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32話 一刀と愛紗、の事

今回珍しく長いのでご注意を(笑)


……


………


「どわぁぁぁぁぁ!!」


「うひっ!?」


「おぉ!」


一刀の上げた奇声に涼華と風は驚きの声を上げた(と言っても風は居眠りをたたき起こされただけだが…)


「あ、兄上?大丈夫…ですか?」


「お兄さん、どうしたのですか?」


「え、あ、いや、…何でもない…」


涼華と風は一刀の様子がおかしいのを気遣い食事に連れ出したのだが、訳を聞いてもこの調子なので涼華は何とか元気になってもらおうとし、風は事情をわかっているのかさっきから居眠りをしては一刀が話してくれるのを待っている


「兄上…私では信用できませんか?」


涼華は涙目になりながら訴える…一刀に信用されていない事が彼女には涙が出てしまう程につらいものだった


そんな涼華の姿に慌てる一刀


「うわゎ!?すっ、涼華泣かないでくれよ!!」


「で、でも…兄上に…ヒック…信用してもらえてないのかと…思うと…ヒック…哀しくて…」


「ち、違うんだよ!!もう悩み自体は解決してるてゆ〜か、問題点が違うてゆ〜か…」


「お兄さん、その説明では涼華ちゃんまた泣いちゃいますよ〜」


「や、やっぱり私なんかには…」


「あぁ〜!?ごめん!!ホントにごめん!!説明する!今すぐするから!!」そして一刀は昼間の件を話した


「…ではお兄さんは愛紗ちゃんに武人相手には絶対に言ってはいけない一言を言ってしまったのですね」


ぐさっ!


「関羽殿は武人の鑑と言われる程に武人としての礼節にこだわる人物だと聞き及んでおりました、その相手にかわいいとは…かなりまずいのでは…」


ぐさぐさっ!!



「おいおい兄ちゃん、少しは言葉選べってんだ、相手からしたら最低の侮辱だぞ、兄ちゃんよ〜」


「ほ、宝慧まで…」


ぐさぐさぐさっ!!


「ですがお兄さん、やってしまった事がわかっているなら自分がすべき事もわかっているのでは?」「わ、わかってる…でも…さっき俺が謝った時、愛紗、すごく哀しそうな顔してたんだ…その顔みたらただ謝るだけじゃ許してもらえないんじゃないかって…」


