34話 内憂外患、蜀を覆う暗雲の事
更新遅れまして申し訳ありません、この話から35〜36話までいったん蜀の本国でのお話となります
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「ふぅ…」
…執務室に篭るとどうにも肩が凝る、元々私は武将なのだから執務関係は向いていないのだ、しかし内の軍師二人はやれ治政がどうの、潅漑がどうのと、武専門の私に頭を要求してくる…
今回の魏への蜀の訪問の面子から外れてしまった私は今朱里と雛里から頼まれた政務に勤しんでいる
「…桃香様の為とはいえ私にまで政務を回す軍師殿にも困ったものだ、…これは私にはわからんぞ…」
…今日はもう遅い、わからない部分は明日にでも朱里か雛里に聞いて進めるしかあるまい、今日はもう休もう…
「魏延殿はいらっしゃるか?」
…こんな夜分に誰だ?声は聞き覚えのない男のものだが…
カチャ…
「…夜分遅く失礼」
入ってきたのはやはり見覚えのない男だった
「…誰だ、貴様…武将とは言えこんな夜遅くに女の部屋を訪ねてくるとは不審者と思って構わないのか?」
右手で鈍砕骨の柄を握る
「…我が主、張任様の遣いで参りました」
「何っ!?…張任殿だと!?…生きてらしたのか…」
「言伝を賜っております、『偽王劉備を斬る、今一度劉璋の御旗の下へと戻れ、魏と厳の忠義、私は高く評価している』との事です」
「張任殿はまだそのようなことを…!」
「…劉璋殿は劉備から逃れる途中病に伏し亡くなりました、劉備への復讐は至極当然かと」
「…張任殿に伝えろ、『私は今も昔も蜀の臣、しかし今の私が仕えるべきは劉備殿だ、我が王を害するならば全力を持って私があなたを倒す』、とな」
「賜りました、残念です」
スッと部屋を出ていく男、しかし急に振り返り
「一つ御忠告を…魏延殿は劉備殿を大切にしておられる様ですがあなた自身は他の蜀の者達に大切な仲間とみて頂けていますか?」
「何っ?」
鈍砕骨を持つ手に力が入る
「劉備殿はあなたをどう思っているのでしょう?伏竜鳳雛はあなたにこれだけの仕事を課してまるで嫌がらせではありませんか?厳顔殿や馬超殿はこれ程の量は無いはずですが?」
「な、何だと!?」
「良く考えてご覧なさい、あなたは仲間のつもりでも相手は同じようには見ていないかもしれないという事を…」
キィ…パタン…
「私が疎まれている…?…そんな事があるものか!」
男が去った後も魏延は眠れぬ夜を過ごした…