ジュール、マルタの街に繰り出す②
ファスト・トラベルしたのに賊が尾行した事になってましたので、整合性を取りました。
マルタ近郊の森で僕は大量の薬草を採取している。
「あの辺りだな。」
対象に近づくと目的の薬草が引き寄せられてアイテムボックスに吸い込まれていく。
【アバター】の基本スキル、『オートコレクト』だ。
僕はウィンドウで対象を探した時点で薬草の名称がその場で浮かぶので、必要な薬草に向けて少々歩いただけで採取は完了してしまった。
▽香の製造に必要な、『インセンス・グラス』、『テンプトゼンマイ』、『ハオマ草』は規定数を超えました。▽
「後は帰るだけ、、、なんだが、大体帰り際に出てくるんだよな。。。おい!コソコソ街から尾けてきたつもりなんだろうが、バレバレだぞ!出て来い!」
ガサゴソと藪の中から出て来たのは冒険者くずれの野盗、数人の様だ。
これはファスト・トラベル専用のランダムイベントで、一定の確率で発生する。
それは現実と化した『クラファリオン』でも同様だ。
彼らは主人公になんらかの逆恨みをし、襲撃する為に機を伺っていたのだ。
「畜生!?どうしてバレた!?」
「カンケーねぇぜ!ここで殺っちまうんだからよ!」
「リカルド!テメェは女侍らせて、金もあって、しかもデカくて強え。けどな、数には勝てねぇ!」
「お、おとなしく死ねやぁ!」
「カ、カレンちゃんは俺が狙ってたんだ、、それなのに」
「まぁいい!金も女も頂きだぜ!」
僕は可笑しくてさっきからニヤニヤ笑ってしまっていた。
こいつらリカルドと間違えてジュールを始末しようとしたらしい。
「君ら面白いね。今更誤解を解かせるの、めんどくさいし、時間も無いから早めに終わらせるよ。」
僕は腰から脇差し『氷の貴婦人』を抜いて一振りすると、野盗達の脚が氷漬けになった。
「なっ!?」「動けねぇ!」
更に脇差し『風の舞』を振ると人数分の風の刃が飛び出して彼らの首を全て刎ねた。
「兄の不始末は弟の不始末だからね。さて、遠慮なく持ち物は頂くよ。」
罪悪感は感じない。
ウィンドウでは彼らの【カルマ】は真っ黒だった。
生捕りも可能だが、めんどくさすぎた。
「あぁ、『オート・コレクト』だと死体ごと全部取り上げてしまえるのか。ちゃんと選別して、金と武器と所持品は全部貰っていこう。」
死体はまとめて放置した。
どうせ魔物が喰らうだろうし。
森を出て急ぎマルタに向かう。
不死者の脚力でなんとか門まで到着した。
『夕霧亭』に入ると、既にリリーが待っている様だ。
扉を開けると香の匂いがした。
「お帰りなさい、ジュール。待ってたわ。」
そこには一糸纏わぬ姿でリリーがベッドに座っていた。
「ただいま、リリー。香、早速使ってくれたんだね?うれしいよ。」
本当は色々とやりたい事があったけど、僕は服を脱ぎ散らかして彼女を腕に抱き、ベッドに倒れ込んだ。