王国将軍ポール・ウェイン
俺が未開拓鉱山に入ると、毛玉族と蜘蛛兎の死体が複数転がっていた。
「・・・ダンジョン化しているのは確実だ。。。騎士達は戦闘に夢中で気付かなかったのだろうが、魔素の充満によって夥しい量の鉱物資源が生み出されている。」
奴らの死体の傍を見てみれば、金属キノコ類が無数に生えていた。
「鉄タケ、ミスリルタケ、銅タケ、銀タケに金タケ、そしてアダマンタケにオリハルタケ。地面から天井までびっしりだ。『オート・コレクト』で無限に採取してるせいで依頼料はとっくに超えてしまった。これは王国が命懸けで奪おうとする訳だ。」
城にいる女性達の孫の代くらいまで余裕で養える価値の金属キノコ類を集めながら奥へと進むと、騎士1人と冒険者2人に出会した。
どちらも大怪我をしている。
「あ、あんた、増援か??」
「た、頼む、、将軍があと少しで、、、」
騎士の方がより重症の様だ。
「ぐ、ゴホッ、、、どうやら私は、、、ここまでの様だな、、、増援は、、、貴殿のみか???」
「ああ。上手くいかなければここは放棄され、アンタの上官は退却後に更に大軍を編成して『異界』からの侵略者を討伐する算段だな。」
「ならば良い、、、フッ、、、ゼーテスブラン王国軍を追い払えたかと思えば、、、、まさか捕虜にした王国将軍に、、、、我が国が救われるとは、、、運命とは良く分からん、、、冒険者よ、、必ず、将軍殿をお守りしてくれ、、、彼の方は、、、世界に、、必要だ、、、彼に、、、ロドスギウスに、、栄光あれ、、、」
騎士は力尽きた。
メインクエストでのポール・ウェインの立ち位置は勇者の最大の後ろ盾だ。
勇者が彼を味方に付ければシナリオはとんとん拍子に進むが、未だに勇者本人は現れない。
「少し急ぐか。。。」
毛玉族の死体もアイテムボックスで片付けながら進む。
鹵獲品が多ければギルドに良い土産になるだろう。
少しすると剣戟と怒号が聞こえてきた。
中心の大男が件の将軍、ポール・ウェインだ。
「前衛は交代しながら盾で圧をかけ続けろ!後衛は隙を見て刺突だ!!絶対に斬撃はするな!奴らのメイスに刃を当ててはならん!!確実に胴体を狙え!!」
そうも良いながら将軍はトロル級の体躯を持つ毛玉族のメイスによる打撃をものともせず、ボロボロの盾で制圧していた。
「【硬盾撃】!!!」
「「ロッ!?」」
将軍のスキルが発動すると数体が吹き飛んで転がった。
騎士達や冒険者がその隙を見逃す筈も無く、奴らに幾度も刃を突き立てる。
だが、『門』は休ませてくれないようだ。
更に数体が『異界』から出てくるところ、下がり切れず躓いた騎士に毛玉族と蜘蛛兎が躍り出た。
「うわっ!!??」
「ロ〜〜っ」
不気味な口から意味不明な声を出しメイスを大きく振りかぶる。
奴らの仲間は小賢しくも騎士を取り囲んで救助を妨害し嬲り殺すつもりのようだ。
「悪ふざけもここまでだ・・・鳴け。」
リカルドがすらりと抜き放った『吸血剣メアリー』は苛立ちを抑えられないとばかりに『異界』より来たれし蛮族達を袈裟懸けに両断した。
「み、味方、なのか?」
「或いは悪魔か、、、」
「さぁ、どちらかな?とりあえずこの『門』があとどれくらいで閉じるか、試してみるとしよう。」
俺の手にある『吸血剣メアリー』が嘆きの悲鳴を上げる。
慄いて武器を取り落としたり、呆然自失になったり、闇雲に騎士達に突っ込んで死ぬ毛玉族達。
「助太刀感謝する!!者ども続けぇッ!!」
