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ゴラス・ドゥアンの決闘

帝都ゴラス・ドゥアンでは角笛が鳴り響き、カルドスロア領主の入城を迎える準備をしていた。


これに従って全ての諸侯に召集が掛かっていたが、職務怠慢な北部諸侯が今から全員集まるかと言われたらそうもいかなかった。


南部の領主が功を上げたというだけでも面白くなく、それが王国将軍の討伐というだけで煮湯を飲まされている。


要は北部のプライドが許さない。


人間、見たくないものは見ようとしないのだ。


今回も貴族の揚げ足取りを見る茶会だろうと観光気分で来る貴族達もいた。


伝説の将軍が本当に討ち取られてしまったのかと、確かめに来る者も。


〜〜〜〜〜


「もうすぐ帝都だね」


メア・スターハートはワクワクすると言わんばかりに黒馬(マーシー)の上ではしゃいでいる。


もちろん、俺も馬から降りてはいないので彼女を挟んで手綱を握っている状況だ。


「おい、あんまり揺らすな」

「へいへい」


「エヴァン、手筈は良いな?別働隊の到着は?」

「本日の夕方には北部騎士に扮して脱出路を塞ぎます。邪魔立てする者は排除します。」

「うむ。捕え次第引っ立てよ。」


将軍は腹を括ってからが早かった。


元々動きたがりな上に、捕虜としての鬱憤も溜まっていたのか、叩き上げの実力とカリスマ性であっという間にロドスギウス騎士団は『ポール・ウェイン将軍騎士団』になってしまった。


ゴラス・ドゥアンに入ると北部出身の衛兵が俺とメアを騎士団から引き離そうとしたが、エヴァンが気を利かせて騎士団が雇った護衛という事になった。


「冒険者風情が調子に乗るなよ」

「フン!あっかんべ〜だ!」


メアが衛兵をおちょくっていたので嗜めた。


「よせ、メア。どうせこの後偉そうにもしていられまい。此処は彼らの所領じゃ無くなるんだ。」

「それもそうだね。でも北部の人達はどうしてあんなに偉そうなんだろう?」

「元々南部は鉱夫や農奴が多い。北部は帝都が近く、鉱石や宝石の商人が増え、人口は少ないが教育を受けた者が集まった。その差だろう。」

「あ、前に家で習った事あるかも。『身分と差別』ってやつ。」


本当は他にも色々と差別の理由はあるのだろうが、欲深い何者かが関わっているのは間違いない。


騎士の隊列はロドスギウスの騎士に扮し、兜を被りマントで王国の鎧を隠した将軍と領主、それを護衛する俺たちが先頭だ。


やがて一目見ようと集まった群衆を掻き分けて、帝城の巨大な門前に出ると、特大の晒し台が用意されていた。


ここに将軍の首を飾る算段なのだろう。


北部騎士に守られて、皇帝と帝国の宰相が現れた。


「カルドスロア領主よ、将軍の討伐、大儀であった。追って褒美を取らせる。まずは見聞を。」


「は!」


宰相は木箱を開けると中にはおが屑が入っているだけだった。


「これは何の冗談ですかな?領主殿?」


「はっはっは!これは失敬!首なら目の前にちゃ〜んとありますぞ?少々活きが良く、なんなら繋がってますがね。」


「なんだと!?ま、まさか!?」


騎士がマントを脱ぐと、王国の意匠が凝らされた鎧が顕になり、次いで兜を外すと群衆がどよめいた。


「お初にお目に掛かる。私はゼーテスブラン王国将軍、ポール・ウェイン。お見知り置き下され。」


狼狽する皇帝と宰相。


「ひ、ひいっ!!な!?なぜだ!?何故生きている!?領主よ!謀ったな!?」


「さてね。伝令が早とちりしたんでしょう。将軍もわざわざ帝都まで空の木箱を運ぶのを手伝って下さいました。」


全く悪びれる様子もないカルドスロアは白々しくそう言い放った。


「ぐっ!これは謀叛だ!謀叛だ!騎士よ!王国の将軍を討ち取るのだ!!」


「うおお!」「名を挙げる時だぁ!」「その命頂いたッ!」


北部騎士たちが襲い掛かってくるが、将軍は剣を抜かずに格闘だけであっさりと制圧した。


ドゴッ!「ぐぇ?!」

バギッ!「ぎゃ?!」

ゴキッ!「がふっ!?」


騎士を放り投げた将軍はガッカリした様子で皇帝に言った。


「ぬるいな。剣を抜く必要性さえ無ければ、我が研鑽の末に得た『スキル』を使うまでもない。これがあなた方の言う帝国騎士なのか?エヴァン殿ら南部の者達はもっと手強かったが。」


「「ぎょひぇー!!??」」


奇声を上げて腰を抜かし、2人は這々の態で城へ逃げ出した。


エヴァン達南部騎士は鬨の声を挙げた。


「帝国の為に!」

「「「帝国の為に!!!」」」


北部騎士達が怒りの声を上げた。


「それは俺たちの台詞だ!」

「南部の成り上がりどもめ!」


エヴァンの剣技が未熟な騎士に襲いかかる。


「黙れ軟弱者が!【百花閃剣(スパダ・フルーレ)】!!!」


ズババババッ!!!

