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60話 魏、華琳が消えて混乱し、秋蘭、三人をなだめんとするの事

 


…刻は遡り、魏からの援軍が決定された夜、季衣と流琉は明日に備え装備等の再確認をしていた


「…ぐぅ…」


…若干一名は現実と夢の狭間を行き来して殆ど用意が進んでいなかったが…


「季衣、後は私がやるから先に寝てなよ」


「…うぅ〜…ごめ〜ん…ふぁぁぁ…」


のそのそとベッドに戻る季衣を尻目に黙々と道具を揃える流琉


……


…そのままどれくらい経っただろうか、殆ど準備が終わり、後は明日補給物資を揃えるのに併せて用意すれば…


コンコン


「少し良いかしら?」


「か、華琳様!?ど、どうぞ!!」


カチャ


「あら?季衣は眠ってしまったのね、ま、それならそれで都合が良いわ、流琉、少し頼まれてくれるかしら?」


「え?あ、はい、どうぞ」


「頼みというのはね…」


………


……



秋蘭SIDE


昨夜決まった霞、季衣、流琉の三人の進発を控え、城内は現在慌ただしく動き回っている


そんな中私は華琳様の閨に向け歩を進める


入り口の兵に声を掛ければ昨夜は閨に稟が呼ばれていたらしい

夜中の内に辞去したらしいが華琳様にしては珍しい、明日の兵の進発に備え休むと思っていたが…


「失礼します、華琳様…こ、これは…!?」


部屋に入って気が付いたのはほんのわずかだが漂う血の匂い


「華琳様っ!!」


 


慌てて華琳様の寝台の天幕を開く


…そこには


血まみれで横たわる



 


「…稟か」


…鼻血軍師がいた


寝台の中でどんな睦言を囁かれたのか、かけられた布団を赤く染め、微笑んでいるのが逆に恐ろしい


「一応血止めの手当ては…ん?」


寝台の脇に備え付けられた小机に何かおいてある


「これは『めも』か?」


どうやら私宛てらしい、流石は華琳様、最初にくるであろう人物も予想済みという訳だ


    秋蘭へ

私は蜀に向かう事に決めたわ、蜀の窮境に後ろから指示をして黙って待っているのは魏の王としてあるまじき行いよ、曹孟徳の名に傷が付く、そんな真似は絶対にできないわ

魏の方は貴女と桂花に任せるから私を追わせるのならいくらか刻をおいて春蘭と稟に追わせなさい

桂花にはきちんと留守番ができたらご褒美をあげると伝えて

信頼しているわよ、秋蘭


「おやおや…」


困った様に眉根を寄せるが口の端が笑みの形に歪むのを抑えられない


華琳様に覇気が戻った、北郷が消えてからというもの何処か積極的に動くのを避けていた華琳様に欠けていた何かが戻ったのだ


ならば自分も戻るしかあるまい、曹孟徳に最も長く仕えし臣たる自分が今まで行ってきた事、即ち『華琳様が望むまま、華琳様の願いを叶えなければならぬ』という事


華琳様の傍でお護りできないのは正直不安ではあるが華琳様は言った、私と桂花に魏を任せると、姉者と稟がいなくとも二人で問題ないでしょう?と


「…ふふっ、ならば私は己の全力を奮うとしよう、…稟、起きてくれ」


「…ふぁ?か、華琳さまぁ…」


「寝ぼけないでくれ、私だ、秋蘭だ」


「ふぇ?しゅ!秋蘭様!!…し、失礼しました!!」


わたわたとはだけた服を整えなんとか格好だけは繕う稟


「ふふっ、昨夜は会議のすぐ後に華琳様から呼ばれたのか?」


「あ、えと、その…は、はい…」


「どれくらい一緒に?」


「さ、さぁ…なにぶん緊張してしまって意識があまり…」


「稟、上手く使われたようだぞ」 


「何ですか?…手紙、ですか」


「華琳様の『めも』置き手紙だ」


「……………!…華琳様を追わなくてよろしいのですか?まだ今なら間に合うのでは?」


「華琳様が決めた事なら私はそれに従うまでさ、稟も付き合ってくれ、私は少しの間、桂花を華琳様の寝所に近寄らせないようにする、その間姉者の手綱を握ってくれ」


「わ、私が春蘭様をですか!?」


「華琳様直々のご命令だ、華琳様は私以外にもきちんと姉者の手綱を握れる人間を増やしたいのだろう」


「し、しかし…」


「桂花はああ見えて姉者の扱いは心得ている、稟も慣れてくれれば私も楽になるしな」


「…はぁ、わかりました、やるだけやってみます」


 


