ジュールのスキマバイト
【アバター】のリカルドが依頼で忙しくしている頃、【マスター・アバター】であるジュールは薬草と香の販売で生計を建てる傍、全く別の仕事に手を付けていた。
それは商業ギルドの受付嬢シオンからの紹介だった。
「訪問販売で営業?」
2人で宿屋のベッドの上、裸で抱き合いシーツで包まりながら、突然商談は始まった。
「ええ、貴方にぴったりだと思うんだけど。1日に1件から2件、依頼された商品のテスター探しをするの。もちろん、事前に審査は済ませてあるのだけど、物は良くても販路を悩む商品、、、例えば、性に関する商品だとか、ちょっと人に言い難い商品だったりとか、、、」
「ああ、なるほどそういう、、、」
僕にもそういうのを買った経験が無いとは言わないけど、『クラファリオン』にはネット通販や専門的に扱う店舗があるわけではない。
この世界にだって需要が無いわけじゃないし、違法でもないけど、、、
「売り込みがメインじゃないとはいえ
、売れなければ依頼料は支払えない。タダ働きになっちゃう可能性もある。でも、商業ギルドの依頼という信頼性もあるし、貴方自身の商品の売り込みも禁止してないわよ?どうかしら?」
「そうだなぁ。最近は色々物入りだし(主に女性とのデートで)、少し稼いでおこうかな?」
〜〜〜〜〜
という訳で後日、商業ギルドに寄ってシオンから渡された商品を見ると、なかなかえげつない形状と商品名のジョークグッズが色々入った木箱を渡された。
宿屋で開けて確認してみる。
「なるほど、、、メーカー希望価格は少し高め。貴族向けの物が多い印象だな。女性向けは『全てを平らげた伯爵様の剛直』、『今宵の君は僕のペット』、『冒険者様、駄目ッ!お父様に知られたら!』か。男性向けは『旦那様の仰せのままに、従順な侍女は今日も求める』、『くっ!殺せ!強気な女騎士は夜に鳴く』、『やめてください、高貴な花は美しく散る』、etc...鞭に首輪、あとほとんど紐と布切れで出来たよくわからない何か、、、、」
見ていたら自分のと比較し、負けてはいないと再確認する僕。
【アバター】スキルに感謝しつつ、思考を放棄して、早々にアイテムボックスに放り込み、やった事も無い営業に繰り出すのだった。
〜〜〜〜〜
こういった物は、どんな女性でも表立って話題にする事は無い。
よほど仲が良くない限り。
逆に男性はどうだろう?
自身の誇りを保つ為にこういったアイテムは使いたがらない傾向にあるかもしれない。
だが気軽に話せる場所であれば?
男性同士の酒の肴で紹介してみたらどうだろう?
アルコールで気が大きくなってるだろうし。
そんな期待を込めて僕は酒場に繰り出した。
「珍しいな?色男。こっち側で飲みたいなんてよ。」
「てっきり女としか連まないとおもってたぜ。」
「あのさ、忘れてるみたいだけど、あたしも女なんだ。次ジュールの前でバカにしたらタダじゃ置かないわよ!」
「お〜怖っ!このパーティ最強の女冒険者が、ジュールの前だと子猫ちゃんかよ。」
「やれやれ、僕にも相談し辛い事はあるんだよ。それにしても、こないだは大丈夫だったかい?」
僕が酒の席で話している彼らは、前の依頼で薬草採取をしていた時、少し強い魔物とかち合って劣勢になっているのを見かけて、助太刀した冒険者パーティだ。
気の良い奴等で、きちんと謝礼を渡してくれた。
僕だってなるべく人助けはしたいが、これはゲームの話じゃなくて世の常で、無償で人助けをやると聖職者や貧民や善意に付け込む悪人がワラワラと接触してくる。
挙句の果てにそれをして当然という感謝も何も無い価値観で周りを振り回す輩も登場するのだ。
だからきちんと報酬は貰う。