「「「応ッ!」」」
俺と将軍はメイスによる、がむしゃらな猛攻を躱しながら斬り込んでいく。
「まだ出て来るのか!」
「一体いつになったらこの『門』は閉じる!?」
吸血剣が鋭く閃き、軽やかに『浮遊移動』する度に、敵の腕や脚、胴体と頭が竹蜻蛉の様に跳んでいく。
確実に毛玉族と蜘蛛兎は数を減らしつつあるが、緊張感は高まるばかりだ。
(俺の予想が正しければ・・・・)
『異界』がドクンと大きく脈打ち、拡張していく。
「何だ?!」
「フン・・・親玉のお出ましか。」
一際大きい身の丈4m程の毛玉族が現れた。
「ロ゛〜〜〜」
気味の悪い紋様が刻まれた、黒光りする巨大なメイスを携えている。
「ぐっ!!これほどの魔物となると今ある装備と人数では、、、退却するしかあるまい!」
「【ダーク・チェイン】」
俺が闇属性魔法で生み出した鎖が親玉の身体と武器を縛る。
「ロ゛〜〜〜???」
「将軍、コイツは俺が頂くぞ。」
『吸血剣メアリー』は歓喜に震え、空間ごと巨人毛玉族を斬り刻む。
ゴトリと四肢を落とすとアイテムボックスに全て収納された。
「ふむ。解体の手間が省けたな。さて、『異界』は収束しかけているが、何故だかダメ押しで溢れてくるな。。。」
「こ、この数は何なんだ!!」
焦る様に数十体の毛玉族が出現したが、最後に出てきたのは人間だった。
「のわーッ!?何ッ!?どこッ!?死ぬッ!?殺られるッ!?」
「ロッロッ!!!」「ロ〜〜〜っ!」
甲高い声からして、子供か女性の様だが一刻の猶予も無い。
将軍が群れに向かい全力で突っ込んだ。
「今助ける!!ええい!連続!【硬盾撃】ッッッ!!!」
「チッ!!」
将軍が吹き飛ばし俺が斬り殺す。
「まだまだァァァァ!!!【金剛斬】!!!」
将軍が力を振り絞り有象無象を斬り飛ばす。
だが数の暴力は圧倒的で小さな存在を掻き消すには十分だった。
「ロ〜〜ロ〜ッ!!」
「くっそー!!こんなとこで!死んでたまるかーッ!!【雷刃】!!!」
ズバシュッ!!!
雷鳴の様な光と共に一筋の剣閃が周囲に居る毛玉族を切り刻んだ。
「えっ!?ウソッ!?あたしこんな凄い技出したの?」
デカ物が吹っ飛んだので視界が開けてきて分かったが、どうも年端のいかない少女の様だった。
緋色の髪に青い瞳、愛らしいその顔には少し跳ねっ返りの強そうな態度が表れ、溢れ出る活発さを隠し切れていなかった。
(このタイミングで!!!現れたか!!)
「今だ!!冒険者殿!!!」
「承知した。」
俺は彼女に襲い掛かる敵を回転剣舞でバラバラにする。
「小娘!そこの『門』にもう一度さっきのを使え!!!」
「さっきのって言われても!?」
「良いからやるんだ!」
まごまごしてる間にまた奴らが湧いて出てしまう。
決着をつける時だ。
「もうやけくそだッ!!いっけぇぇーー!!【雷刃】!!!」
振るわれた剣は『異界』から流れる負のエネルギーをバッサリと断ち切り、その残滓は消え去った。
「なんと、、、あの少女は何者だ??」
俺はタバコを取り出し火を付ける。
「それについては後にしようじゃないか。将軍、俺はアンタを連れ戻すよう依頼を受けている冒険者だ。ロドスギウスの連中には悪いが、これも仕事なんでな。一旦外に出て話をしよう。」
灰を指で弾き落としながら、腰を抜かしてへたり込んでいる少女の手を取った。
こうして『異界』との戦いは終わった。
再び『異界』が繋がるかどうかは神のみぞ知る所だろう。




