6.冒険の終わりに
その後は何事もなく、ドローンはリスノスケの出発地である崖の近くまで飛んできました。
「チャア。やっと帰ってこれたよ。もとのところに下ろしてくれるといいんだけどなあ……」
ドローンの速度がだんだんゆっくりになっていくのが感じられました。どうやらリスノスケの希望どおり崖途中の平地で下ろしてくれるようです。
ホッと安心して気が抜けたところで、今まで気にしていなかった、というか気にするどころではなかった飛行中の独特の浮揚感を改めて感じます。
「あ……もうボクが飛ぶことはないんだろうなあ……」
やがて平地にゆっくりとドローンが着陸すると、リスノスケが機体の上から降ります。
リスノスケが住処に帰ろうとしたところで平地に落ちているドングリに気付きました。
「あ、そういえばオヤツ持ってきてたんだ。あはは、すっかり忘れていたよ」
リスノスケはドングリを拾い上げて持って帰ろうとしましたが、ふと立ち止まります。
そしてドローンのところまで戻るとそれを機体とアームのフレームの隙間に挟んで押し込みました。
「チャア。じゃねー」
今度こそリスノスケは軽快に崖を登って森に帰っていったのでした。
◇◆◇
その後、ドローンを自分の所まで戻した凜太朗がリスノスケがドローンに挟んだドングリを手にとってながめていました。
「あえて俺にくれたってことなんだろうけど。お礼?いや、今日の出来事なんてリスにしてみればただの災難だろうし……ま、いいや。記念に取っとこう」
リュックのポケットにドングリを仕舞った凜乃輔もリスノスケ同様帰路についたのでした。