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41話 一刀、舞台に立つの事

話はかなり遡って3時間程前の蜀と魏の一行…




…北郷一刀の周りでは今すぐにでも戦争が始まりそうな程にピリピリとした空気が流れていた


「北郷殿、どうかなさいましたか?」


…昨日の一件を知らない愛紗は自分の周りに流れる殺気に気付いていないのか俺の右隣に馬を並べて歩いている


愛紗が楽しそうなのは嬉しいのだが背中に突き刺さる視線が痛い…


「いや、今どこら辺を歩いてるのかと思ってさ」


とりあえずごまかす


「今はだいたい荊州南郡当陽県のほぼ中程に差し掛かった辺りです」


「当陽県…(歴史上では何が有ったかな?)」


絶影に付けた腰袋から雑記帳を取り出す、これは何時何処でどんな戦が起こって、誰がどのように活躍したのかを詳細に書いた物だ、…えぇっと荊州南郡の当陽県、当陽県、っと


「愛紗、この先に長坂橋って橋ある?」


「えぇ、良くご存知ですね一刀殿」


…やっぱりか、とすれば有名な戦は『長坂の戦い』だな


曹操軍に追われた劉備軍を追いながら劉備の子、劉禅(阿斗)と奥さんである甘夫人を助けた趙雲


そしてそれ以上に有名なのが長坂橋に一人仁王立ちをして曹操軍を止めた張飛である


(でも今は追われてる訳でもないし、心配いらないよな)


一人安堵のため息を吐く


と、突然左腕がくいくいと引っ張られる


「…一刀…なにかくる…」


「え?何処?」


「正面です一刀殿、どうやら馬のようですが…」


…この時代の娘達は総じて目が良い、俺も一応視力は1.5とかなり自信が有るのだが全然わからん…


「…蒲公英?」


「確かに蒲公英だな、しかしあんなに慌ててどうしたのだ?」


…なんだか嫌な予感がする


「恋、一緒に来てくれ」


「……ん…」


絶影の速度を速めそれに赤兎がついてくる、他の娘達には悪いが先に行かせてもらおう


…やはり馬岱ちゃんだ、戦場で何度か会っているから間違いない


しかしその姿は全身砂埃まみれ、ここまでかなり急いで来た事が伺える


…間違いない、蜀で何か有った


「お〜い!!恋さ〜ん!!」


向こうもこっちに気付いてくれたらしい


向こうが停止したのに合わせ歩を緩める


「蒲公英…どうしたの…?…ボロボロ…」


「恋さん!!お姉様が!お姉様がっ!!」


「馬岱ちゃん、落ち着いて詳しい話を聞かせて」


「誰?あなた」


馬岱ちゃんがキョトンとしている、いきなり知らない人間が入ったおかげで毒気を抜かれたようだ


「俺は北郷一刀、魏の人間だ、何が有ったんだ?さっきのお姉様って確か馬超さんの事だろう?」


「魏の人!?お願いっ!!すぐ魏から軍隊遣してよ!!」


馬岱ちゃんの様子から尋常ではない事態が起こったようだ


タイミング良く蜀の娘達や魏の護衛部隊が到着した


「誰か!急いで『赤筒』を上げてくれ!」


「ハッ!!」


赤筒とは簡単に言えば発煙筒である、煙りに赤い色を付けただけの物だがこの時代昼間ならば10Km先の黒煙すらわかるのである、赤い色がついていればそりゃ誰もが気付く


そして街の人間は気付いたら警備に伝え、警備から隣の街や村の詰め所に早馬を出す、そして他の詰め所に着いたら交代して別の早馬を向かわせる


最近は大抵の村や街に警備隊は配置されているらしくこの方法なら馬が途中で潰れる心配もない


「蒲公英ちゃん!」


「桃香様〜!!お姉様が…」

事情を説明する蒲公英


「う〜ん、これは一刻を争いますね〜、赤筒の連絡で多分華琳様の所に連絡が行くのが早くても四日程〜、華琳様なら事情を察して兵をすぐに差し向けてくれるでしょうから八日程で到着するでしょうから、その間に成都を目指すのが妥当かと〜」


「基本方針はね、でも今は…」


「はい〜、翠ちゃんを助けるのが先決ですね〜、絶影と赤兎なら先行出来ますけどどうしますか〜?」


「恋、着いてきてくれるか?」


「…恋、…一刀に着いてく…」


「ありがとう、よし!誰か馬岱ちゃんの介抱を、俺と恋は先行する!」


「ま、待って!私も行くよ!」


馬岱が手綱を引き馬を促す


「いや、駄目だ、君の馬、だいぶ疲れてるだろ?休ませないと」


「で、でも…」


「大丈夫、馬超さんは任せて、恋、道案内頼む」


「…ん…」


コクリと頷く恋の赤兎に着いていく


「…お姉様を…助けて」


「…任せて、ハッ!」


駆け出す赤兎馬に従い走る、恋の様子から馬岱ちゃんが来た方向に真っ直ぐで良いようだ


「恋、君は橋の手前で待機してて、橋を落とされたらマズイからね」


「…ん…任せて」


…見えてきた、あれが橋だ…向こうにいるのが…馬超さんと…あれが呉懿か?



