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31話 交えた刃に思いは乗らず

「でりゃあぁぁ!!」


裂帛の気合いと共に迫る破壊の一撃、それは剛剣にして流麗、流れるような太刀筋を描き俺の頚を狙う


「うおぉぉぉ!!」


俺にはかわせないと判断し、『神速』をもって相手の剛撃を迎え打つ


さて、今俺と愛紗は試合しているのだが何故こうなったかは俺自身は良くわかってない…


今から2時間程前、愛紗が

『本日の行軍の合間に一手お相手願います』

と言われ、休憩野営地の脇の広場で俺と愛紗は対峙している


互いの武器は双方とも練習用の刃こぼれした槍に布を巻いた物、威力はある程度抑えられているが当たり処が悪ければ骨折ぐらいする為互いに力は抜けない


「一刀殿、突然のお誘いを快諾していただき誠に感謝しております」


構えを解かず目礼する愛紗


「いや、良いよ、俺も鍛練の延長だと思ってやってるし、正直あの関雲長と試合えるなんて光栄だしね」


愛紗の顔にさっと朱が指す


「あ、ありがとうございます、一刀殿」


わたわたと礼を返す愛紗の姿が何となく華琳と話をしてる時の鼻血軍師を連想させる


「ふふっ」


「なっ!?一刀殿!今笑いましたね!?」


「ふふっ、はははっ…ご、ごめん…愛紗があまりにもかわいくてつい…ははっ」


その瞬間沸騰した様に顔が真っ赤になる愛紗


「ぶっ、武人に対してし、失礼ですよ!!か、か、かわいいなどと軟弱な…」


「…ごめん」


一刀がばつが悪そうにすると愛紗にも気まずい空気が漂う


…そのままもう一度打ち合う気にはならずどちらともなく刃を下ろした


「…今日はここまでのようですね」


「あぁ…ごめん、愛紗」


礼をして下がって行く一刀の後ろ姿を愛紗は黙って見送るしかなかった…



……


………


「うわ〜ん!!私はなんと愚かなのだ〜!!」


あの気まずい試合の後半日程行軍を続け次の宿場町へと到着した一行、現在休息中の為各々好きな所に繰り出してはいるが紫苑と星は愛紗の事を気遣い酒場へと連れ出した


「まさか試合とは言え好きな男からかわいいと言われ全否定するとはつくづく不器用なものよな愛紗」


メンマを咀嚼しながらビシバシ痛い所を突きまくる星は間違いなくドS属性持ちだ


「星ちゃん、愛紗ちゃんをあまり虐めないの、好きな人に急にあんな事言われたら誰だってああなってしまうものなのよ」


ヨシヨシと愛紗の頭を撫で付ける紫苑はまるで璃々をあやしてるようだ


「うぅ…明日から私は一刀殿にどんな顔をして会えば良いのだ…」


いじいじといじけ始める愛紗…


「1番、何も無かったかの様に振る舞う」


「…無理だ…一刀殿とぎこちなくしか話せない自分が目に浮かぶ…」


「2番、昨日の気にしてますという顔で会う」


「一刀殿に気を遣わせる気か!?」


「3番、昨日の件をすぐに謝る」


「…それが良いか…」

「いいえ、それでは良くないわ」


「な、何故だ紫苑?」


「明日なんて言ってないで今行くの、機会はいつもあるわけではないのよ」


「…そ、そうだな、紫苑の言う通りだ!ありがとう!紫苑!星!」


「ふっ、私はただ好きな男に大敗を喫したお主を笑いに来ただけだ」


くいっと杯を煽る


「あらあら、私に愛紗ちゃんに少し助言してほしいなんて言っていたのは誰だったかしら?」


「はて、いったいそれはどんなお節介やきであろうな?」


「星…」


「…愛紗、お主私達の助言を無駄にせぬつもりなら早く行け、一刀殿の閨に誰か来てしまうぞ?」


「すまぬ星!恩に着る!」


愛紗は店を飛び出して行った…残された二人は…


「星ちゃん、貴女も随分損な性格ね」


「何の事だ?紫苑」


紫苑の言った意味がわからないと素知らぬ顔で杯を煽る星


「貴女は愛紗ちゃんに譲ってしまって本当に良かったのかしら?」


「………」


何も言わずに杯を煽る星


「本当に蜀の娘達は素直になれない娘達ばかりね…」


星の瞳から一筋の滴が流れた…

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