ドシャッ!


「騎士らしく死に、血の海に沈むが良い。」


戦闘が始まった。


将軍を中心に反乱が始まったと知るや否や、貴族達は蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。


北部騎士ですら逃げ出す者が続出した。


「城内に進めー!!!」

「「「うおー!!」」」


「【アース・ウォール】【ウォーター・ウィップ】【ファイア・ランス】【エア・スラスト】」

「【雷刃(サンダー・エッジ)】!!!」


「「「ぐわぁあああああ!!??」」」


俺はメアと共に将軍の露払いだ。


といってもチート級の化け物と勇者を相手に立ってられる奴などそうはいない。


「魔導士がいるぞ!!」「こっちも魔導士を出せ!!」


ローブを纏った瓶底メガネの魔法士団が現れ、本をペラペラめくって詠唱し始めた。


「「「神よ!!我々に加護を与え給え!火の精霊を司るゴニョゴニョ」」」


「あんたたち誰!?暇人か?!【風弾(エア・バレット)】!!!」


「「「ほげー!?」」」


メアがイライラしながら放った魔法がローブ集団を纏めて城外に吹き飛ばした。


「何だったの?アレ?」


メアが随分威力を落として魔法を放ったのが気になった。


「さぁな。殺さなかったのか?」


「え?なんか本読み上げてたし、争いを収めるために祈り始める可哀想な感じの人達なのかと、、、」


メアから聖職者扱いされるとは、哀れ魔法師団。


「魔法士団がやられた!」

「てかアイツら近接戦闘の経験は!?」

「無い!」


闘いは膠着状態に陥ったが、帝城から強い魔力の奔流が溢れた。


「【牙穿突(キダツ)】!!!」

「「「ごわぁああ!!??」」」


強力な戦闘スキルによって南部騎士数名が重傷を負って、城門まで階段を転がり落ちてきた。


コツコツと階段を降りるその人物について、常日頃から帝城に居る者も実力を侮っていた。


ゴクッと騎士達が息を呑む音が聞こえた。


戦乙女(ヴァルキューレ)・・・」

「皇帝御息女お付きの護衛騎士が・・・

まさか・・・」

「あんなに強かったのか・・・」


将軍は徐に尋ねる。


貴女(・・)が帝国最強の騎士であるか??で、あれば一騎討ちを申し込む。私は王国将軍ポール・ウェイン!!貴女も名乗るが良かろう!」


ほっそりとした体型に似つかわしくない厳つい鎧を身に纏い、刺突に特化した鋭いエストックを携え、それを将軍に向ける。


「フッ・・・わたしが帝国最強の騎士かどうかは分からないが、貴台に見合う勇敢な北部騎士はわたし以外にいない様だ。」


緑色の髪に桃色の瞳。


それだけで彼女が異国の生まれだと容易に理解できる証だった。


帝国においてその立場の弱さは想像に難くないが、彼女はそれらを全て跳ね除け、堂々とそこに立っていた。


「今この時、この場所で、貴方様と刃を交える事をずっと夢見てきた。女子故に叶わないと諦めていたが、これほどの好機に恵まれるとは!こちらからも願おう!!わたしはロドスギウス皇女付き近衛騎士、マルグリッタ・アキュモス!!わたしの憧れ、王国将軍ポール・ウェイン殿!貴台に一騎討ちを申し込む!!」


挿絵(By みてみん)


時と場合が違えば愛の告白に聞こえなくもない宣言だが、これは間違いなく命のやりとりだ。


動きを止めた騎士達の前に、血に汚れたエヴァンが現れ、双方に決闘の口上を述べさせる。


「汝らは何が為に命を懸ける」


「両国の未来が為に」

「誇りと主君が為に」


「相わかった。汝らに神の加護あれ。」


「「参る!!!」」


将軍もマルグリッタも初めから全力だ。


ガギィィィン!!!


(盾で刃が欠けないだと!?【身体強化】スキルの派生スキル【武装強化】は間違いなく持っているな!)


彼女のエストックを使った戦闘技能に将軍は冷や汗をかいた。


一方マルグリッタも自身の刺突が全く効かない事に動揺していた。


(やはり王国最強は伊達じゃない!!わたしの攻撃なんて些事に等しい!!それでも!!!)


「うぉぉぉ!!【盾撃(シールド・バッシュ)】!!!」

「はあああ!!!【 飢牙穿突(キキ・ダツ)】!!!」


2人の火花散る決闘は続いた。


(この若さで強力なスキルを操るとは!!女人で無ければとんでもない傑物になっていたのは間違いない!)


