吸血鬼の城
城の設備に浴場を追加しました。
【オート・コンパニオン】によってファスト・トラベルポイントに出現した俺は『拠点築城』する為の場所を探すべく『浮遊移動』し始めた。
「ブゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!」
「ゴァァァァッッッ!!!」
道中、2種の魔物・・・大量のオークとトロル達が襲撃してきた。
どうやら種族間の縄張り争いに、不死者である強者の俺が乱入し、両者は本能的に優先して俺を片付けようとしていた。
「ご機嫌よう、そして、さようなら」
抜き放った『吸血剣メアリー』を目にも止まらぬ速さで振るう。
首筋を浅く斬っただけだが、生命力の強い魔物達は次々と倒れていく。
剣に刻まれた禍々しいルーンが怪しく紫色に光り、嘆きの悲鳴を上げ始めた。
「プゴォォオオ!?」
「ゴガガガガガ!!??」
悲鳴の効果により、恐慌状態に陥った魔物達は混乱による同士討ちも始まり、リカルドが滑るように間を縫って軽やかに移動しながら切り刻んでゆく。
5分もしないうちに、その場は静かになった。
▽レベルが上がりました。スキル『ゴーレム生成』を取得しました。▽
新たな能力は『拠点築城』に必須な防衛機能だ。
「魔物はしっかりと血抜きをして、ギルドに卸してやろう。恐怖に震えた家畜の肉は旨みが増すと聞く。おっと、吸い過ぎると灰になるから抑えろよ?このじゃじゃ馬め。」
魔剣を宥めて鞘に収めると、『オート・コレクト』で魔物を回収し周囲を見回し再び探索する。
少し離れた場所に天然の要害といった形状の、岩盤が剥き出しの台地があり、その側には川が流れ湖になっていた。
湖の反対側は滝になっており、清浄な空気のお陰か精霊の輝きも遠目ながら確認出来た。
この豊かな土地を狙って魔物達が集結していたのだろう。
いうなれば人間も狙ってはいるが、ここは強力な魔物の縄張り争いが激しく、土地の主が定まらなかったのだ。
リカルドが来るまでは。
「『マスター』は無事に街を出て採取を終わらせるはずだ。俺が明日、街に戻るまでに、周囲を魔物達が跋扈するこの場所で拠点を作れば、下手な人間も入ってこない、快適な別荘になるだろう。」
『拠点築城』を実施する前に、昼食を取りながらウィンドウを開いて城のレイアウトを決める。
不死者リカルドのデフォルトの城は吸血鬼らしく拷問部屋や家畜(人間)牢、屠殺場(人間用)やら、人骨・人肉・血液を使ったオブジェがそこかしこで装飾されている為、全て排除する。
吸血鬼の王専用の玉座、大広間、清潔な利便性の良いキッチン、柔らかいソファ、煌びやかな調度品、暖かい暖炉、長テーブルで魔法の燭台の並ぶダイニング、居間、客間、魔道具を利用したシャワー付きで大理石で彫刻された竜の口から波々とお湯が注がれる大浴場、来客用の寝室を30部屋、書斎、化粧部屋、ドレスルーム、図書室、音楽・娯楽室、魔法研究室、錬金室、来客用の幾つかの居室、侍従部屋と浴場、貯蔵室、武器庫、厩、バルコニー、温室、地下牢、礼拝堂、隠し通路に、隠し部屋。
こだわりの広々とした主寝室は天蓋付きキングサイズのベッドを2つだ。
多分、何人かは分からないけど、女性達と共に夜を過ごすだろう。
キングサイズ2つで足りれば良いが。
どうせ城に住むならばと詰め込んだが、果たして全てを使う時が来るのか?
後は逐次修正していけば良いだろう。
後はこの台地に対してスキルを使用するだけだ。
色々とウィンドウを弄っていたら既に陽が傾いていた。
明日にはマルタの街が騒がしくなるのが目に浮かぶようだった。
「『拠点築城』!!!」
ズイッと地面から城が一瞬で生えた。
立派な蝙蝠を模った鉄の門が開き、チョビ髭のヴァンパイア執事が俺を出迎えた。
「お帰りなさいませ、リカルド様。」
「出迎えご苦労。名前は?」
「御身の好きな呼び方で、、、」
そういえば彼は『拠点築城』の際に住むNPC、【コモン・アバター】だ。
拠点に居る際は色々とお世話をしてくれるキャラクターだ。
普通の執事に見えて人間の騎士10人くらいは武器無しでも余裕で叩きのめしてしまうくらいには強い。
「ならば、クロードと呼ぼう。よろしく頼んだ。」
「有難き幸せ。」
こうして俺は『クラファリオン』のチュートリアルの序盤にようやく辿り着いたのだ。