12話 一刀、己の意思で戦場に立つ
…今久しぶりに感じる戦場の空気、初めは死という現実が身近にある恐怖に震えっぱなしだった…
しかし今は仲間の為に戦場に立つ事ができてる、死ぬのは怖いが俺が逃げたせいで仲間が死ぬのはもっと怖い
だから俺はあんなにあっさりと今日の模擬戦にだしてなんて言えたんだろうな…
昨日の自分の言動をちょっと回想…
………
……
…
「一刀、冗談なら今すぐ取り消せば聞かなかった事にするわよ」
…華琳のこめかみ辺り、ぴくぴくしてる
「北郷、模擬戦とは言え、戻って来たばかりでは兵などろくに使えまい、…幸いお前が帰ってきてくれたおかげで皆の士気は上がっている、無理に兵を率いず、明日は華琳様のお傍に居て差し上げろ」
「秋蘭…そうしていたいんだけどさ、向こうの世界で俺がやってきた事、どれだけ通用するか試したいんだよ」
「…華琳様、私からもお願いします」
「春蘭…」
「北郷、貴様先程私の一撃を跳ね返してみせたな、あれだけの剣技を三年で体得したお前の並々ならぬ努力、私は実戦でも十分な活躍ができると思ったのだ」
「春蘭、貴方は一刀が実戦でも通じる程の力があると?」
「はい、北郷相手という油断は確かにありました、しかし振り下ろした一撃には加減は一切ありませんでした、あれならば実戦でも充分通用するかと」
…加減は『一切』無かったんだね…あぁ、今だから祖父ちゃんに感謝するよ、俺を真っ二つにならずに済むくらいしごいてくれた事に…
「ふむ………ならば良いわ、鍛えた腕、存分に私に披露しなさい」
………
……
…
と、回想終了
…で現状だけど俺は今部隊再編中、春蘭、秋蘭、霞の隊から元々北郷警備隊所属と俺のいた当時の凪、沙和、真桜の隊の人間を回してもらって一万の部隊を組んだ
見知った顔ばかりの部隊の連中は俺が来た途端割れんばかりの歓声で迎えてくれた…
んで更に北郷隊、凪隊、真桜隊、沙和隊の四つに分けてそれぞれ、北郷隊は弓兵、凪隊は騎兵、真桜隊は槍兵、沙和隊は剣兵の四兵種に別れる
…ちなみに春蘭の突撃隊だけで三万、霞の遊撃隊で騎兵の一万二千だから一隊平均二千五百の内の軍勢などろくな戦はできない
…後は腕の見せ所、1番少ない俺の隊を弱卒だとは思わせず戦うにはどうするか
…簡単だ、1番少ないのを利点にしてしまえば良い
「…最初は弓隊からだな」
…陣中央では華琳が号令を始めるところだった
華琳には先程俺の名前を号令で使わないように頼んだ、これで俺の存在を知ってるのは魏の将と部下の一万だけである
華琳の声が途切れ兵達の突撃、戦いの幕は上がった
「北郷隊前進っ!!向こうの槍兵に矢を射かけろ!!…同時に沙和隊は親衛隊の右手に援護に行く!!」
「サー!イエッ!サー!!」
…さすが沙和の鍛えた隊、一切澱みなく行軍していく
「凪隊左翼鶴翼陣形展開のままで向こうの騎兵を半包囲、大将は張遼将軍に任せて張遼隊と連携しながら殲滅、真桜隊はこのまま呂布の突撃を止める!!」
赤い騎馬にまたがる将の突撃に周りが道を譲らざるおえない
突撃する呂布隊の速度があがる
…その瞬間俺の後ろに上がる『許』の旗
と同時に俺の前に展開する槍襖
呂布はすくんだ部隊を残し槍襖を破壊しつつ突撃を止めない
…さすがは三国最強と呼ばれた武力本物だ…
俺の前で馬を止め小首を傾げる呂布
「…ん?、季衣じゃ…無い……誰?」
「ごめん、騙したりして、俺は北郷一刀、前は天の御遣いって呼ばれてた」
「御遣い?…魏のみんな…好きな人?」
「そうあってくれると嬉しいんだけど…」
…生憎一人とはとびきり相性が悪い
「…恋は、呂布…字……奉先…いく」
ゴウッ!!っと呂布の一撃が迫る
上段の構えも何もない所からの一撃、それ故に無駄が一切ない
鐵斎を下段から跳ね上げるように呂布の一撃に対応させるが
ガンッ!!と激しい衝撃と共に2〜3歩たたらを踏んだ
「…ん?…ん〜、下からなのに…重い…季衣みたい」
「…お褒めにあずかり恐悦至極、少し俺と付き合ってくれよ!!」
鐵斎を水平にし身体ごと突進する
「…無駄」
横薙ぎの一撃刃で受け、跳ね上がった刃を振り下ろす
水平にした奉天画戟で止められたが向こうが次の一撃を放つ前に間合いを開ける
「…春蘭…みたいに重い…でも霞みたいに…速い…最初…のは、季衣みたいだった…」
「さすが呂布…あれだけやっても駄目か…」
…まだネタはあるが正直呂布相手にはネタ切れかな?