「それで兄上はお悩みだったのですね」


「…うん、何か良い考えないかな、風」


風はじっと目をつぶり深く考え込みながら


「ぐぅ〜」


「寝るな!!」


「おぉ!…お兄さんの悩みが思ったより複雑なので少し深く考え込み過ぎたようです」


「で、風先生、回答は?」


「うーん、お兄さん、早く帰った方がよろしいかと、風にはお兄さんを待ってる愛紗ちゃんが目に浮かびます」


「は?えと、それは彼女が俺を捜してるって事?」


「まぁ平たく言えばそうですね〜」「兄上、行ってあげて下さい」


「愛紗が待ってる…わかった!二人共、すまん!これで何か喰ってくれ!」


華琳からの小遣い袋から何枚か取り出し机に置いてく


そのまま脱兎の如く走り出す一刀


「行ってしまいましたね〜、おや、これは風達にどれだけ食べて帰って来いと言うのでしょうね〜」


「どうしました風様…これって…」


机においてあったのは金貨であった


「これ一枚で私たち二人でこのお店の料理一通り食べてもお釣りがきますね…」


…そんな物が手元に三枚


「…華琳様兄上にいくら預けてるんでしょうか?」


「華琳様からの小遣いのようですから曹家の私財でしょ〜ね〜、お兄さんをどれくらい心配してるか、わかりやすいですね〜」


「さ…さすが華琳様…曹孟徳様の愛の形ですか…」


「涼華ちゃん、一枚はありがたく使わせていただいて残りはお兄さんに還しましょう」


「あ、はい、…って使って良いんですか?」


「華琳様からのとはいえ私達は『お兄さんから』もらったので〜」


と、風が食事を始めたため涼華も一緒に食べはじめた



……


………


「一刀殿!!」


ガチャリと開けた部屋はもぬけの殻だった


「いないか…少し待つか」


部屋の椅子に腰掛け愛紗は待つことにした


一方その頃


「愛紗!!」


ガチャリと開けた扉の先には


「愛紗ならいないのだ〜」と、鈴々と桃香がベットで寝転んでいた


「どこに行ったか知らない?」


「わかんないのだ」


「多分ご飯に行ったんだと思います、星ちゃんと紫苑さんが引っ張って行きましたよ、何だか愛紗ちゃん様子がおかしくて…」


「…そ、そうか」


「一刀さん、愛紗ちゃんが様子のおかしい理由、何か心当たりありませんか?」


「…あ〜、うん…ちょっとね…」


一刀はここに来るまでの事の顛末を話した


「…なぁんだ〜、そんな事だったんだ〜♪」


「いや、そんな事って…」


「大丈夫ですよ一刀さん、愛紗ちゃんが泣きそうな顔をしていたのは多分別の理由ですから♪」


「桃香!理由わかるのか!?頼む!教えてくれ!」「だ〜め♪一刀さんが愛紗ちゃん本人に聞かないとね♪さ、愛紗ちゃんを捜しに行って、一刀さん」


「あぁ、わかった、ありがとう」


一刀は扉を閉じた



……


………


とりあえず一度自室に戻る事にした一刀、星と紫苑さんが連れ出したとは聞いたが二人共帰っておらずとりあえず捜しに行く用意ぐらいしようと思ったからだ


しかし部屋に戻ると自分の部屋が開いている、出る時確かに閉めたはずなのに…


まさかまた涼華…俺の部屋に…


「コラッ!涼…華…?」


そこにいたのは涼華ではなく愛紗だった


長いこと待っていたのだろう、椅子の上で膝を抱えるように座り眠ってしまっている


「…随分待たせちゃったみたいだ、ごめんよ愛紗…」


とりあえず毛布を彼女の身体に掛け寒くないようにしなければ


毛布をかけようと彼女の正面に立った時気付いてしまった…


彼女の格好=体育座り


体育座りの正面=男のキルゾーン真正面




…いや、つまり、視線がね…太ももの付け根辺りに行くわけで…


一刀は急ぎ後ろに回り込んだ


「…ふっ、勝ったな」


などと勝利宣言してみる、俺は誘惑に勝ったのだ


後ろから毛布をかけ直すと…白いうなじが見える…


「…綺麗な首筋だなぁ…」


…やばい、すごい良い香りがしてくる…


「そういえば関羽って正史上では『美髭公』って呼ばれてたんだよな、なら愛紗は『美髪公』ってとこかな…」


華琳が固執するわけだ、撫でてみたくなるほど綺麗な黒髪である


「ちょっとだけ、触らせてもらおう…かな…」


そ〜っと頭頂部辺りを撫でてみる…


「…やばい、指通る音聞こえそうなくらいサラサラヘアーだよ…」


…髪留め解いちゃまずいかな?


「…いや、寝てるのに髪留めしたままでは髪が傷んでしまう、これは当然の配慮だ」


と、言い訳しつつ


「…では失礼します」束ねている薄い桃色の髪留めを解く、黒髪はまるで流れ落ちる水のように椅子の背を隠すように拡がった


「……綺麗だ……」


髪一本一本が蝋燭の明かりを照り返し、光の川を創る


その髪と真っ赤に染まった肌の対比が彼女の美しさを際立たせているようだ



…ん?真っ赤に染まった肌?何で真っ赤になってるんだ?


