35話 蜀、怨敵を打つ布石の事
ここは永安の首都、白帝城
南蛮との交易を担うべきこの城は今や蜀と南蛮の友好関係を阻害する壁と化していた
…そね理由は城を占拠している義民兵団、通称『偽善斬党』が近付く商人や蜀の外交官達を寄せ付けないのが原因である
蜀の粘り強い交渉にも一切首を縦には振らず沈黙を続ける白帝城周辺は劉備軍の心配の種であった
そして現在その城を統べるのは劉璋軍最強と呼ばれた女傑、張任である…
???SIDE
ここは張任の私室、この場にいるのは張任と魏延の所に現れた男がいた
「…首尾は?」
「予想通り魏延は首を縦には振りませんでした」
「ふっ、やはりか、劉備の帰還予定は?」
「後十日程です」「ふんっ、劉備め、魏に媚びを売りに行った報い、受けてもらおうぞ、先に兵を魏と成都の国境に向かわせろ、伝令の兵を通すな!」
「はっ、お任せを」
男は部下に指示を伝えに出て行った
「劉備…テメェの首、私がもらってやるよ…クケケケケケ…ケヘッヘッヘ…フゥァアハッハッハ!」
…
……
………
蜀SIDE
「…偽善斬党に動き、ですか?」
「あぁ、昨日の夜部屋に変な男来てさ、『馬騰殿を死なせた曹操に従う劉備を倒す為に手を貸せ』なんてさ、あったまきてぶっ飛ばしてやろうかと思ったら消えちまってさ〜」
「なんじゃ、翠、お主もか、あれは張任の遣いのようじゃな、あやつは劉璋の坊主を慕っておったからな、今だに桃香殿を怨んでおるのだろう…」
…あの男は私の部屋以外にも現れたのか
「えぇ〜、蒲公英のところには来なかったよ〜?」
「ふふ、蒲公英、お主未熟だからと無視されたのではないか?」
「あ〜、そりゃあるな〜」
「お姉様達酷い〜、それなら焔耶だって〜」
「おっ、そういえば焔耶の所には来なかったのか?」
「え?い、いや、私の所には…」
…今何で私は否定したのだろう?
「ほら〜、蒲公英だけじゃないもん」
「雛里、軍師としてはどう考えておる」
「あの…多分、今の私達の中での最大戦力であるお二人を引き抜きたかったんだと思います…」
「ふむ…なるほどの」
「どちらにしろ引き抜きに失敗したのですからすぐに動きがあると思います、幸い、城の周辺から兵を集めれば3万くらいは集められますから」
「偽善斬党ってどれくらいいるんだ?」
「えと、白帝城とその周辺には現在3千くらいの兵がいるはずです…」
「なんだあたしらのほう十倍もいるなら全然余裕じゃん!」
「お姉様計算出来たの?」
「なんだと!待て!蒲公英!!」
「待ったないよ〜♪」
ドタバタと走り回る二人を無視し桔梗は難しい顔をしている
「…妙じゃな…、鳳蓮の奴まさかその程度の戦力で我らを何とかできるなど思っておるまいに…何を考えておる…?」
「何か策があるのでしょうか…すぐ偵察の兵を白帝城周辺に放ちます」
「頼む、雛里、あやつは激情家じゃが戦にかけては劉璋軍では抜きん出ておった、策にしろ、武にしろな…底の知れん奴じゃ」
「桔梗さんも勝てないのですか?」
「わしと紫苑と焔耶の三人がかりで互角にやれるほどの剛の者よ、一対一でやれるのはうちでは恋…呂奉先ぐらいじゃ」
「「「………」」」
周りの空気が一挙に重くなった、今まで暴れていた翠や蒲公英まで固まる始末だ
「…武や策に長じる故に近衛の兵としては重宝されておったが兵を操る事はあまり得手としておらなかったしのう、兵が少ないのは奴には問題では無いのかも知れん…その時は内の軍師殿二人の出番じゃな」
二人の軍師を胸元に抱き寄せる桔梗
「はわわっ!?苦しいです〜!!」「あわわ〜!?」
「ハッハッハ♪ウブじゃのう♪」
ガヤガヤといつもの空気を取り戻した蜀の面々を他所に焔耶は一人物思いに耽るのだった…