好きになりそう。
「…。」
朝。私からしたら憂鬱の象徴だ。
恋に落ちるまでは。
下駄箱に着いた途端、中学校に入学して初めてできた友達に出迎えられた。
リュックの中で水筒を漏らしてしまった彼女、りんの片付けを手伝っていたら、いつの間にか仲良くなっていた。
『あ、おはようあやか。寝癖、まだ取れてないよー。』
あ、。バレたか。
頑張ったけど結局惨敗してしまったこの癖毛。
「りんは直毛でいいねー、おまけに高身長でスレンダー。癖毛の低身長とか、モテないから困っちゃう。」
『またまたー。』
『ほら、同じクラスのあの男の子。いっつもこっち見てるよ。あやかの事好きだったりして。』
…自分ではモテないと言いつつも、内心では結構モテる方だと思ってる。
入学して二週間で告白される女の子はモテるって言っていいよね?
『…あ、かなで。』
りんが独りでに呟いた。
私達と同じ、吹奏楽部に所属しているかなでくん。
野球部と迷った末に姉のみゆ先輩が居るという理由から吹部に入った、ちょっとシスコン気味の男の子。
目鼻立ちが整っていて、ちょっと身長は私と同じくらいで低め。
…最近ちょっと話すようになってから、よく目合うんだよねー、
私のこと好きになっちゃった?なんちゃって。
『…お、あやかにりんじゃん、おはよ。』
登場してきたはいいものの、とんでもない寝癖だ。
『かなで、なんか寝癖やばいよ、今日ノーセット?笑』
からかうようにりんが言う。相当急いでたのだろうか、。
『なんか、あやかとお揃いだね。よっ、くせ毛二銃士ー』
「もー、…ほら、これくらいだったら私のくしで何とかなるでしょ」
かなでの髪を触り、少しとかす。
心なしかなんかいい匂いする、リンス使ってる系男子かな。
…あ、朝走ってきたから汗臭ってないかな、ちょっと意識しちゃう。
「はい、直ったよ。」
『…あ、ありがと。』
そう言ってぴゅーっと何処かへ消えた。
『…かなで、照れてたねー。さすが初恋泥棒。』
「そんなんじゃないし。」
かなでは動物で表すと犬みたい。単純で、餌をあげると誰でも尻尾振るような奴。
「なんか、隅に置けない奴。」