「ふふっ、稟、期待しているぞ」


………


……



さてと、稟はもう味方に付けた、後は桂花をどうにかするとしよう


とは言っても彼女の事だ、華琳様からの頼みならばどんなに嫌でも最後は首を縦に振るだろう、華琳様直々となれば猶の事だ


「桂花、少し良いか?」


「秋蘭?何よ、貴女進発隊の糧食の準備だったんじゃないの?」


「その件で確認したい事があって華琳様の所に行ったのだが、このような物が有ってな」


あの『めも』を見せる


「何よこれ?……………!ちょっ!これ!!何悠長にこんな所いるのよ!?早く止めにいきなさいよ!!」


 


慌てて出て行こうとする桂花


「待て桂花、華琳様が自ら考えた結果だ」


「だからって華琳様を自ら行かせるなんてできる訳ないでしょう!?ただでさえ向こうにはあの汚らわしい全身精液男がいるのよ!?」


桂花の心配はそっちらしい


「心配しなくとも姉者と稟も後発としてついていく、華琳様の身に何かあったら姉者に北郷を真っ二つにするよう頼んでおけば良い」


「秋蘭…貴女、それで良いの?」


「私にとっても最優先にすべきなのは華琳様だ、華琳様に何かあったら北郷にはそれ相応の責は負ってもらうさ」


チャッと音を立て背中から愛弓『餓狼爪』を抜き放つとつるの張りを確認する秋蘭


「…秋蘭、私時々あんたが怖くなるわ…」


「ふっ、私も華琳様と同じく北郷の事は信頼してるからな、信頼を裏切られたならそれ相応の罰を与えるのが魏の流儀だろう?」


「ま、あれがどうなろうと関係ないわ、華琳様がご無事ならあの精液男が何度死のうが関係ないもの」


「ふふっ、いざとなれば北郷は自分の身より華琳様を優先するだろうさ、それに姉者もいるのだ、華琳様の身に何かあるなど有り得ん、向こうは任せて我々は華琳様が戻るまで魏を守るとしよう」


「分かってるわよ、華琳様がいない間に国が傾いたりしたら生きてあわせる顔なんかないわ」


「うむ、先ずは兵の不足人員の確保からだ、警備隊から本隊へ戻る兵達では数が足りない」

 


「周辺の村から…今はちょうど農繁期…人手を奪って税収が減ったりしたら本末転倒、か…」


秋蘭と桂花はそのまま二人だけの会議へと発展していった


………


……



「うむぅ…華琳様と秋蘭は何処に行ったのだ?もう季衣と流琉が出てしまうというのに…」


「春蘭様、仕方ありませんし兵達に向け何かお言葉の方をお願いします」


「そうだな、…聞けっ!魏の精兵達よ!!」


城壁の上から大音量が響き渡り、並び立つ兵一人一人が表情を引き締める


「曹孟徳に選ばれし勇士達よ!!今、蜀は我等魏の助けを必要としている!!時に憎み合い戦った者達、しかし今、我等ら互いに手を取り合い友誼を交わした、その友が我等の力を必要としているのだっ!!奮い立て!!鬨の声を上げろ!!友に仇為す敵を討ち、お前達が我等の友の助けとなるのだ!!」


「「「おぉぉぉ!!」」」


まさに鬨の声、戦場へと向かう兵を鼓舞する叫びが何処からともなくあがり続ける


完璧な演説に思わず稟も唸った


(しゅ、春蘭様の演説、完璧じゃないか!これなら手綱を握る、というのも結構簡単では…)


「最後に季衣と流琉にも声をかけてやりたかったが上にいては仕方ないか、さ、稟、見送ったら我等も中に戻るぞ」


「あ、はい、分かりました春蘭様」


城壁の壁によじ登っていた春蘭が何かを持って下りてくる


「何を持ってらっしゃるのですか?」


 


