26話 運命を知る者
三人娘の出立からはや二週間、蜀のみんなの滞在が明日で終わるとの事
この数日で彼女達みんなとかなり仲良くなってたのでちょっと寂しかったり
(桃香の侍女の月ちゃんと詠に恋の副官である音々音に紫苑さんや璃々ちゃんとも仲良くなりました)
という事で魏の精鋭メンバーと一緒です(あまり役に立たない娘達はお留守番です)
メンバーは
華琳(こりゃ当たり前)
秋蘭(これも順当)
流琉(日持ちする料理や材料の選別の為)
稟(妄想さえなければまともな意見が期待大)
風(時々出てくる意見は思いも寄らぬアイデアか!?)
上記メンバー以外は推して知るべしだ
「一刀、貴方はどうするつもりなの?」
「う〜ん、形として残る物の方が良いかなくらいしか考えてなかったからみんなの意見を聞こうかと思ってたんだけど…」
「うむ…だとすると蜀で手に入れにくい織物や服が良いと思うが」
「それくらいかな〜…」
捻りもなにもないが背に腹はかえられない、この際それで…
…
……
………
服屋の多い通りに移動し物色開始
女性陣にはこの際下着類で良いのを選んでもらうとして、俺は華琳、秋蘭の二人と共に服を探す事にした
…
……
………
「なんだか蜀の娘達に合う『これだっ!!』ってのがなかなかないんだな〜」
…俺程度の見立てでは彼女達の可愛さを十分に引き出す事はできない、だから目の肥えてる華琳か華琳の服を選ぶ秋蘭に任そうと思い俺は一旦他に何か良い物はないかと外に出た
通りのめぼしい店はあらかた見てきたが一軒の服屋の脇で目が留まった
「こんちは〜」
「はい、いらっしゃいまし、何かお探しですか?指輪、腕輪、首飾りなど女性への贈り物に如何です?」
俺が目を付けたのは装飾品の露店だった、なるほど、こっちではなかなか装飾品などを着ける文化が無いのでこの機会に彼女達にプレゼントしてみたらもしかしたらいけるんじゃなかろうか?…よし!これにしよう、指輪はなんか結婚の申し込みみたいだからだめそうだし、首輪だと武将の娘達の訓練などの邪魔になるので腕輪にしようか
えっと、桃香、愛紗、鈴々、星さん、月ちゃん、詠、恋、音々音、紫苑さん、璃々ちゃん、白蓮さんで
「この腕輪12個下さい」
「う、腕輪を12個ですか!?…さすがは御遣い様、豪胆でいらっしゃいますね」
まぁさすがに12個まとめて買う人間はそうそういないだろうからね
「嵌め込む石はどれに致しますか?」
「はめ込む石って?」
「こちらです」
そういうと脇にあった棚から色とりどりの石を取り出す露店商
「こちらの石から一つにつき二つお選びいただいて相手に合わせてお作りしてるんです」
おぉ!これはなかなか…
「…でもそれって結構時間かかるんじゃない?」
明日まではさすがに…
「そうですね、12個ですと夕方までかかってしまいますね」
やっぱり…って夕方!?
「夕方までで出来るの!?」
「はい、さすがにいますぐとは参りませんが夕方まででしたらなんとか…」
「是非お願いします!…あ、それから12個じゃなく13個でお願いします」
「わかりました、では夕方まで必ずお城の方へ届けさせていただきます」
そういうと何故か荷物をまとめて隣の服屋に入ってく露店商のおじさん
「露店商は趣味で、本来はこの店の店主でして」
なかなか面白いおじさんだった…
…
……
………
とりあえずプレゼントの準備はOK、夕方届くまで華琳達の手伝いをすれば…
って、えぇ!?
華琳と箱の山が来る!?
「一刀、どこに行ってたの?早く荷物を持ちなさい、秋蘭と流琉が大変でしょ」
…手元から2mくらいだろうか、実質3mくらいの高さで箱の塔が二つ並んでる…
「華琳、どれだけ買ったの?」
「蜀の王達に失礼な真似はできないでしょ、それに来てない娘達もいるのよ、これくらい当然だわ」…しまった!?俺いない娘達の事考えてなかった!
「…華琳、ゴメン、俺もう一回…」
「北郷、蜀から来ていない人員は、6名だ」
「ありがとう!秋蘭!」
…
バンッ!
「ごめんなさい!腕輪6個追加お願いします!」
「はい、ありがとうございます、お届けは夕方で結構ですね?」
「…あの〜…6個追加…」
「はい、ですからお届けは夕方、遅くとも日の入りまでにはお届けします」
「…お願いします」
…ここの職人って一体何者だろう…
…
……
………
「全員分の注文してきたよ、夕方までには届けてくれるってさ」
「貴方はいったい何を贈るつもり?」
「まぁ当日のお楽しみって事で、心配しないでくれ、結構自信あるから」
「では明日どんな物を贈ったか、楽しみにしておくわ、貴方の見立てがどれほどか楽しみね」
「ハハハッ、期待しててよ、っと、秋蘭荷物持つよ、流琉も俺に任せて」
「兄様、私のはかさ張るだけで重くないですから」
「ならば流琉、私は北郷に持ってもらったから半分持とう」
「ありがとうございます、秋蘭様」
風や稟とも合流しワイワイやりながら歩いていると
「…よく戻られた…お若いの…」
唐突に声をかけられた
そこに居たのは…
「…管輅」
「…戻ってきた、という事は…お主はこの世界の未来を…諦めてはいない…のだな?」
やっぱりすべてお見通しってわけね
「あぁ、貂蝉から聞いた、この世界を壊そうとしてる奴らの事を」
「…お主がこれから歩むのは茨の道…救う為にいくつもの命を奪い…常に死と隣り合わせの戦いに身を投ずる事になろう…それでも…ゆくのか?」
俺は強く頷く
「あぁ、俺は自分の大切な人の為に戻って来たんだ、それを奪おうなんて誰にもさせない」
管輅がそれを聞いて小さく頷く、その目は俺には今の俺の言葉を喜んでいるように見えた…
「…お嬢さん…いや…覇王…曹孟徳殿」
「何かしら?」
「主の定めし天下…今一度大乱に呑まれ…国の在り方を見失う…しかし夢々忘れる事勿れ…お主の隣には常に天がありし事を…」
「えぇ、私が定めた天下は私が良しとするまで私の物、他者の自由になどさせないわ」
さも当然のように曹孟徳は答えた
「その通りだ…天下は主の定めし物…何人たりとも自由には出来ん…お主がたった一つ自由に出来ぬもの…北郷一刀を除いてな…」
「一刀を自由にできない?それには何か理由があるのかしら?」
「北郷一刀にはこれからいくつもの試練が待つ…それは魏の国だけでなく他国をも巻き込む大乱となりすべてを救えぬ限りこの世界の運命は変わる事はない…北郷一刀はこの世界を救う為王の下を一時離れねばならぬだろう」
じっとこちらを見据える管輅、俺に対して言ってるらしい
「俺の意思は決まってる、教えてくれ管輅、俺は何をすれば良い?」
「蜀へと赴く者達と共に蜀へと向かうのだ…戦の始まりを告げる敵に出会うであろう…」
蜀…か…
「わかった」
「私は曹操殿と連絡を取れるようにしよう…占いで何か出たら速馬にて連絡をしてもらう…」
そう言っておもむろに路地の奥へと歩いて行く管輅、黒のローブが闇に溶け込む
「ちょっ!?待ってくれ!」
彼の行った路地の奥は行き止まりだった
「消えた…?」
謎の占い師との邂逅、北郷一刀の外史はこうして始まりを告げた