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69話 劉璋を知る者


 呉蘭SIDE


「…親の跡目を継いだだけ…賢王を継いだ愚王…などと劉璋様を悪く言う民は多い、だが『違う』、それは違うのだ」


「違う?」


「…北郷殿、君は今のこの国をどう思う?」


「曖昧な質問だね、…土地は肥沃だし、交易にも向いた河川もある、そして何より劉備さんが治める国だけあって結束力が強い、纏まりある良い国だと思うよ」


「…そうだろうな、北郷殿、その言葉は正しい…だがな、昔は違ったのだ


「劉璋さんの時代って事か?」


頷くだけで肯定する


「劉璋様の父上の事はご存知か?」


「劉焉さん、だよね?」 


「あぁ、立派な方だったよ、今は劉備に併呑されたが、周辺諸国は皆揃って虎視眈々と蜀の肥沃な大地を狙っていた。それを政治手腕と交渉術だけで防ぎ切ったのが劉焉様だった」


「なるほど…」


「ここまでは分かってもらえた様だな、ではその先は想像がつくか?」


「その先?」


「劉焉様亡き後の事だ」


「…御家騒動?」


「その通りだ、劉璋様には兄が二人、弟が一人いたためにそれぞれに後見人や支援者がついて劉璋様を除いた三人で三つ巴の跡目争いが起こってしまったのだ」


北郷の表情が固く引き締まる、彼は気付いたようだ四つ巴の跡目争いがどんな状況を生み出したのかを…


「政は荒れに荒れたそうだ、治政はなされず、食い詰めた民が賊と化し、賊を駆逐する警備もいない為に民はその日の食にも事欠く有様、…街には死者が溢れた…」


あれは地獄絵図と呼ぶべき光景だった、俺自身何人看取ったかわからない、劉璋様の指示で治安回復にと街を歩けばその日一日死体の処理、そんな生活が何日も続いた…


「そして結果、跡目争いは三人がそれぞれ潰し合い、劉璋様に王位継承権が回ってきた、皮肉なものだよ、王位を欲した者は皆死に、望まぬ者に与えられた」


「………」


 


北郷の表情には疑念が窺える、つまり北郷は『劉璋様が望んで殺した』のではと疑っているのだろう


「その顔は劉璋様が王位欲しさに三人を殺したんではないかとうたぐっているようだな」


「…いや、そういう訳じゃ…」


「断じてそのような事はないよ、むしろ誰もあの様な地位、欲しいとは思わんだろうさ…」


「…どういう意味だ?」


「今まで散々御家騒動で政を疎かにして民達を苦しめたのだ、民達の怒りはいったい『誰』に向いたのだろうな?」


「…王…?」


「あぁ、そういう事だ」


そこまで話した途端、今まで脇でうつらうつらとしていた金髪の軍師殿が急に目を見開き、


「なるほど〜、そういう事ですか〜」 


「理解して頂けたなら幸いだ、軍師殿としての見解は如何様なものか?」


「御家騒動の際に劉璋さんはどうしていたんですか〜?」


「静観だ、どちらにも付かず、少しでも民への被害を減らすべく我等と共に奔走していた」


「誰かに付けば、もっと早く解決出来たのでは〜?」


「確かに御家騒動はそこで解決したろうがどれもも愚王と呼ぶに相応しい人物達でな、兄二人は見栄と意地のみで王になりたい馬鹿共、弟君は周りの老骨共が傀儡にしやすいからと祭り上げられただけの10にも満たないお子様だ、誰かについて御家騒動が治まってもまともな治政など望むべくもない」


「うむぅ…」


 


難しく眉間にしわを寄せる少女


「…ぐぅ」


「…風、寝ないで」


「…都合が悪かったので寝てしまいました〜」


「彼の話は間違いない?」


「蜀の混乱した時期と桃香ちゃん達が来た時期は確認しないとわからないですけど、話の辻褄は合ってますね〜」


「後で戻ってから付近の住民や劉備自身に確認してくれて構わない、嘘がないと理解して頂けるだろう」


偽りはない、むしろこの事実を劉備の元で公言してくれれば話はこちらに有利に傾く


「北郷、これを聞いて尚劉備に手を貸すかどうか、今一度考えて欲しい、あの人の良い娘は気付いていないだろうが劉備のやったのは火事場泥棒とたいして変わらんのだ、蜀という国の混乱に乗じて国を奪った憎むべき犯罪者なんだよ」


「桃香はそんな人間じゃない、そういう言い方はやめてくれ」


「本人にその気がなくとも結果そうなったのは事実ではないか北郷殿?」


「…でも…」


揺らいだ、彼の瞳の光が動揺を表した


あと一息だ


「北郷殿、何も我等は今劉備が国を治めている事に異論はない、むしろ治政に関しては彼女の才覚を俺は高く評価している」


「…じゃあ、なんで今更戦うんだ…、せっかく戦が終わったのに、なんでまた戦を始めるんだよ…せっかく…せっかく平和になったのに…」


「今のままで我等に平穏などこない、三国の争いが終わったからと言って劉備が国を治める限り、この怒りは晴れる事など有りはしないだろう、…北郷殿、君は大切な者の命を奪った相手を許せるか?魏には君が慈しみ、大切に思う相手が大勢いると聞いている、もしその誰かが殺されたとして君はその殺した相手を許せるか?」


