リカルドの叙爵
『クラファリオン』には多数の国家がひしめき合い、互いに争い、その勢力図を塗り替えんと権威と武力を振るっている。
しかし、互いの国境に蔓延る強力な魔物の存在がその争いを複雑怪奇にし、この世界の人類の発展を妨げている現状がある。
冒険者達が自主的に国家間の争いに参加する事は考えられないが、それでも国家は力を持つ者を探している。
自らに逆らわない、忠実な猟犬という前置きはあるが。
「今のところ、俺には関係が無い。そして騎士に爵命されるという事は、、、」
チュートリアル半ばの動乱、メインクエスト『ゼーテスブランとロドスギウス〜将軍の行方〜』が始まるという事だ。
まず『ゼーテスブラン王の謁見』は強制クエストだが、その対応でストーリーは分岐を迎える。
プレイ時に選択した【アバター】が『アンデッド』『盗賊』『暗殺者』『魔族』等、もしくはカルマが『悪』であれば、教会に入り謁見時に自動的に敵対判定になる。
これは聖女バルバラの持つ固有スキル『天眼』によるもので、一種の『鑑定』だ。
彼女は天より与えられしその眼で、対象を暴く。
主人公が何かしら大きい功績や目立つ行動をするとこのイベントが発生し、否が応にも謁見しなければならない。
王の叙爵を受けると騎士になり、カルマは『善』で次のシナリオへ進む。
もしも王と敵対すると次はマルタの街脱出イベントに入る。
護衛の騎士2人を振り切るか倒すかして、逃げる、もしくは難易度は高いが王を含めて近衛も倒し、聖女を倒す選択もある。
聖女を倒せばカルマは『悪』になる。
逃走すればゼーテスブランでの密命を帯びた者が秘密の通路を教えて、ロドスギウス入りするという展開だ。
しかし聖女殺しはどうやっても『善』カルマ持ちと敵対するルートに入り易い。
敵対しないようにする為には相当数のオプションクエストをこなさなければならない。
つまりどう考えても選択肢は一つだ。
「『爵命を辞退』する。これしかない。」
このメインクエストに参加しなくとも、『異界の勇者』がシナリオを進行させる。
残念ながら、勇者の出現する場所はランダムで、あまりにも過酷な環境であると勇者は現地から辿りつかないままシナリオが進行してしまう事がある。
現時点ではこれに当てはまるはず。
だから、カルマを『中立』に保つにはこれが一番だ。
「ここがマルタ大聖堂。」
「ふむ。分からないように貴族の馬車に扮しているが、我らの主人は既に到着したようだ。」
騎士2人に案内されながらリカルドは内心どのイベントが発生するのか気を揉んでいた。
マルタ大聖堂の中央祭壇には既に儀礼剣が用意されていた。
「「我らが王よ」」
騎士2人が跪くが、もちろん俺はそんな事はしない。
開口一番こう告げる。
「爵命は辞退させて貰う。俺は忠誠心が無いし、騎士なんて仕事、全う出来ないんでな。」
踵を返して歩く。
「待たれよ」
王の呼びかけに俺は足を止めた。
「そなたに『異界の勇者』である疑いがかかっている。聖女の判定を終えるまで貴殿を教会の外に出す訳にはいかん。」
近衛が取り囲み、俺は祭壇まで歩かされる。
「どうなろうと、騎士の位は受け取らない。」
近衛騎士が口を挟む。
「それはこちらで決めさせてもらおう。」「断る」「まだ言うか、不敬な」「俺はこの国の民じゃ無いんだ。従う義務は無い。」「ならば貴殿を罪に問いあの城を没収しても構わないんだぞ?」
おや、敵対ルートへの前振りか?
「止めい!口が過ぎるぞ!」
王の一喝で近衛が頭を下げ、こちらを睨む。
ザコがいくら睨んでも怖くないが。
聖女バルバラは既に『天眼』を発動させている様だ。
「え?、、アンデッド??いえ、邪悪な心の臓は無いのに瘴気を感知している??それよりも輝くこの聖気は、光属性??これは、、、あなたはどれにも属さない、、人間ですらない、、、あなたは、、何者???『異界の勇者』なのですか???」
聖女バルバラの戸惑いが周囲に居る王や近衛にも伝わった様だ。
「その質問に答える義務は無いが、『異界より来れし者』が、必ずしも人間だけとは限らない。『門』を開く際は努努、気を付けることだ。それと、これだけは確かだ。『異界の勇者』は別にいる。彼か・・・彼女かは分からないが、本来ならこの教会に着いていてもおかしくないはずだ。個別の案件に時間を取られているか、『座標がズレてしまった』かだな。」
「リカルドよ、何故それを知っている。いったいどういう関係があるのだ。」
王が訝しいとばかりに言った。
「知ってはいても、今はまだ関係は無い、とだけ言っておく。将軍の居場所については俺も知らない。」
近衛達が激昂して剣を抜く。
「貴様!将軍をどこへやった!!??」
「言うに事欠いて知らないだと?馬脚を現したか!?」
「ロドスギウスの手の者め!!」
「鎮まらんかー!!」
王は近衛達を怒鳴り散らした後、俺に詰め寄る。
「我が国の騎士になるつもりは無いのだな。」
「ああ。だが冒険者としてはこの国には居させてもらう。そうでなければ城など建てるものか。俺を心配してるのも、いるみたいだしな。」
教会の前が騒がしくなってきた。
「リカルドー!?騎士になるって本当なの!?」「王様だかなんだか知らないけど、あたいの男に手を出すんじゃないよ!」「誰があんたのよ!」「私が彼女だから!」「すっこんでろビッチ!」「誰がビッチよこのアバズレ!」「何よ!彼の1番はアタシよ!」「なんですって!?退けよクソアマ!!」
うーん。
「やっぱ騎士にでも、なろうか」
「いや、アレ見て騎士に迎える訳無いであろう。女侍従、全員毒牙に掛けるつもりか。はよう何とかせい。」
王が顰めっ面で答えた。
俺は教会を出ると、これまで出会った女達全員に囲まれ揉みくちゃにされてしまった。
「リカルド!ジュールから聞いたわよ!?アナタ無しで城に行く訳ないでしょ!」「なぁ?今日はあたいといようぜ?な?お願いだから、、、」「ちょっと抜け駆けしないでよ!」「それアンタが言う?」「ねぇ、リカルド、ジュールも紹介してよ。」「はぁ?まさか、弟も、ってワケ?・・・」「・・・思えば、なくは無いわ、アリね」「・・・2人から同時に責められて・・・燃えるかも」
この大所帯で宿に泊まれる筈もない。
結局俺は、なし崩し的に城に案内させられてしまった。
王も近衛と、護衛達も城まで付いてきたが、結局ちゃんと中まで見て帰ったのかは覚えていない。
俺は碌に案内する事すら出来なかったがクロードが上手くやってくれただろう。
王国所有地借款登録の書類は『死の湖とそれに付随する魔の森』でしっかりと許可が降りて発行されていた。
カルマは『中立』のままだった。
そして、そのままリカルドが仲良くしていた女性陣は城に居着いてしまったのだった。
女性の中にはロドスギウスの密偵もいたが、密命を帯びている割には、他の女性達にロドスギウス出身アピールが激しいし、俺とのいつかの為の子供用の服とか玩具を買って飾り、他の女性達と喧嘩していた気がする。
城に来ていたマルタの衛兵達は帰っていたが、護衛の2人は城に残る様だ。
形だけの監視なのか、連絡員として残されているのかは俺も知らない。




