月の精霊
少し時間が空いた投稿になります。
ゆっくりした気分で見ていただければと思います。
海沿いの小さな島に、きれいな池がありました。
その池に映る月はたいそう美しいものでした。
長い長い年月の中で、月の光を受け続けていた池から月の精霊がうまれました。
ある日、嵐で流されてきた男がその島に打ち上げられました。
男は気を失っていました。
空が戻り雲が去り、月が出てきて優しくその者を照らしました。
月の光で目を覚ました男は、月に照らされて輝く池の中に美しい女性を見たのです。
彼女は男を見ると、すっと消えてしまいました。
男は夢を見ていたのかと思い周りを見回すと、池の中に不思議に光る石を見つけました。
男は思わず石を手に取って持って帰ってしまいました。
それからひと月が経った頃、男の家を訪ねる者がいました。
「あなたが島から持ち出した石を返して欲しいのです」
その人が頭の覆いを取ると、そこには島で見た美しい女性の顔がありました。
男は驚いて女を見ていましたが、しばらくして気を取り直し理由を尋ねました。
「あの石は月の光を浴びて月の精霊の私を生み出しました。あの石が島にないと、そのうち私は消えてしまいます」
「きれいな石だったので持ち帰ったのです。あなたが消えるのは嫌なのでお返しします」
「ありがとうございます。お礼に何か一つ願い事をかなえて差し上げます」
男はしばらく考えて、思い切って言いました。
「私のお嫁さんになってくれませんか」
女は一つ瞬きして、
「よろしいでしょう。ほんのひと時人の世で過ごすことは造作もないことです」
石は無事島に戻りました。
そして男は女と幸せに過ごしたということです。