「………」


「劉備が殺した相手は我等にとって本当に大切な相手だったのだよ…」


「彼女が殺した訳じゃ…」


「…殺されたんだとしたら?」


「え?」


「…劉璋様は劉備に殺された…毒などという卑劣な手段でな…」


「!!!」


「劉備に城を明け渡し、西方に向かった我等はあの白帝の城に居を構えた、それから直ぐにだ、劉璋様がなくなったのは…」


 


「で、でもそれが桃香のせいだなんて決まってないだろ!」


「毒物が使用されたのは医術に詳しい者が調べた結果だから間違いない、その使用された毒が北方でしか取れない物らしく、あの時期北方からそういった物資を運べるのは劉備か他国に入れるだけの権利を持った商人のみだ、もちろんそんな商人が付近にきた事はないのだから自ずから犯人は分かるんじゃないか?」


「いや、だからって桃香のせいとは…」


「確かにそうだな、劉備の軍師の入れ知恵かも知れん、劉備の連れた兵の先走りかも知れないし、劉備について来た民がやったのかも知れんな、…しかしな北郷殿、この結果に起因したすべての事柄はどうして起こった?すべて劉備が原因ではないか、劉備が来なければ劉璋様は死ぬ事などなかった、違うか?」


「…それは…」


「北郷殿、劉備との同盟を破棄しろなどとは言わない、しかし、魏がこの戦に介入するなら我等も対応を改めねばならぬ、その点を踏まえ曹操殿に伝えて欲しい、我等に魏と戦う意思はない、とな…」


「…やめる選択はできないんだな…?」


「無論」


「…桃香が王位を退位したら?」


「勘違いしないでくれ、劉備が王位にあるのが許せないんじゃない、劉備『そのもの』が許せないんだ、劉備の頚以外我等を止められるとは思わないでくれ」


「…分かった」


「では…?」


「華琳に言うまでもない、答えは否だ」


 


「一応、理由だけは聞かせてもらおう」


「たしかに呉蘭さんの話は信用はできるし、毒の話も嘘だとは思えない、…でも、どんなに正しくとも戦で解決しようって言うならそれを俺は認めない」


「………」


「…せっかく平和になって…誰かが誰かを殺さなくても良くなって…誰かが戦で死ぬ事も…その死んだ誰かの為に泣く人もいなくなったのに…なんでまた戦しなきゃいけないんだよ…なんでまた民を泣かせなきゃいけないんだよ!!」


怒りとも嘆きともつかない叫びが広い店内に響き、他の卓で食事をしていた将達も一斉に動きを止めた


…交渉は決裂、か…


「北郷、言いたい事はそれだけか?…ならば失礼させてもらう、…三人共、行くぞ…」


「…は」


「え…あにぃ?」


「お、おい!副将!!」


「あ、おい!待て!!」


「…北郷、次に会う時は敵だ…覚悟しておけ」


「………」


北郷の睨むような視線を感じながら俺達はその場を後にした…


………


……



「…ちょ、ちょっと、あにぃ!」


しばらく馬を走らせていると突然鳳濡から声がかかった


「…なんだ?」


「えと…あの…」


「…なんだ、じゃねぇよ、…副将、少し落ち着けって…あんた、自分が今どんな顔してるか知ってっか?二人の嬢ちゃんが怯えてんぜ?」


「王塁までどうした?俺は何も変わらん…」 


「はっ!気付いてないときてやがる、自分の目尻、触ってみやがれっての」


言われた通りに手を目許の辺りに持っていくと自分の目尻が吊り上がっているのが分かる


…何故この様な表情になっているのか


「北郷に言われたのが気に障ったんだろうが少し落ち着けって、大事な妹分二人を怯えさせてたってなんともならねぇだろ?」


「…別に俺は…」


「久しぶりだよ、そんなに不安定なあんた見んの、なんであいつに苛立ってるんだよ?」


…苛立ち?俺が…?


「…そうか、俺は苛立っていたか…そうか…ふ、ふふ…ふはは…」


「お、おい?副将?」


「あ、あにぃ?」


 


「…会った瞬間に感じた違和感はそれか…!そうか…俺はあいつが嫌いなんだな…」


…久しぶりに楽しくて仕方ない、そうか、これが宿敵に出会うという事か…


「王塁…感謝する、ようやくこの感情が理解できた、俺はあいつが『嫌い』だ」 

「…あ、あぁ、役に立ったなら良いけどよ…」


「…鳳濡、あいつは俺の獲物らしい…すまないが譲ってもらう…」


「え、あ、うん…」


(おいおい…呉懿の嬢ちゃんが引き下がっちまったぞ!?)