「翠…左手…使ってない」


「何だって!?」


確かに左手がだらりと下がっている、まるで力が入ってない


「怪我してるのか!?」


「…わかんない」


「くっ!?絶影!行くぞ!」


坂を一気に駆け下る


一刀は橋を越え戦場へと立つのだった


………


……



馬超さんと会うのは統一戦以来だ、しかし向こうも覚えていてくれたらしい


「て、天の御遣い?それって魏の…」


「戦の後の宴以来だね、馬超さん、…と、今は挨拶なんかしてる場合じゃないね…」


こちらの様子を窺っている少女に視線を向ける


「…ここはおとなしく退いてくれないか!もうすぐ蜀の援軍がくる!これ以上留まっても君に好機は訪れない!」


「ふざけるな!私は刺し違えてでも…」


「…お前は…」


突然のつぶやきと共に苦々しい表情を浮かべる呉懿、独り言にしてはおかしい、誰かと話している?


「…私に恥を忍べと言うの!?…鳳蓮様が…わかった」


こちらに向き直る呉懿


「あなた名前、教えてくれる?」


「魏軍警備隊長の北郷、下の名前は真名みたいなものだから省かせてもらうよ」


「北郷…私は呉懿、字は子遠、次に会ったら助けた事、後悔させる…全軍撤退するよ!」


呉懿が先頭に立ち一斉に退却していく


…刃を交えるつもりで張り詰めていた警戒を解く


「馬超さん、大丈夫か?」


腕を怪我して全身に渡り切り傷を負ってはいるが大事はなさそうだ


「あ、あぁ…助かった、礼を言うよ」


「俺より馬岱ちゃんに言ってあげて、彼女が俺達を見付けたおかげなんだから」


橋向こうから恋と白い毛の馬が歩いてくる


「…翠、…大丈夫?」


「恋も助けに来てくれたのか…ありがとう」


「…ん♪」


「ブルルルルル…」


「迫雷も心配かけたな…」


「恋、この馬は?」


「…迫雷…翠の友達…向こう側で待ってた…」


「あたしの相棒なんだ」


右手で迫雷の首を撫でながら翠が答える


「左手大丈夫かい?」


「大丈夫…とは言えないかな、痺れて言う事聞かないんだ…」


上げようと力を入れてみたが反応がない


「ちょっとゴメン」


スッと馬超さんに近付き腕を取る


「えっ!?あ!?」


「動かないで」

…矢傷のような跡、毒の類いだろうが腕のみが痺れているのなら多分あまり強い毒ではないようだ


曲げ伸ばししてみる、筋肉自体は傷ついていないみたいだし毒が抜ければ普通に動くだろう


「大丈夫みたいだね、一応戻ってから医者に…馬超さん?」


「あ、あぅ…」


馬超さんの顔が真っ赤になってる、まさか毒が回ったのか!?


「馬超さん!ちょっと失礼するよ!!」


「うひぃっ!?」


ピタリと額に手を当てる、…少し熱っぽい!


「馬超さん!すぐ横になって!」


「ひゃあ!?」


横にして安静にさせて心拍の確認


かなり速い!!←胸に耳を当てています


「う…うわぁぁぁぁぁ!!」


ゴッ!!


「ぐげっ!?」


横になったままなのによくもと思う強烈な右フック、片手で槍を扱える人間のフックの破壊力は推して知るべしだ


その場で2〜3回スピンしながらの空中浮遊を楽しんだ後は重力という力に任せ地を激しくバウンドしながら吹っ飛んでいく


意識を失いかけた俺は最後に


「…げ、元気、みたいで…よ、良かった…」


と、呟いたのだった





追伸、気絶した俺をどうすれば良いかわからない恋がとりあえずみんなを連れてきてくれたおかげで一命は取り留めました


来てくれたみんなによると俺はお花畑がどうの、死んだばぁちゃんがどうのと呟いていたそうです…怖かったので聞かなかった事にしました…

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