「…ねぇ愛紗」


「………」


「…起きてるよね?」


「………………はい」


毛布を下ろしながら起き上がった彼女の顔は赤く染まっている


「…えと…何処から気付いてた?」


「た、多分、随分待たせちゃったみたいだ…くらいからかと…」


思いっきり最初から!?


「あの…一刀ど…」「ごめん!本っ当にごめん!!俺武人相手にかわいいなんて失礼な事言って!今だってそれを謝るつもりだったのに髪を触ったり失礼な真似を…謝って許してもらえるような事じゃないけど…本っ当にごめん!!」


日本式の土下座ではこっちでは通用しないが俺なりの誠意を込める


「一刀殿、顔を上げて下さい…私も貴方に謝りたい事があるのです」


「え?」


「一刀殿、申し訳ありません!」


がばりと頭を下げる愛紗


「あ、愛紗!君が俺に謝る事なんて…」


「いえ…一刀殿、聞いて下さい、実は先程一刀殿が謝って下さっていた件は勘違いなのです…」


「勘違い?それはどういう…」


「あ、あの…えと…そ、その…ですね…わ、私は…ですね…」


今しかない、思いを伝えるのだ、逃げ出したい自分を必死に鼓舞する


「わ、私は…一刀殿に…か、かわいいと言われて…う…嬉しかった…のです」


…言った、言ってしまった…もう後戻りはできない


「一刀殿に褒められ、動揺してしまって…あのような態度を取ってしまい、申し訳ありませんでした…」


…一瞬の沈黙、そして


「良かったぁ〜…」


一刀が大きく息をついた


「か、一刀殿?」


「はぁ〜、良かったぁ〜…俺愛紗に対してすげぇ失礼な事しちゃったのかと思って許してもらえないんじゃないかと…」


「そ、そのようなことはありません!私は!私は一刀殿が……なのですから…」


「え?今なんて…」


愛紗、今とんでもない事を口走ったような…


「で、ですから私はか、一刀殿の事が…す、好き…なのです…ご迷惑…でしょうか?」


「…い、いや…そんな事ないけど…」


「良かった…」


頬を赤く染め、咲き誇る花のような笑顔を向ける愛紗


一刀はそんな愛紗がどうしようもなく愛おしくなり自然と抱きしめていた


「か、一刀殿!?」


「ごめん愛紗、愛紗があんまりにもかわいいから、もし嫌なら突き飛ばして逃げて」


「…私の気持ちはお伝えいたした通り、貴方を拒む理由はありません…」


「ありがとう…愛紗」


ゆっくりと重なる二人の唇


「わぁ…愛紗ちゃん良かったねぇ♪」


「桃香殿少し押しすぎですぞ…これ以上扉が開いてはまずい」


「愛紗にゃんにゃんするのだ?鈴々も混ざるのだ!」


「鈴々ちゃん、ダメよ…愛紗ちゃんはこれから初めての女の喜びを知るの、邪魔しちゃダメ!」


「し、紫苑さん、声が大きいよ〜…」


上から桃香、星、鈴々、紫苑の会話である


星と紫苑は酒場で別れたのち紫苑が星を連れて来る形で、桃香と鈴々は一刀を追うような形で来たのだった


紫苑は星が一刀への思いを胸へと秘めその思いが一時の気の迷いで終わるのを待つ気でいるのに気付いていた


しかしそれほど簡単に区切りが付かないのが恋である、紫苑は星をこういった場面へと連れて来る事によって星があっさり諦めるのか自分も一刀とそういった関係になりたいのかを調べる荒療治を敢行したのだ


…で、紫苑の診断結果だが残念ながら後者、重症の判定である


星の性格上ここであっさり諦めるというタイプではない、紫苑は密かに初恋に燃える愛紗と星の恋の鞘当てを期待していた


しかし紫苑が期待する『愛紗と星』の恋の鞘当ては彼女の予想の範疇を超える事になる、…さすがの紫苑も己のあずかり知らぬ所に伏兵が潜んでいるとは思いもしなかったのである…

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