51話 白帝城の宴
今回は短い為即日更新となりました
「今日の戦において皆には本当に良く働いて貰った!!皆の協力無くして此度の快勝有り得なんだ!!私からも皆に礼を言わせてくれ!!」
呼応するように歓声が上がる
「さぁ!!今日は無礼講だ!!好きに騒ぐといい!!」
喧騒に包まれる中庭を見下ろし城へと戻る、もとより無礼講とは言え上司が側にいては騒ぎづらいだろう
向かう先は王座の間、あそこで呑んでいた呉班はもとより将軍職の者達は全て集めてある
彼らには悪いが今後の事を考えれば『あれ』を長い間放置するのは好ましくない、早々に手を打たねばなるまい
扉を開けば不動の姿勢で立つ四人の姿…四人?
「鳳濡、凰騎と王累の奴はどうした?」
「知らないっ!!兄ぃなんてどうだって良いもん!!」
ぷんすか頭から煙を上げる呉懿
「…麟濡、あやつらの喧嘩の原因は?」
「どうやら蘭副将軍が鳳濡が負けそうになったのを見るに見兼ねて手を出したようです」
「麟濡っ!!僕負けてないよっ!!鳳蓮様に嘘を教えないでよ!!」
「嘘をついてるのは鳳濡、貴女の方でしょう、あのまま続いたら貴女が負けていたのは周りの兵達が見ていたわ」
「うぅ〜…そんな事ないもん…」
縮こまる鳳濡に思わず苦笑がこぼれる
「仕方なかろう、万全ならばまだしも錦馬超の一撃を貰った後ではな、…なるほど、それで横槍を入れられたのにのが気に喰わなかったと…うむ、喧嘩の原因はわかった、それで?あやつは今何処におるのだ?」
「おおかた鳳濡に大嫌いと言われて部屋で酒を呑んでふて寝でもしとるのでしょう」
「酒をかっ喰らっておったのはお主であろう、呉班殿、少しは控えぬと身体を悪くするぞ」
「なぁに酒は呑んでも呑まれた事などありませぬ!それに今日位は構わんでしょう?せっかく墓前に良い報告が出来るのですから、酒でも酌み交わしながらしばらくしておらなんだ近況を伝えておきたいのです」
「わかっておる、私の話は明日からの話だ」
「肝に銘じて置きますわい、…で、戦勝祝いに湧く今宵に儂らを集めて如何なさったのじゃ?」
「なぁに、大した事はない、捕獲した敵将の処遇についてお主らにも見せておかないといけないのでな」
「…捕獲した将とは?」
「そういえば貴方は知らなかったのね、雷銅、相手は裏切り者の魏延よ」
「ハッ!申し訳ありません冷苞様!!」
「…別に責めている訳じゃない、気にしなくて良い」
「ハッ!ありがとうございますっ!!」
周りはそんな二人に苦笑しっぱなしだ
「話を戻すぞ、…今あやつを地下室で縛り上げてある、上手くいけば我らの手駒として使えるかも知れん」
「…いくら裏切った将とは言え、再度こちらに寝返るでしょうか?」
「だからこれから面白い物を…」
「遅れて申し訳ありません…」
部屋に呉蘭が入ってきた
「凰騎、お主何をしておった?」
「申し訳ありません父上、少々酒が過ぎた様で眠ってしまった様です」
「ほぉれ!張任殿、儂の言った通りではありませぬか!」
「申し訳ありません張任様、重要な会議に遅れた罪如何なる罰も受ける所存…」
スッと首を垂れる呉蘭
「馬鹿を申すな、この程度処罰に値せん、顔を上げろ、凰騎」
「はっ、ありがとうございます」
「して凰騎、お主王累の居所を知らんか?」
「王累ならば所用を言い渡してありますので今は城内にはおりません」
「所用、ねぇ…」
王累と彼の本来の仕事を知っているのは現在は張任だけ、王であった劉璋も知ってはいたが既に他界した身、今となっては張任と呉蘭の二人だけが共有する秘密だ
目配せした張任に対し頷きを返す呉蘭の様子に全てを察した張任はこの話題を打ち切りにした