(…鳳濡があんな態度を取るのは珍しいですね)


(副将、だいぶ危ねぇ雰囲気出てるしな…)


「…王塁、冷苞将軍、二人とも急ぐぞ、今日のうちには白帝城には戻りたい、馬の疲労を考慮して最大限出せる速度で駆けさせるぞ」


「げっ!俺まだ酔いが…」


「行くぞ…!!」


「あ、あにぃ!待ってよ〜!!麟濡!急ぐよ!!って先行かないでよ〜!!」


「…鳳濡が遅いのよ」


「…うぇ…気持ち悪ぅ…ちくしょ〜…吐くときは副将の背中で…」


「…ついて来れるか?」


「け…けっこう無理…」


「…冷苞将軍、先行するぞ、…鳳濡、その馬鹿について戻ってくれ」


「はい」


「は〜い」


…さて、張任様にはどう報告すべきか、北郷とその軍師にはこちらの実情は知れた、後はあの二人がどれほどこの情報を拡げるかだろう、劉備陣営には伝わるだろうが魏からの援軍にこの情報が伝わるかは微妙だな…


上手く伝われば劉備側に不信感を持つ者も出るはず、過去の戦で劉備陣営との間にしこりがある者も大勢いるはず、この話が広まれば関係に皹を入れる位はできるだろう


…待っていろ劉備、貴様を地獄に送るのは我等『偽善斬党』だ…

  あとがき†無双


「はい!という訳で遅ればせながら『新・恋姫†無双〜貴方との日々をもう一度〜第69話 劉璋を知る者』をお送りします!!」


「…ノリとテンションでごまかしたのは分かってるから早く理由を言いなさい、早く言わなきゃ…狩るわよ…?」


「すいませんでしたっ!!最近作者はマジでスランプしたっ!!だから俺を狩らないでっ!!狩るなら作者でお願いしますっ!!」


「ふん、狩られたくなかったらさっさと私の活躍を増やすべきね」


「この場を利用して恐喝まがいですかっ!?」


「…一刀、貴方は私を何だと思っているの、恐喝まがいなんて失礼ね!まがいではなく本物の恐喝よ!!」


「なお悪いですよっ!?何故強気になりましたかっ!?」


「ふっ!!それが曹孟徳品質!!品質と書いてクオリティと読む位凄いわよ!!」


「全っ然、分かんねぇよ!!誰か分かる人急募だよ!!」


「うっさいわねぇ、そんな細かい話でごちゃごちゃ言うとハゲるわよ?」


「細かくねぇし!!てか俺がハゲたら間違いなく華琳のせいだからなっ!?」


「あぁもう!ハゲる一刀の話はこれくらいにして今回のあとがきは?」


「…俺ハゲる前提に決まった…?嫌だけど…主人公ハゲとかキツイよ…」


「そうなったら降格確実ね、そうなったら私が主人公でこの世のかわいい女の子すべてを集めたハーレムを…」


「華琳さん華琳さん、貴女恋姫時代にキャラ戻ってますよ…」


「初心を忘れない私の殊勝な心構え、これは私を主人公にすべきじゃない?」


「恋姫の貴女はレ○キャラですけどね」


「男が主人公の時代は古い!新しいジャンルとして女の子が主人公の女の子ハーレムゲーを推薦するわ!!」


「…本気で壊れてらっしゃいますね」


「大丈夫よ、ハゲた一刀も背景のモブとして使ってあげるから」


「ハゲる前提で進めんで下さい、…さ、そろそろ真面目に働くよ、ここの部屋から降格されたらホントに行き場がなくなるからね」


「仕方ないわね、今日は何するの?」


「今回は少しストーリーに俺達二人で触れて見ろってさ」


「ストーリーに?」


「今回かなり本編から外れる発言が有ったからね、そこら辺のフォローをしろって事だよ」


「あの毒殺ストーリーは多分呉ルートから引っ張ってきたネタよね」


「雪蓮は確かに毒矢でやられたね」


「私の場合は一般兵の暴走だったけど桃香の場合もそうなのかしら?」


「兵士、もしくは民、それ以外…劉璋さんを殺したのはいったい誰なのか、物語のキーはその辺りになるのかな」


「私はこの戦に手を貸すのかしら?」


「え?そりゃ貸すでしょ、今華琳は桃香と同盟関係だろ?」


「えぇ〜、だって〜なんか話的に桃香悪役じゃない、私悪役側嫌〜…」


「悪役側てあんた…」


「だってどう考えてもヒールじゃ…はっ!まさかこれは私の新しいキャラ立ての為のお膳立て!?じゃあ悪の女幹部キャラでも立てとく!?本編で一回やった『やあっておしまい!!』で有名なあのキャラとか、良くない?」


「…いや、良くないと聞かれましても…すっごくまずいとしか言えません」


「えぇ〜…けっこうイケると思うんだけどな〜」


「いかないで下さい!…と、ここで作者からのお知らせ、作者クライト、現在本気でスランプ中、さらにはリアル多忙の為またしばらく更新が遅れそうです、更新楽しみにしてくれてる方は本当に申し訳ありませんがよろしくお願いします」


「ごめんなさい、でも更新やめる気はサラサラないみたいだからそこは心配しないで」


「それでは次回『新・恋姫†無双〜貴方との日々をもう一度〜第70話 華琳、決断す』お楽しみに!」


「それじゃ、また次のあとがきで会いましょ」


  あとがき†無双 終

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