カルドスロア領主の決起
俺たちは目の前で偉そうに座る、でっぷりと太った貴族の取り巻き、所為ごろつき達に囲まれ、剣を突き付けられていた。
「早速だが、王国将軍。貴殿には死んで頂く。」
「何を仰っているか分かりませんな、領主殿。捕虜の身分は保証されているのですぞ。それに帝国騎士団に剣を向けるという事がどういう事なのか、分かっておいででしょうな?」
エヴァンは額に青筋を立て、周囲の魔力が膨張していくのが肌で感じ取れた。
「分かっているさ。まぁ、話は最後まで聞け。」
〜〜〜〜〜〜
シーアフランメから1週間かけてカルドスロア領の領主が居るミスラムに到り着いた。
ここに至るまで、騎士達が同伴しているのにも関わらず何人かの暗殺者が将軍を亡き者にしようと襲撃してきた。
俺は初めから襲撃を予期していた為、我ながらパフォーマンスじみていたが、風魔法でバラバラにしたり、火魔法でド派手に丸焼きにしたりした。
それからは完全に帝国騎士団に雇われた凄腕の冒険者と勘違いされていたが。
「違う依頼で動いているんだが、評価が上がっているな。」
「リカルドって滅茶苦茶強いんだね!最初は剣だけかと思ってたけど、魔法剣士なんだ!『アプテズマ』にも何人かそういう人はいるって聞いてたけど。。。」
「何を言ってるんだ?お前の剣技も魔法だぞ?」
「え?あたしのは別にそんな大層なものじゃないよ。雷魔法だってちょっとピリっとして猪とかびっくりするくらいだし、全然〜」
「はぁ。お前、毛玉族を切り刻んだ事、もう忘れたのか?しかも昨日暗殺者を素手でぶっ飛ばしてたんだ。『異界』を通ると強大な力を付与される事がある。」
メアは半分寝惚けてパニクった状態で敵をパンチで伸した為、あまり覚えていないようだ。
「あれ?もしかして、あたしってば強い?でへへ!」
「でへへ、じゃない。」
「確かに、昨日のあれは良い正拳突きであったな。」
ミスラムの中心部には領主の城があり、俺達はそこに案内された。
名目上、将軍はここに投獄され、通常であれば捕虜交換の時を待たねばならないのだが、、、
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「帝都への移送?」
「そうだ。貴殿を捕虜交換せずに南部諸侯の反乱を煽った咎で帝城前で大々的に宣伝し、集会を開き、公開処刑にするつもりなのだ。王国の士気を削ぎ、南部を服従させる口実に。だが・・・」
「だが??」
「そんな事はさせんよ。俺も我慢の限界なんでな。雌伏の時は終わりだ。皇帝が恐れている南部の叛逆、それを現実のものとしてやるのさ。北部のガメつい馬鹿どもに取り入る事も金輪際無い。醜い豚を演じるこのビールっ腹を作る為のやけ食いももうやめだ。」
椅子から腰を上げると領主は将軍に言った。
「南部の領主達にもう伝令は飛ばしてある。此度の『反乱』は俺が首魁だとな。帝都には逆に『将軍討伐』を伝えて貴殿の首を持って褒賞を頂く為の凱旋を伝えてある。さて将軍?首が入っているはずの空木箱を持って、帝国の宰相に会い、ぶっ飛ばしてみたいとは思わんかね?少し死んだくらいで俺たち南部の苦渋なんぞ分かるまいて。」
将軍は小さく唸るとこう応えた。
「領主殿が私に反乱軍を指揮せよ、そう仰るのですな?」
「皇帝を討ち取れるのだ。これで貴殿も大手を振って王国に帰れる。それに文句を言うやつは何と言おうと、王国の平和を乱す逆賊に過ぎんだろう?」
「あたしもやるよ!だってポールさんも南部の人達も、悪くないじゃない!ロドスギウスの冒険者も、今の皇帝は腐ってるって旅の途中に言ってたし、これは帝国と王国がやり直すチャンスだよ!そうすれば皆が助かるんだよね!?」
メアも立ち上がって宣言していた。
雇われのごろつき、冒険者や騎士達も彼女の言葉で反乱に乗り気になっている様だ。
将軍はメアの勢いに呆れたが、賛同の意を示した。
「領主殿はとんだ狸ですな。しかし、ここまでお膳立てして頂いているならば身命を賭して事に臨むのはやぶさかでもない。だが勘違い召されるな?私はイタズラを仕掛けるのは大好きだが、姑息な騙し討ちや皇族の虐殺などはしない。やるならば帝城前での、ロドスギウス北部諸侯にて最強の騎士との一騎討ち。これに限る。」
「やっぱりバカだな騎士は。だが、それが最高に良い。」
俺はそう言い煙草に火を付け吸いながらもニヤケ顔が止まらなかった。
大いに暴れさせてもらおう。
「軟弱な北部騎士如きに我らが遅れを取るものか!お前達、覚悟は出来ているな!!??」
「「「応ッ」」」
エヴァンは大声で騎士団を鼓舞した。
彼は将軍の理想を体現するべく、ロドスギウス帝国騎士団の団結を図り、それに成功していた。
今回の戦では南部出身者ばかり集められていて、贅沢に明け暮れた北部出身の騎士はほとんど参加していない。
帝国の瓦解は目前だった。