「【金剛(ダイヤモンド・)(スラッシュ)】!!!」

「【流龍(ルロ・)水刃(ミダ)】!!!」


将軍の斬撃をマルグリットの(しな)やかかつ強靭な受け流し、そこからの舞う様な後の先を取る鋭い突きが襲う。


群衆は逃げるのも忘れて闘いに魅入っていたが、やがて体力が尽き、マルグリッタが堪え切れなかったところを将軍の盾がとらえた。


「【硬盾ストロング・シールド・(バッシュ)】!!!」

「ッ!?」


(間に合わないッ!!)


バキィィィィン!!!


「くあああああっっっ!!!??」


マルグリッタのエストックは無惨にも砕け散り、彼女は吹き飛ばされて石畳の上を転がった。


「うっ、ぐっ、、、!」

「降参するのだ、アキュモス卿。もはやこれまでだ。」


将軍は剣を向けるが傷付いたマルグリッタは引かなかった。


「くっ!殺せ!南部の騎士が皇女様を害するならば、わたしもそれに殉ずるまで!さぁ、やるが良い!!」


光る刃に涙目になる女騎士マルグリッタ。


「ふむ。侮られては困るな。我々は賊ではない故、害するなどと言うその発想が分からん。」


俺とメアは小声で目の前で起こるドラマチックな展開に対し、互いに感想を述べていた。


「おい、『くっころ』って知ってるか?アレを言う女騎士は絶対に死なないんだ。」

「あたしの家でもそれ系の小説や伝記があるんだけど、何故か女騎士はそれを言うんだ。あたしも上手く言える練習してみようかな?」

「まだ早い。後5年は早い。」

「何でよ!?」

「あれは狙って言うんじゃなくて内面から滲み出る女騎士の誇りが言わせるんだ。メアには無理だな。」

「何よもう!!バカにしないで!!」


好き勝手言うリカルド()とメアを他所に、城からまた別の貴族の女性が現れた。


「マルグリッタ!やめて!もう良いのです!!」


「皇女様!お逃げ下さい!ええい!例え将軍殿とはいえ、皇女様に手は出させ」

「お父様は私めを置いて宰相とともにお逃げになりました。他国で遊び惚けている兄上達も今は居らず、私達は南部諸侯に敗北したのです。皇帝一族はこれを以って降伏を宣言します。」


「皇女様・・・」


悔しそうに項垂れるマルグリット。


程なくして別働隊が現れ、逃亡を図ろうとした皇帝と宰相が取り押さえられ、連れて来られていた。


「ヒュッ!?た、頼む!!殺さないでくれぇ!!」


脂汗を大量にかき、泥だらけになった宰相の前にカルドスロアの領主が現れた。


彼も奮戦したのだろう。


顔に大きな傷を受けながらも意気軒昂のままだった。


「これまで散々我が領と領民をコケにしてくれたな!死ねぇい!!」

「ごはっ!?」


胸を一突きされ、事切れた宰相は領主に首を落とされ、騎士達が晒し台まで運び、エヴァンが声高らかに勝利宣言した。


「帝国南部は長らくこの悪徳を極めし宰相に虐げられ、支配されていた!だがたった今、正義に燃える王国将軍ポール・ウェイン殿と我ら南部諸侯により逆賊は退けられた!帝国は新たな夜明けを迎えるだろう!我々の勝利だ!!!帝国万歳!将軍殿万歳!南部諸侯万歳!!」


「「「うぉー!!!」」」


南部の騎士達は歓声を挙げた。


奇しくも宰相は自分が用意した晒し台に、自身の首が乗る事になろうとは、微塵も思わなかっただろうに。


決闘に処刑、勝利宣言を見届けたリカルド()は煙草に火を付けるとメアを見遣る。


少し震えている様だ。


「大丈夫か?」


「これで良かったんだよね?これで貧しい人達は救われるのかな?」


「どうだかな。。。」


俺は煙を吐き出した。


「だがな、為政者はその立場に胡座をかいていると必ず取り返しの付かない失敗をするものだ。他人の人生に責任を持つならば、視野は広く保たないとな。でなければあの宰相の様になる。」


「・・・・分かった。」


こうしてチュートリアル中盤のクエストは終わった。


俺はやり残しが無いように色々と話を詰めて、将軍を連れ帰るとしよう。

AI生成画像等は使っていますが、小説に関してAIは使用していません。


一応文脈に悩んで煮詰まった時などには参考にしますが、それでもやはり自分が伝えたい表現になるかは違う気がします。


どんな技術も使い手の主体性や責任感、それと目標次第で善し悪しが変わると思います。


肉体労働も機械化で楽になりましたし、一度便利な物を手にすると当たり前になり、それ無しでは生きていけなくなります。


今自分達が触れているスマホやPCがまさにそうなのですから。


昔使っていたWindows95やワープロに、フロッピーDISC、ガラケーが懐かしいです。


AIなんて映画の中で語られる遠い未来の話だと、当時の私は思っていました。

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