

 数十年……いや、下手をしたら数百年以上も前の人物かもしれない。

 名前はスギモトさんという方で、性別は男性。

 職業は大工で、ガネットさんが言っていた『木組み』を伝えたのも彼のようだ。

 

「当時のことを知るエルフはもうおらんじゃろうな」


 エルフの寿命は二百年ほどらしい。

 ご長寿のエルフだと三百年近く生きる方もいるのだとか。

 凄い長生きだなエルフ。

 念の為に、今の最長齢のエルフ(ウメさん289歳)にも確認して貰ったが、稀人のことは知らなかった。


 つまりスギモトさんがこの世界に居たのは最低でも三百年以上前ということだ。

 日誌にはエルフの里で幸せに生涯を全うしたと記されていた。

 残念ながら帰還の手がかりになりそうな情報は見当たらなかった。


「そういえば、エルフは魔法や魔道具(マジック・アイテム)にも精通していらっしゃるのですよね?」

「うむ、そうじゃな」

「であれば、この指輪について何か調べることは出来ませんか?」


 この世界に来るきっかけとなった指輪をクレマさんに見せる。

 勿論、自分がこの世界に来た経緯も説明した。


「ふむ……確かにこれは魔道具(マジック・アイテム)じゃな。しかもかなり特殊な代物じゃ。わらわもそれなりに魔道具には造詣が深い方じゃが、これはまるで分らん。形状や魔力の残滓から見るにおそらくはドワーフ製じゃとは思うが……」

「ドワーフ製ですか……」


 イヌマキさんの手がかりにあった三つの種族のうちの一つだ。

 エルフ、吸血鬼、ドワーフ。それぞれの里に稀人の資料があると書かれていた。


「もっと詳しく調べるのであれば、ドワーフに聞くしかあるまい。アテはあるか?」

「いえ、まったく」

「では、わらわの方でドワーフの頭領に紹介状を書こう。頭は固い奴じゃが、これだけの魔道具なら絶対に興味を持つじゃろう」

「いいんですか?」

「当たり前じゃろう。ソースケ殿は我ら恩人じゃ。いくらでも協力しよう」

「ありがとうございます」


 その後、ホオズキさんらと共に復旧作業を手伝い、ある程度の目途が立ったところで、自分達はエルフの里を後にすることにした。

 クレマさんからはずっとこの里に居てもいいと言われたが、あいにくと今はホオズキさんたちの住処が自分の帰る場所だ。


「我々もこの里に来れて良かった」

「良い取引相手が見つかったわぁ」


 ホオズキさんたちも満足な表情を浮かべていた。

 なんでも、エルフの里と定期的な取引が行われることになったのだとか。

 ホオズキさんたちの薬草は、エルフにとっても貴重で使い勝手がいいらしい。ホオズキさんたちもエルフの里で採れる食料――特にリンバは気に入ったらしく喜んで取引に応じていた。


 あと捕えたフードの男は現在も拘束中。

 ホオズキさんのおかげで、心がすっかり折られたせいか素直に聞き取りに応じているらしい。組織の情報も聞き出しているらしく、何か分かったら自分達にも知らせてくれるそうだ。あ、ちなみにフードの男の名前はガリンチョというらしい。


「ソースケ殿、最後にこれを」

「これは……?」


 クレマさんが何かを手渡してくる。

 これは種……だろうか? 大きさはピンポン玉程で、形状はひまわりの種に似ている。


「世界樹の種子じゃ。本来であれば、里の外に持ち出すなどあってはならない事なのじゃが、ほかならぬ世界樹様よりお主に渡してほしいと頼まれた」

「まっ……世界樹さんから? 良いんですか? これってかなり希少なものなのでは?」

「最後に世界樹の種子が採れたのは千年以上も前じゃな」


 とんでもなく貴重なものだった。


「本来であれば、丁重に保管し、然るべき場所を選定し植えるのじゃが、他ならぬ世界樹様の頼みじゃ。出来ればよく肥えた土に植えて欲しい。きっとお主の力となってくれるじゃろう」

「……分かりました。謹んで頂戴いたします」


 万が一、枯らしたり、芽が出なかったら怖いな……。

 めっちゃエルフさんから恨まれそう。

 大事に、慎重に育てよう。あ、スライムさんたちなら上手くやってくれるかもしれない。薬草とか米とか色々育ててくれてるし。

 世界樹の種子を大事に懐にしまう。

 すると風で頭上に見える世界樹に枝が揺れる。

 それがまるで自分には手を振っているように見えた。


「では皆さん、お世話になりました。また会いましょう」


「うむ、達者でな」

「また来いよー」「そっちの鬼人の人達もねー」「元気でなー」


 見送りには大勢のエルフが居た。

 あのリンバをくれたご夫婦の姿もあった。

 体調もすっかり良くなり、見違えるような元気な笑みを浮かべていた。

 大勢のエルフさんたちに見送られ、自分達はエルフの里を後にするのだった。



これにて第二章は終わりです

第三章も引き続きよろしくお願いします

ストックが無くなったので、しばらく書き溜めに入ります


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― 新着の感想 ―
帰るかはどうでもいいとしてもプロテイン補給しないと主人公のアイデンティティがなくなっちゃう
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