色街の元締め
【アバター】はスキルなのに、子供を作る事は可能。
リカルドはあの後、夜通し女性達と汗をかいたが、朝方は浴場に入っていた。
不死者のスタミナは人間では推し量れない。
「本日はどのようなご予定で?」
バスローブのままロビーで紙巻きタバコを咥えると、クロードがすかさず、魔法など無粋とばかりにフリント式ライターで火を付けた。
「フゥ。。。そういえばジュールが商業ギルドの受付嬢シオンとデートする約束だったな。俺は【オート・コンパニオン】にするか。だがこちらも予定通り色街にいるジェシカ・カナリアに会ってくる。後は頼めるな?」
「かしこまりました。お嬢様方は?」
「好きにさせておけ。」
朝食を摂り、マルタの街にいるジュールが【コマンド・コンパニオン】を解除し、本人の意識はリカルドから離れていく。
〜〜〜〜
例え本体の意識がいなくともリカルドの行動は自律していた。
しかし、【アバター】といえども『もう1人の自分』という存在も確実に内在はしているのだ。
「やれやれ。見目麗しい女性を独り占めしたい気持ちは分かるが、【アバター】で体験した事は【マスター・アバター】に還元される。本来どちらかは諦めなければならないんだがな。だがまぁ、どうでもいい事だ。」
リカルドは1人ごちるとマルタの娼館『アイズ・オン・ミー』に向かった。
色街を通る際は客引きやスカウトが多数押し寄せたが、全てジェシカ・カナリアの名前で押通った。
それだけ彼女の力は絶大なのだろう。
「待ってたぜ。入んな。」
店の前には以前ギルドで話した厳つい男が用心棒で立っていた。
『アイズ・オン・ミー』は昼間は準備中なので閉店している。
しかし、この店の主人である彼女は俺の事を首を長くして待ってくれていたようだ。
「思ったより早かったわね。私がジェシカ・カナリアよ。初めまして、リカルド君。」
紫色の艶やかな光沢の髪に、真っ赤なルージュ。
派手なドレスでは隠し切れない、溢れ落ちそうなエロス溢れる身体がバッチリ主張しているこの女性がジェシカだ。
実は今の彼女は、魔族が人間に偽装している姿に過ぎない。
「俺に会いたいって言ってたな?いきなり『魅了』スキルを飛ばさないでくれ。そんなもの無くとも、ちゃんとお相手する気で来たんだ。」
早い話が彼女は娼館で各国の要人や強者をハニトラに掛けてパトロンを得ている狡いサキュバスなのだ。
「あら失礼?それにしても怒らないのね。スキルを無断で使ったのに。」
「それくらい大した事はない。どのみち全部脱ぐのに、隠すモノは無いさ。ほら、俺の正体が何か分かれば、どうという事は無い。」
不死者リカルドの隠していた長い牙、真紅の眼、巨大な禍々しい翼が顕になる。
サキュバスも魔族だが、明らかな格の違いにジェシカが竦み後ずさる。
「リカルド君、あなた、、、いえ、貴方様はアンデッドの王、、、まさか、、、不死者なのでしょうか??」
震えるジェシカの手を取ると、少し冷たい。
俺はすぐに元の形態に戻る。
「怖がらせてしまったか?」
「いえ、、、嘘、ほんの少し。」
ジェシカは顔を赤らめた。
「気にするな。魔族同士、吹聴する事も無いしな。最初みたいに接してくれ。その方が好きだな。」
「分かったわ。ねぇ、リカルド君は魔王の手の者なの?それとも、魔王になるつもり?私、この店気に入ってるんだけど。」
「大丈夫だ。俺は魔王とは関係無いし、魔王になる気は毛頭無い。どの勢力にも君とこの店に手は出させないさ。君を失うのは、、、世界の男達にとって一生の不幸だからな。安心して良い。」
彼女は体質的に男性の生気を補充しないとサキュバスとしての権能を維持出来ない為、この店を失う訳にはいかない。
「なら良かった、、、それにしてもリカルド君、、、良い身体してるわね、、、噂だと弟君も凄腕だって、、、」
「かもな。でも今は、君の本当の姿、、、ありのままの姿が見たい。。。分かるよな??」
そう言うとジェシカ・カナリアは自ら膝を折り床に付け、俺の腰に手を当てた。
彼女の挑発的な容姿は、どうしようもなく男の支配欲を唆ってしまう。
再びジュールの【コマンド・コンパニオン】で意識が合一した。
シオンのデート中だが、今はまだ昼間だから閨の時間が被らないのだろう。
〜〜〜〜〜
甘い香りのするベッドの上でジェシカの美しい紫の髪を撫でながらステータスを確認すると、レベルが爆上がりしていた。
ボーナスイベントで彼女と一夜を過ごすと、たちまちレベルアップする。
彼女の正体を暴いて弱味を握るのが条件になるが、それ以上に信頼を得られれば更にボーナスが付く。
ピロン♪
▽ジェシカ・カナリアが仲間になりました。▽
ジュールの【コマンド・コンパニオン】が解除される。
(なるほど、今頃はシオンとお楽しみ、という訳か。)
リカルド側からも【マスター・アバター】の様子は確認出来る。
(商業ギルドでの取引もシオンを介せれば何も問題なく収入を得られる。あとは訳アリ商品を兄弟間で『アイテムボックス互換取り出し』で行き来させたりして処分したりな。)
リカルドはタバコを吹かしつつ、次の予定を考えていた。
少し気になる事もある。
「勇者の到着が遅い。おそらく足止めをくらってるか、死んでいるかだな。」
暫くして城に戻ると、王国の騎士ダグラスとケンベルクが俺に話を持ち掛けた。
「リカルド殿、事情を知っている貴方様ならばと思い、お願いしたく申します。」
「実は我が国の将軍、ポール・ウェイン殿が先の戦で行方不明になっていまして、しかしながらたった今、所在が判明したのです。将軍がロドスギウスの残党を指揮し、正体不明の敵性勢力と散発的戦闘を行っているとの情報が伝令から。」
「ついては、リカルド殿には将軍を王国に連れ戻して頂きたい。将軍はその、、、正義感溢れるが故に敵味方から尊敬される御人。情勢が不明の上に我々が救援するとややこしい事に。」
俺はタバコに火を付け、味わうように吸いながら話す。
「フゥ、、、分かっているとは思うが、俺はアンタらに義理立てする必要はない。つまるところ、対価が必要だ。」
「もちろんですとも。このダグラスとケンベルクが王国の代理人として依頼をする。いかなる対価を求めになられるか?」
ジリジリとタバコの紙が燃え尽きるのを見ながら俺は答えた。
「金貨50枚だ。それと鹵獲品は全て俺の物とする。捕虜も含む。どうだ?」
「ではそれで。リカルド殿、何卒将軍を無事に。」




