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5−2 乙女達の憂鬱2

今回は霞と三人娘のストーリーです

 


哀しみの一人酒



「…あれは負けたなぁ〜、華琳むっちゃカワエェ服着とったなぁ」


…あれはズルイ、あんな服華琳にあげて…


「ウチもあれくらい手ぇ混んだもん欲しかったなぁ〜…」


…無理か、ウチだったら一刀が服作った聞いたら、笑ってしまって雰囲気とかぶち壊してまうしなぁ…


むしろウチにはこっち、一刀が似合うと選んでくれたウチの髪より少し薄い紫の髪飾り


それを握りながら一人呟く


「一刀、ウチ…一刀居なくなって弱なってしもうたみたいや…」


手に持っていた盃を煽る


「ん?この酒少ししょっぱいな」…これは一刀が作った『焼酎』だからしょっぱいわけない…


「あぁ…なんや…」


 


頬を伝う感触に気付く


「…ホンマ…ウチ弱なったわ…」


一刀との思い出の川のほとりでウチは一人盃を重ねる、ウチが言ったわがままに付き合い、川に沢山の提灯を浮かべ『雰囲気作り』をしてくれた彼


わざわざ料理等も運んで来てウチが好きな酒も沢山用意してくれて…


そしてここで…


「…一刀ぉ…う…ぅ…」


次から次へと涙が溢れた…酒なんか呑む気にもなれなかった、今日の模擬戦はまずかったらしい、最近はやっと落ち着いたというのに今日はふらりとこの森に来てしまったのだ


「…ウチ…待っとんで?…一刀が帰って来てくれんの…ずっと…ずぅっとや…だから…早く」


 


霞は怠惰な眠気に任せ、瞼を閉じた


………


……



三人娘の夢うつつ


城の廊下に響き渡る喧騒、女が三人寄れば姦しいとはこのことだろう


「凪ちゃんも真桜ちゃんも飲み過ぎなの〜」


二人を引きずりながら一人文句を言う沙和、ぷぅっと頬膨らませ、不満たらたらだ


そしてそんな沙和は酔っ払い二人を引きずって歩く、三人の中で1番戦には向いてないとは言えやはりこの時代の乙女という事か


「ウッ、ヒグッ…!た…たいちょ〜…!!」


凪は呑むと泣き上戸になり


「凪〜元気だしぃ〜…ウヒャヒャヒャ!!」


逆に真桜は笑い上戸になる


「二人して暴れないで欲しいの!!」


 


引きずる身にもなって欲しい…


「…沙和、ごめん、外に行きたい」


突如いつもの様子に戻った凪が言った


「どしたん凪〜?ウヒャヒャヒャ!!」


「凪ちゃんど〜したの〜?」


「…隊長に会いたい…」


一瞬空気が固まる


「隊長との思い出の場所三人で歩きたい…」


「凪ちゃん街を歩きたいの〜?」


コクリと頷く凪


「良いんか、凪?多分今エライきっついで?」


精神的に今隊長との思い出巡りはキツイと思う…特に凪は隊長がいなくなって一番ふさぎ込んでいた


三人が五湖との国境警備を志願したのはそういう理由だった


街は隊長との思い出が多過ぎる、これが三人一致の意見だった、三人は揃って国境警備に着き、他国との交流の際は魏の将軍として戻って来る生活をしていた


だが


「…隊長との思い出から今まで目を背けたのは…隊長が思い出になってしまいそうで…怖かったから…でも今日のでわかった…あの人は思い出になんかならない…あの人はみんなの傍にいるから…思い出なんかになりっこない…だから…」


搾り出す様な声音、凪自身まだ踏ん切りは着いていないのかも知れない


「凪…」


「凪ちゃん…」


「真桜…沙和…行こう…街へ…」


………


……



「…久しぶりやなぁ、この景色…」


「ほんとなの〜、なんだか懐かしいの〜」


「ここは…」


 


凪が近くの店で目を止める


「うちらよく行っとった茶屋やな」


「よくここでお茶してて隊長に怒られたの〜」


「それは二人がサボるからだと思う…」


「とか何とか言うて、結局凪も付き合うやん」


いつものニヒヒ笑いを浮かべながら真桜がツッコむ


「そ、それは!二人が無理矢理…」


「でもほんと懐かしいの〜…」


三人は口を閉じ少しの間眺めた、…なんだかんだ言っても三人でここに居たのは事実で隊長が三人を探しに来るのも事実なのだ


「三人でそこに座っていると隊長が来て…」


「ホンマに間ぁ悪いお人やで、うちらがサボるか休むかしてる時しかこぉへんねん」


 


「…ほんとなの〜、真面目にお仕事してる時には会わないの〜」ぷぅっと頬を膨らませる沙和


「でも、隊長を連れて仕事して、疲れて休もなんて言うと文句言いつつ必ず休ましてくれた…」


「三人の誰かとご飯行く時は必ず他二人も誘ってたの…三人揃ったら奢らされるのわかってるのに…」


「…あの人は私達を特別扱いしなかった…それが時々不満だったけどそれ以上にそんな優しい隊長が好きだった…」


三人の表情がほころぶ…


次の瞬間真桜がわざとらしく溜息をつく


「…はあ〜ぁ、このままやったらうちら結婚できひんで一生終わるで…」


「…なんでなの?」 


沙和が首を傾げる


凪は結婚という言葉に真っ赤になって硬直中


「考えてもみぃ、隊長程うちら惚れられる男、これから現れる思うか?」


沙和が首を横に振る


「なら隊長戻って来んの待つしかないやん♪」


凪も硬直から回復し二人にそう宣言する


三人で顔を見合わせ


誰からともなく笑い出す


「そうだ…待てばいいんだ!…」


「あはっ…そう…なの!…早く帰って来ないとおばさんなの〜!!」


…そうだ、諦めるんじゃなくて待てばいい


…そう思ったら三人の気持ちは少し軽くなった気がした…

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