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第4話 演奏会にいるとか聞いてないんだが?③



「気のせいだよね」

「桜、どうかしたの?」

「ううん、なんでもない」


 

 ロベルト·ルイと目があった気がしたけど気のせいだよなあ。会ったこともないし。


 

 ロベルト·ルイは、曲を1曲弾き終わると、椅子から立ち上がり優雅に頭を下げる。間を置いてからパチパチと拍手の音が広がった。


 

 私も敬意を込めて拍手をする。本当に素晴らしい演奏だった。やっぱり弾く人が違うとここまで変わるんだなあ。



 それに、今までちゃんと弾きこなしている人がいなかったから気づいかなかったけど、音の響きもいいし、このピアノいいやつかもしれない。


 

 拍手の音が静まると、何事もなかったかのように人々は話し始める。


 

「なんか、別次元って感じね。音だけじゃなく、オーラもすごいわよ」

「確かに、演奏が正確だったなあ。これからどれくらい上手くなるのか気になる」

「紗綾が気になるなんて珍しいわね、恋でもした?」

「それはない」

「断言されるとは、可哀想ね。そろそろ桜にも春が来てもいいと思ってるのに」

「余計なお世話だよ」


 

 私は、やれやれと手のひらをひらひらさせる。困ったことに前世も今もピアノにしか興味はない。


 

「それにしても、やっぱり上手い人の後って弾きずらいわよね」

「そうだね」

 


 先ほどまで、途切れることがなかったピアノの演奏がぴたりと止んでいる。


 

 絶対とは言いきれないけど、ロベルト·ルイの影響だろうなあ。上手い人の後に弾くと、例え普通に弾ける人でも下手に聞こえてしまうこともあるし……。


 

「あのピアノ、こっちの世界では、有名な人が作ったらしいのにもったいないわよね」

「えっなんでそんなこと知ってるの?」

「ここ一週間前に噂になってたのよ、ロベルト·ルイが世界最高級のピアノを買い上げたって、しかもそれをこの演奏会でお披露目するって言ったもんだから、何人ものピアニストが参加できなくて嘆いたっていってたわ」

「初知りなのだが?」

「言ってないからね。ていうか、かなり噂になってたから知ってると思ってたんだけど……聞いてないの?」

「聞いてない……」


 

 まさか、この世界にスタ○ウェイのような、素敵な音の鳴る夢のようなピアノが……。


 

「確かに桜がそれを知っててすぐ弾きに行かないのは不思議に思ってたけど、本当に知らなかったの?」

「うん。ちょっと今から弾いてきていい?」

「あんた、人前は怖いから弾かないって言ってたじゃない」

「多分さ、本当のフィーネ嬢だったら1番に弾きに行ってた思うんだよね、そろそろ弾きに行かないと不思議がられるかなと」



 それに、今なら空いてるしね、絶好のチャンスだと思う。



「言ってることが180度変わってるわよ!?」

「気のせいだよ多分。前世でもコンクールで何度も人前で弾いたし、素敵なピアノに出会うために」

「そんな理由でコンクールに出てたなんて……。知らない方が幸せだったわ」

「それは、ごめん?じゃあ行ってくるね」

「ちょっと待ちなさい、まさか実力全部出して弾くつもりじゃないわよね?」



ぐえっ



 私は、紗綾にドレスの襟を掴まれて身動きが取れなくなった。



「さすがに本気で弾いたりはしないよ、今までの演奏のレベルを聞いて、そんなことしたらすぐに王様に呼び出されてピアノ弾かされそうだと思ったしね」



 私は、紗綾から解放されるためにバタバタと動きながら必死に訴える。



「絶対にそうしなさいよ! 洒落にならないんだからね」

「後半は、冗談だったんだけど……」



 紗綾に睨まれてごにょごにょと声が小さくなっていく。



「それに、弾くなら今がチャンスだと思うんだよね、やっぱり上手い人の後って下手に聞こえると思うし……」

「上手い人の後に弾くのは、大体それより上手いと自信があるやつか、バカだけよ。それに沢山注目されるわね」

「うわ、終わった」


 

 沢山の人に見られることを想像しただけでぞっとする。



「やっぱり、夜に忍び込んでピアノを弾くしか……」

「バカ、捕まりたいの? あんた本当にピアノのことになると正気じゃなくなるんだから」

「心あたりしかないなあ」

「本当にね」



 私は、紗綾とうんうんと頷き合いながら、ドレスの襟を掴んでいた紗綾の手を外す。





 投稿遅くなってごめんなさい。いつも読んでくださってる方、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

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