「ならば仕方ない、魏延の処遇についての話だったのだが王累には後から伝えておけ」
「はっ」
「よし、では地下へ向かう、魏延の恥辱に染まった表情、愉しませてもらうとしよう」
………
……
…
カツン、カツンと硬い床を歩く様な音が響く…何故か視界がぼやける、ここはいったい何処か…
身体を捩った瞬間両腕に引き攣る様な痛みが走り、
その痛みが意識を急速に覚醒させた
「おや、ちょうど眠り姫がお目覚めのようだ」
皮肉げな笑みを浮かべ降りてくるのは…
「張任…!!」
ぎりぎりと音を立てる荒縄、今にも千切れてしまいそうだ
「張任様、お下がり下さい…」
雷銅と呉蘭が前に出る、いざという時はこのまま殺す事も覚悟の上、しかし…
「二人共下がっておれ」
「し、しかし…」
「下がっておれ」
「は…」
そのまま目の前まで歩いていく
ぎりっ、ぎりっと音を立てる縄
「…よほど私が憎いと見える、私はそれほどに嫌われる様な真似をしたかな?」
「武人の一対一に横槍を入れさせたのはどうせ貴様の指示だろうっ!!」
「待て!魏延!それは…」
「凰騎、少し黙っておれ、こやつは今は私に問うたのだ、のぅ?魏延?」
「………」
「一対一の戦には手出し無用、確かに武人ならば最低限の礼儀といえる」
目の前に立った張任は厳かに告げた
「…しかし、戦の場においてそのような礼節が何の役に立つと言うのだ?互いが主張する正義が食い違った時点でお主にも私にも正義はない、ならば正々堂々等という戯れ事間違っても口からは零れんとは思わんか?」
「違うっ!!戦において礼節を失った者はたやすく餓鬼道へと身を堕とす!!」
「確かに武人としては悪と思われても仕方のない事、しかしな魏延、大切な家族が殺されかかっているのを正々堂々の一対一だからと黙って見守る事が本当に正しいか?」
「くっ…」
「それが本当に正義なら私は喜んで悪に走ろう、さ、応えが聞けて満足か魏延?ならば次は私の用件を済まさせてもらうぞ?」
「…私を拷問した所で何も出ないぞ…」
「ふっ…心配するな拷問なんて野蛮な真似はせんよ、第一拷問では吐く吐かないとお主の意志次第ではないか、私は『お主に自由意志を持たせるつもり等ない』のだからな」
紅い月が笑った…
背筋が凍りつく様な悪寒に魏延は震えた
「な、何を言って…」
「魏延、テメェは今日から私の駒だ、…―――縛」
「っ…!?」
指先一本動かせない強い拘束感、そして…
「―――操!」
張任の放った言葉が魏延を暗い闇へと引き摺り込む
「桃…ぁ…さ…」
大切な主の名を呼ぶ声が虚しく地下に響いた…
ここでお詫びとお知らせ
『新・恋姫†無双〜貴方との日々をもう一度〜』をご愛読頂いてありがとうございます
さて今回突然のお詫びという事で何事かとお思いでしょうがそれ程たいした事ではありません
実は最近ある方から、
『前半部の台詞調になっている部分を何とかすべきではないか、直せば多分読者増えるよ』
といった内容のメッセージがありまして自分としましてもそのうち何とかしないといけないなと思っていましたのでこの機会に修正しようか、という事になりました
なのでまだまだ物語の前半の前半なのですが修正の為しばらく更新が停滞するかも知れない、という事をご愛読頂いている皆さんへお伝えする次第です
しかし!作者クライト、転んでもタダでは転びません!前半部の気に入らない部分は加筆修正する予定なので台詞調だったはずの部分を読み返せば『何か内容変わってね?』みたいな部分があるかもです
…最後に、読んで頂いている皆さんの為、なるべく早期に修正を終わらせ、蜀編の早期更新をここに約束する次第です