第1話 王子が私を探してるってどういうこと?①
ここは、どこ?
キングサイズ、それ以上の大きさのふかふかのベッドにふんだんにレースが使われたカーテン。中世を思わせるキラキラと輝くシャンデリアに高級感のある薔薇の刺繍のカーペット。
あれ、手が小さい?
急いで部屋にある大きなドレッサー鏡を覗き込む。
アメジストの吊り上がった瞳に、金色にサラサラと輝く髪。
そこには、人形のような美少女が写っていた。
かわいい。9歳ぐらいかな?
そして、かな恋の悪役令嬢だったモデラート・フィーネに似てる?
「転生した?」
前世の自分とは違う高く幼い声に驚く。
転生したとして、なんで私死んだんだっけ? 思い出せない。
とりあえず、ここは「奏でる音色と恋」の世界かな?
そして、私は悪役令嬢!?
いや待って、確かこの悪役令嬢の最後って断罪されて音楽界を追放されて2度とピアノを弾けなくなったはず……。
まだ国外追放とか修道院に入れられた方がマシなんじゃ……だって追放されて平民になっても酒場とかでピアノ弾けるし、修道院でも賛美歌をピアノで弾けるよね?
というか、なんでよりによって悪役令嬢なんだよおお。そこは、ピアノ科の生徒1とか2とかのモブにしてくれええ。
「フィーネ! 目が覚めたのか!」
ドアを突き破るようにして大男が入ってきた。目元がフィーネに似ているような。
と考えている間に力強く抱きしめられた。
ぐえっ。
「ちょっとあなた、そんなに力強く抱きしめたらフィーネちゃんがつぶれちゃうじゃない」
こっちは、美魔女という称号がふさわしいような金髪の美女だ。
「お父様とお母様?」
「そうよ、フィーネちゃんが無事でよかった。1週間も寝込んでたのよ」
「あの講師は辞めさせておいたから安心しろフィーネ」
「講師?」
「フィーネちゃんに怪我させたピアノの講師よ!」
待ってピアノの講師辞めさせたらピアノが弾けなくなっちゃうんじゃ
「ピアノの講師クビにしなくていいよ」
「どうしたのフィーネちゃん!?」
あ、しまったフィーネは、こんな喋り方じゃないし、こんなことは言わないのか、えっと
「ピアノの講師別に辞めさせなくてもいいわ、その、私も楽譜落としたの悪かったし」
上目遣いで両親を見つめてみる。
「まぁフィーネちゃんたらなんて優しいの!」
「わかった、ピアノ嫌だったらいつでも辞めていいんだからな」
本当に優しくて素敵な両親だなあ。あっそうだ。
「お母様、私今からピアノを弾きたいわ」
「まだだめよフィーネちゃん! 安静にしなきゃ」
「そうだぞ、あと1週間は寝てなさい」
前言撤回、この両親過保護すぎる。