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魔物にプロテインをあげたらとんでもないことになった件  ~会話と筋肉で始める魔物の国づくり~  作者: よっしゃあっ!
第二章 現地人との交流とエルフの里

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第16話 気付けば相談役みたいな立ち位置に居る気がする


 あれから十日ほどが経過した。

 今日も今日とて、自分はホオズキさんらと共に、森での生活を謳歌している。


「……なるほど、安心して巣が作れる場所が欲しい、と」


『ウン。僕達ノ外敵ガ多イシ、雨季ニナレバ、イツモ巣ガ流サレチャウ』


 自分の目の前で滞空飛行しながら話しているのは、蜂の魔物さんだ。

 見た目としては日本のミツバチにとても近いが、大きさは指二本くらいの大きさがある。

 このサイズの蜂ってだけですごく怖い。

 すごく怖いのだが、実際に話してみると、とても温厚な虫さんであった。


「ソースケ、魔蜜蜂はなんと言っている?」


「安全な巣が作れる場所が欲しいそうです。ホオズキさんらの洞窟は細かい穴がいくつも空いてますし、そこを提供してはどうでしょうか?」


「構わない。だが、居場所を提供するのだ。見返りは貰うぞ」


『採ッタ蜜、分ケル』


「蜂蜜を分けてくれるそうです」


 ホオズキさんの後ろに居たアセビさんはそれを聞いて飛び跳ねるように喜んだ。


「やったー♪ 魔蜜蜂の蜂蜜がいつでも食べれるなんて夢みたい!」


「うむ。コイツらの作る蜂蜜は絶品だからな。それがいつでも食えるのなら安いモノだ」


「では、そのように伝えますね」


 蜂さんに伝えると、向こうも喜んでくれたようで、近いうちにこちらの洞窟へ移住するとのことだ。

 ちなみにプロテインは与えていない。

 だって五袋あったプロテインもあと二袋だけ。

 そうポンポン上げていればあっという間に無くなってしまう。

 この森での自分の存在価値は、この会話できる力とプロテインだけなのだ。

 大切に使っていきたい。


「本当に凄いな、ソースケは。どんな魔物とでも会話が出来るとは」


「とはいえ、まさか虫とまで会話できるとは思いませんでしたがね」


 先ほどのミツバチ――こちらでは魔蜜蜂というらしいが、「どこかに良い巣が作れる場所無いかなー」と呟きながら飛んでいたのが聞こえたので、試しに話しかけてみたらあっという間に話がまとまってしまったのである。


「昨日も魔呪狐と風死狸の問題も解決してたし、ソースケならこの森の魔物たちが抱える問題、全部解決できるんじゃない?」


「……流石にそれは無理と思いますよ?」


 だってあくまで自分に出来るのは『会話』であって『解決』ではない。

 話を聞いても、解決できない問題だっていくらでもあるのだ。

 先ほどの蜂さんのように上手く共存できるのであれば、それに越したことはないが、種族の関係上、どうしたってそれが出来ない問題だって存在する。


 自分に出来るのは、せいぜい話を聞いて両者の妥協点を考えるくらいだ。

 ただこの森で、自分の噂が広まっているのか分からないが、最近妙に自分に相談に来る魔物が増えた。

 ……なんかこの森での相談役のような立場になっている様な気がする。


『ソースケ! ソースケ!』


 そんな風に考えていると、茂みから声が聞こえた。

 そちらを向けば、昨日話をした狐の親子が居た。


『コレ、アゲル。昨日ノオ礼』

『使ッテ、使ッテ』


「おお、これはこれはありがとうございます」


 狐さんから木の実とビー玉ほどの綺麗な石を受け取る。見返りが欲しくてやっているわけではないが、こうして感謝の言葉を貰うと、やっぱり心が温かくなるのを感じる。

 ついでにちょっと狐さんの頭としっぽを撫でさせてもらった。

 ……とても気持ち良かった。

 狐さん達が去るのを待ってから、アセビさんが声を掛けてくる。


「ソースケ、それ魔石じゃない。ラッキーね」


「魔石とはなんでしょうか?」


「魔力が籠った石よ。使えば、魔法が強力になるわ」


「なるほど。それでは、これはアセビさんに差し上げますね」


「え?」


 ポンと、アセビさんに石を渡すと、彼女は眼を丸くする。


「自分は魔法が使えないので。アセビさんのように魔法が使える方が持っていた方が有意義ですから」


 護身用に覚えておいた方がいいだろうと、ホオズキさんに提案され、魔法を練習しているのだが、成果は芳しくない。

 おそらく自分に魔法の才能はないのだろう。

 異世界人なのが関係してるのかもしれないけど。


「……ありがとう。大切にするわね」


 アセビさんはまるで宝物でも手に入れたかのように、魔石を両手で握りしめた。

 喜んでくれるなら、自分としても嬉しい。


「……それにしてもあれからもう十日も経つのですね」


 自分のつい何となく呟いたそれに、ホオズキさんとアセビさんは渋い顔になった。


「すまん、ソースケ。我々のせいで」


「そ、そんなことはありませんよ。ホオズキさんたちのせいではありません」


 いったい何故、彼らが急に自分を怖がって、魔法を放ったのかは分からない。

 しかし過ぎてしまった事を悔やんでも仕方ない。

 あの冒険者たちの対応からして、自分はおそらくもう彼らの居る町には、入る事は出来ないだろう。


 この世界の人間と接触することが、帰還への手がかりになると思っていたので、確かに悲しいといえば悲しい。

 だが、あくまで手段が一つ減っただけだ。

 それならそれで、自分でコツコツ情報を集めればいいだけのことだ。

 決して、ホオズキさんらのせいじゃない。自分が迂闊だっただけだ。


「なんとか彼らともちゃんと話し合いたかったですね……」


「そうだな」


 そんな風にホオズキさんと話をしていると、遠くからタンポポさんが走ってこちらに向かってくるのが見えた。


「ソースケ! 大変! 大変だよ!」


「ど、どうしたんですか、そんなに慌てて?」


「シャガが人間捕まえたって!」


「そうですか。それはすご――ってえええええええええええええええええええ!?」


 人間を捕まえた? 今、人間を捕まえたって言った?

 シャガさんってあのいつも「うっほ、うっほ」しか言わないマッチョゴブリンさんだよな?

 いったい何があったというのだろうか?


「ともかく乗って! 案内するから!」


「わ、分かりました!」


「我も一緒に行こう」


「私も行くわ!」


 ともかく詳しい事情を知らない限りはどうにもならない。

 自分達は急いでシャガさんの元へと向かうのだった。


 

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