竹簡の様だが…


「ん?あぁ、秋蘭がさっき『私が戻らない様ならこれを足元にでもおいて読んでおいてくれ』と言っていたのでな」


「えっ!?ち、ちょっとすみません!!」


…先程春蘭から発せられた内容が丁寧に抑揚や声量の調節まで指示してある


…稟はちょっと自分には無理だと思った…


………


……



華琳SIDE


「良いんですか華琳様ぁ、春蘭様、華琳様がいないのまだ気付いてないみたいですよぉ?」


「私達が進発してから伝えるべきと判断したのでしょう、心配しなくとも大丈夫よ」


「…兄様怒るかなぁ…」 


流琉はもう半ば憂鬱だ


「大丈夫だよ流琉〜♪兄ちゃんだって話せば分かってくれるよ〜」


「心配しなくとも私が一刀に文句を言わせないわ、だから安心なさい流琉」


…華琳の説得の時点で北郷一刀の優位性が失われたのは想像に難くない、むしろ何故か知らないが一刀が逆に説教を受ける可能性まで生まれてしまったのは不幸と言うしかない


…これから起こるであろう北郷一刀の苦難を想像し流琉はまた一つ大きな溜め息をついた



「…」


「……」


「………」


「…………あの」


「……………何よ?」


「…えと、今ここ後書きで…」


「えぇ、それで?」


「………」


「まさかあの馬鹿作者、私がこんなにも機嫌が悪いというのにまた後書きで何かやらすつもりなの…?」


「てかなんで機嫌悪いんだよ?今回登場シーンあったじゃないか」


「はぁ!?あれだけで私の活躍が終わりなんて納得できる訳ないでしょ!!この作者本気なの!?ヒロインを蔑ろにし過ぎなのよ!!」


「まぁまぁ、作者も本当はそんなつもりはないだろうし、せっかく活躍の場所があるんだから頑張ろうよ、な?」


「仕方ないわね、今回はいったい何をすれば良いのよ?」


「今回は必殺技魏編と題して魏の将、及び魏ルートでのみ関わる人達が使える必殺技を紹介するみたいだ」


「ま、読者には作者の妄想垂れ流しに少し付き合ってもらうわ」


………


……



魏の双狼


魏の忠臣足る二人は華琳を守る為ならばどんな強大な相手にも屈する事など有り得はしない


春蘭の部隊の攻撃及び秋蘭の部隊の防御が最高値に、敵一般兵の一部が混乱状態に


「我は魏武の大剣っ!!」


「同じく魏武の閃光!!」


「「我らが双狼の餌食となるが良い!!」」


……


「春蘭と秋蘭の必殺技ね、あの二人が同時に前線に出る機会なんてそうそう有り得ないけど、多分あれば魏のまさに最強の二人よ」


「ちなみに何故双狼というのかってのは二人の武器春蘭の『七星餓狼』と秋蘭の『餓狼爪』から取っているからだってさ」


「ま、無い知恵搾った割りには良いんじゃない?」


「…お褒めの言葉、いろんな意味で痛み入るね」


……


曹の牙門旗倒れるを知らず


魏の旗を守る親衛隊の二人は迫る万人の敵すら弾き返す


華琳の前に配置された状態のみ防御が最大値に


「曹魏の旗、絶対に汚させません!!」


「うおぉ!!華琳様に近付くなぁぁぁあ!!」


……


「春蘭と秋蘭の必殺技の小規模版、といった所かしら?」


「設定上季衣と流琉は春蘭秋蘭に憧れてるって事になってるからね」


「あら?ならなんで季衣は攻撃上昇じゃないのかしら?」


「季衣は春蘭の側にいるイメージが強いけど本来の任務は親衛隊、華琳の守りを重視するのは当然なんだ、それにこれはアニメ版のシーンを少し借りてるんだ」


「アニメの方にそんなシーンが有ったの?」


「アニメでは流琉の伝手で季衣が親衛隊入りするんだけど過去に少しばかり因縁のあった霞が敵対している状態で官軍を挑発するんだ、それを季衣が春蘭から言われた言い付け通り華琳の護衛に徹するというシーンがあったんだ」


「あら、春蘭もやるときはやるのね」


「ま、その後自分が飛び出そうとして秋蘭に抑えられてるってオチを付けてたけどね」


「………褒めた私が馬鹿だったわ」


……


策士、策に溺れさせる


臨機応変に動く三軍師の策に掛かれば抜ける事はそうはできない


敵全てを混乱状態に、必要に応じて伏兵や罠が発動して敵兵数が減少


「鶴翼の陣展開のまま一度交戦します、奇襲の準備は整いましたか?桂花様」


「誰に聞いてるのよ?あんたは自分の指揮に集中してなさい」


「それではこちらはお二人にお任せしますね〜、風のお仕事は一眠りしてからに…」


「「寝るなっ!!」」


……


「敵の攻撃を受けるのが得意な稟、攻めの手だての立案や奇襲の得意な桂花、敵の動きに併せて臨機応変な策を展開する風、流石は魏の三軍師達」


「あの三人に任せれば敵は濁流に飲み込まれる様なものよね」


「後は三人の連携だけど稟と桂花の喧嘩を風が仲裁するような形ができれば心配はいらないかな」


「さて、今回はこれくらいにさせてもらうわ、また暇を見付けて作者は何か出してくるから、その時に会いましょ」


「それではこれにて〜」

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