それが周りにも良い牽制になるし、安い人間ではないというアピールになり、信用に繋がるのだ。
「で?お前が内緒話って事は、何かデカい仕事か?」
「いや、まぁ、仕事っちゃ仕事なんだけど、商業ギルド絡みの依頼なんだ。面白そうだから受けてみただけで、、、」
「商業ギルドぉ?面白い依頼なんてあったか?冒険者の俺らが出来る事なんて、荷運びとか建設の手元だとか、森林ギルドへの人材派遣や護衛だとか、思い付くのはそれくらいか?後なんだっけ?」
他の3人も思い付く仕事を並べてみる。
「代書人」「農作業」「貴族屋敷の清掃」「洗濯手伝い」「引越し手伝い」「縫い物・編み物」
「実は、ゴニョゴニョ・・・」
「あ?」「え?」「うん?」「お?」
僕から話を聞いた4人は確かに需要はあると言ってくれた。
「商業ギルドが販売を躊躇ってるのは分かるな。実際、そんな話なかなか聞かないし、出て来ないだろ。」
「あたしは今、コレの存在を知って猛烈に後悔し始めてるわ。どうアドバイスしろっていうのよ?」
「あー、そりゃあ、おめー、、、」
「うーん、、、」
5人の間に重苦しい空気が漂っていた。
だが、パーティリーダーの男が何か思い付いた様だ。
「そうだ!ララ!お前、これ買ってジュールと2人で試してみれば良いじゃねーか!」
「・・・死ね!」
ドムッと鈍い音が響き、腹パンをされてリバースを我慢して青褪め、悶絶する大男がそこにいた。
思わず取り押さえられる女冒険者ララ。
「まぁまぁ、落ち付けよ。リーダーはバカだけど悪気があって言った訳じゃないだろ?」
「ほら、それに誰かが試さないとさ、宣伝も出来ないし。それに、ララって前から貯金ばっかりしてるし、今日だって久しぶりに飲みに来たのだって、ジュールを見たかったからだろ?」
「それ以上言うなーっ!」
「え?僕?」
なんでも街で一目見てからずっと気にはなっていたけど、仕事が忙しくてそんな暇は無かったらしい。
結構彼らは依頼が立て込む信頼あるパーティなのだ。
「前の酒の席で付き合うなら誰が良いって話を女冒険者に聞かれて、言ってたのを聞いちゃったワケ。」
「『風の様に舞い、颯爽と魔物を屠る英雄』だったっけか?」
「はぁ?!ぐぬぬぬ!!あんたたち、、、絶対に許さない」
ゴゴゴゴと背景に炎が立ち上っている様な気がする。
「良いよ。ララと試してみる。」
「へ?」
「ごはっ!?!」「ぎゃー!?!」「すんませーん大将!バケツと雑巾下さーい!」
僕は「話を聞いてくれてありがとう」とパーティメンバーに伝え、代金をテーブルに置くと放心状態のララと手を繋ぎ、その場を後にした。
「ヒュー!」「お!?ララじゃん!?」「ジュール!今度は私も誘ってねー!」
真っ赤な顔で歩くララを連れて僕は『夕霧亭』に向かった。
〜〜〜〜〜
ララは一晩中、何度も何度も絶叫と失神を繰り返してベッドの上で七転八倒したため、僕は途中から防音防振の結界魔法を掛けなければならなかった。
使用したジョークグッズは2人で折半して購入したけど、ほとんど全てララに進呈した。
全部はララが持って帰れないから僕が保管してるけど、それ以来彼女がやってきて身体を使った品評会をする羽目になった。
あまりにもベッドを汚したし、部屋中散らかした為に後始末が大変だった。
シオンに領収書と売上金を渡したら、『使い心地』を聞かれた為、詳細を話した。
話を聞いてる間のシオン、なんだか楽しそうだったな。
次宿屋に来る時は木箱を色々と持たされる気がする。
シオンから報酬を貰い、ララと折半した料金分目減りしてしまったが、後にカップルや若い夫婦に売れば良いのでは?と思い付き、後日しっかりと営業をこなした。
たまにはこういうスキマバイトも良いかもしれないな。




