6話 一刀、本を開くの事
…三年待った
最初は爺ちゃんに弟子入りした
高校生やってる内は勉強と並行して向こうの世界で使える知識を身につけようと必死になった
農耕、政治、経済、化学、医療…それから趣味としては料理、酒造、占星術、機械いじりにオシャレにも気を使い、こっちの国のアイドルの事もいろいろ勉強した
大学に入り自由な時間が増えてからは爺ちゃんを何とか説得し免許皆伝出来たら内に伝わる宝刀『新月』を譲る約束を[無理矢理]取り付けた
結局見事に免許皆伝、約束の新月+爺ちゃん愛用の長刀『鐵斎』をくれたのには本当に感動した
…まぁ鐵斎の重量が45kgで新月が25kgだったため背負って帰ったのは今思えば爺ちゃんも自分の愛刀と別れるのが寂しかったのか、持って帰る俺への嫌がらせだったのか…
…うん…多分後者…
頭を振って気持ちを切り替える
…出来る限りの事はした、後はここに向こうへ行く手掛かりがあれば…
…頼むっ!!ヒントでも何でも良いから在ってくれ!!
1頁目はほとんど掠れて読めないが『黄巾』の2文字は読み取れた
一
「黄巾の乱か、三人は仲良くやってるかな…」
ダメだ…派手好きな地和と倹約家の人和が舞台セットについて揉めて、結局天和が間取り持ってる姿しか浮かばない…
とっ、いかんいかん、懐かしんでる場合じゃない
パラパラと頁をめくると…
一
「…この頁…」
…定軍山にて夏侯淵、典韋死せん、か…
…これも既に管輅の中では決まっていた事だったのだろう
一
「…悪いけど、この頁は俺は認めない…赤壁もね」
…その結果がわかっていても秋蘭と流琉を失ってまで彼女の隣には居られない、赤壁の大敗が起こっていたら華琳の天下は無かった、だから天下を成し遂げた彼女の隣に居られなかったのは悔しかったが、
一
「俺はまだ死んでない、だからもう一度…」
彼女との約束を果たす為、俺の思いを遂げる為、
俺は頁をめくる
一
「魏の王にて三国定まり天下に太平もたらされん」
…俺が関わった最後の戦、そしてそれはこの書が『あの』管輅によって書かれた事を意味する
一
「…つ、次の頁は…」
舌が渇く、こんなプレッシャー最後の戦以来だ…
紙をめくるペラリという音が耳梁を打つ
そこには
天下に暗雲垂れ込めし時、天の御遣い新たなる知勇を持ちて乱世を沈めん
一
「あぁ…」
涙が溢れる…行けると決まったわけでも俺の事と決まったわけではない…けれど俺には充分だ…まだやれる
…今まで興奮していたせいだろう…急に襲ってきた睡魔に勝てず俺はそのまま眠ってしまった