「…次…いく」
呂布が一気に間合いを詰める
と
ドーン!!ドーン!!
模擬戦終了の合図
季衣が劉備さんを討ったのだろう、蜀の陣地で白旗が上がってる
とりあえず蜀の陣地に移動だ
………
……
…
「昨日とは逆になったようね」
ニコニコと劉備さんを見下ろす華琳はとてつもなく上機嫌だ
「はう〜、やられちゃった〜」
劉備さんがへこんでる
「桃香様、守り切れず申し訳ありません」
「桃香お姉ちゃん、ごめんなのだ」
関羽と張飛も残念そうだ
「…桃香…負けた?…」
「ごめんね恋ちゃん、恋ちゃん頑張ってたのに」
「そうだ恋、お主『許』の旗と戦っていただろう、指揮官は誰だった?」
「そうなのだ!!ツルペタ春巻後ろに回り込んでたのに旗なかったのだ!!ずるいのだ!ツルペタ春巻!!」
「誰がツルペタ春巻きだぁ!このちびっこ!!」
「鈴々ちびっこじゃないのだ!!胸だってお前より有るのだ!!」
「言った…」
「季衣、そのくらいにしとかないと…、ズルしたのは事実だしね」
「うぅ〜、兄ちゃんがそういうなら…」
渋々季衣が下がるのを見ながら前に出る
「お久しぶりです、劉備さん」
「えぇっと、どなたでしたっけ?」
「北郷一刀、前は天の御遣いなんて呼ばれてました、反董卓連合の時以来ですかね」
「あぁ!」
良かった、思い出してもらえたようだ
「恋…戦ってた」
何故か俺の服の袖を掴みながら呂布が言う
「北郷殿の隊でしたか…、という事は左右に散開していたあの部隊は…」
「あれも俺の部隊ですよ、関羽殿」
「じゃあ中央で戦ってる部隊以外の部隊は全部指揮官不在だったわけか、指揮官不在であれだけの騎馬の動きとは恐れ入るなぁ」
公孫讃が賛辞を送る
「いや、正確には指揮官は居たんだ、俺は最初の大まかな指示をして他の将軍達に預けただけさ」
そう、種を明かせば俺は四つに分けた隊の指揮を騎兵は霞、弓兵なら秋蘭、剣兵は副官の女の子(…名前聞かなかったから後で聞いておこう、有名武将かも知れないし)に預け自分は二千五百のみの指揮に集中するという『丸投げ』をやったのだ
だが侮る事なかれ、霞隊の神速の突撃力に凪隊の粘り強い戦闘スタイルである、中央から突破をかける霞隊を止めたいのに外を囲む凪隊のしつこさは半端ではない、内を助けに行くと外を潰され、外でもたつくと内が瓦解するなんとも嫌な戦闘スタイルが出来上がる
おかげで公孫讃と趙雲は自慢の加速力をフルに使えず霞に止められっぱなしだったのである
関羽殿、張飛殿、黄忠殿は春蘭、流琉、秋蘭を当てた
関羽殿と春蘭の実力は拮抗してるし、季衣の扱いに慣れてる流琉は張飛殿には適役、秋蘭は言わずもがなな状態とくれば後は季衣の部隊に凪、沙和、真桜の三人娘を張り付けて本隊を真後ろから強襲したのだ
「しかし北郷、良く呂布相手にあれだけ持たせたな」
「いや、秋蘭、俺は何もしてないよ、ちょっと小細工しただけさ」
隣で服の袖をつまんで居た呂布が首をフルフルと横に振った
「強かった………」
何か考えてるようだが…
「名前…なんて…呼ぶ?」
「あぁ、俺は北郷一刀、真名はないから一刀って呼んでくれ」
「…恋の事…恋て呼んで…良い…」
「真名を預けてくれるのかい?」
コクリと頷く
「一刀…恋より強い…だから預ける」
周りがどよめく
「ま、待ってくれ恋!俺が恋より強いわけないよ、俺は人を真似るだけで精一杯で…」
フルフルとまた首を横に振る恋
「一刀…少しずつ…恋も真似してた…続いてたら…負けてた…」
「流石北郷殿、恋が認める程の武、感服いたします」
「ちょっ!?関羽殿、恋は謙遜してるんだよ、俺はそんなに…」
「いえ、恋は謙遜などしません、自分が感じた通りに口にしたのみ、北郷殿の実力は本物でしょう」
「そうなのだ!恋は謙遜なんて知らないのだ!!」
「いや、張飛殿まで…」
「…一刀、見苦しいわよ、あの呂奉先に認められた武力、それ以上の卑下は恋への侮辱よ」
「…あぁ、そうだね華琳、ありがとう恋」
撫でるとすりすりとほお擦りする恋
「おやおや、またお兄さんの毒牙に新たな獲物がかかってしまったようです」
「風!人聞き悪い事言わない!!」
周りに明るい笑いが起こる…俺はこの時『本当に帰って来た』事を実感していた
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