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5話 切り離された世界で

 魔王城で二時間くらいは過ごしたのではないだろうか。



 俺が部屋にいないことを知って、母親が心配してしまっている可能性が高い。



 そのため、俺は急いで一階に下りた。



 ところが、母は晩御飯を皿に盛りつけている最中だった。



 俺は時計を確認する。


 時計が示していた時間は、驚いたことに俺が魔王城へ行った時間からほとんど変わっていなかった。



 俺は一度自分の部屋へと戻る。



 俺の部屋にある時計も、同じ時間を指している。



 どうやら時計が壊れているわけではないようだ。



 俺は天地之剣を呼ぶため、左手から天地刀を抜いた。



 その瞬間、俺の背後に天地之剣が現れた。



「天地刀を抜いた時は無条件で我が姿を現す。何か用か?優よ」


「俺が魔王城のある空間にいる間、こっちの世界では時間がほとんど経ってなかったみたいなんだ。何か分かるか?」


「我が知る限りではエルドラークも優のいる世界も流れる時間の速度は同じだ。しかし、魔王城の領域は今や隔絶された空間になっている。それが原因で魔王城の領域だけが特殊な時間の流れとなっているのかもしれない」



 魔王城の領域だけが時間の流れが違うことになっている可能性がある。



 確かめる必要はあるが、もしそうだとすれば、膨大な時間を一人だけ過ごすことができるのではないか。



 その時間で、何をするのかが重要だ。



「天地之剣、魔王城で俺と戦うことはできないのか?戦う練習をするためには相手が必要だろ」


「なぜかは分からないが我は今、刀として現れる以外の実体化の手段が使えなくなってしまっている。だが、戦闘訓練なら魔王城に仕掛けられた罠を使ってできるぞ」


「罠があるのか。それは、どれくらい危険なんだ?」


「罠が正常に発動すればかなり危険だが、少しだけ作動させることができるようになっている。仕掛けられた魔物を1体ずつ相手にして戦えるはずだ」


「それならまだ戦えそうだな。その時は、天地之剣も手助けしてくれ」


「よかろう。今から向かうのか?」


「いや、とりあえず晩御飯を食べないと。時間の流れについては気になるし晩御飯を食べた後はまた魔王城の領域に行くよ」


「魔王城に行くならば我を再び呼び出すがいい」



 俺は天地刀を左手にしまい、再び階段を下りて食卓に向かった。



 ご飯の準備はあと少しだったので、俺も少し手伝う。 



 準備が整った後、俺は母親と一緒に晩御飯を食べ始めた。



 母に少し話を聞くと、街は異世界から来た人々に関する話で持ち切りだったらしい。



 俺は晩御飯を食べながらテレビを見ることにした。



 テレビには、エルドラークとこちらの世界の役人が話をしている場面が映し出された。



「晴ヶ丘市に現れた集団はアストリア王国という国家より来たと発言しており、日本との交易が近日中に開始される見込みです」


「早いな」


「奇妙なことも起こるものね。危ないことが起きなければいいのだけど」


「どんな人たちが来たのかはみんなもう知ってるの?」


「母さんが最初に見た感じは武装していて危険そうなイメージしかなかったわよ。でも一応は日本に対して友好的なみたいね」



 母はそう言ってスマホで表示した画像を見せてくれた。



 アストリア王国の兵士たちのほとんどは鎧を着ていて古風な感じがするが、その兵士たちに囲まれて恐竜のような生物に乗っている人物たちは様子が違った。



 兵士より立場が上であろうその白い服装をした人間の中には、ライフルのようなものを肩にかけている者もいた。



 魔法も使える中で銃も存在するのであれば、その戦い方は未知数だ。



 しかし、母が言うようにその武装している様子からはかなり好戦的な国家なようにも思える。



 最も、国家間の交易など俺が関係することはないだろうが。


 仮にもしアストリア王国と争いが起こった場合は戦争に発展する可能性もあるのだろうか。



 そうなった場合は危険が民間人である俺や俺の周りにも及ぶ可能性はあるし、万が一の場合は俺も戦うことになるかもしれない。



「まだアストリア王国の人たちはこの国に入り続けてるの?」


「いや、もうかなりの人数がいるみたいだけど、まだ新たに入ってきているということはないみたいよ。アストリア王国と日本を行き来している連絡役の人たちがいるみたいだけど」


「まだ日本からアストリア王国に行った人はいないんだよね」


「そうみたいね。優、アストリア王国の件は落ち着くまで首を突っ込んじゃダメよ。あなたはのめり込むとすぐ突っ走っちゃうんだから」


「分かってるよ。それに、まだ一般人の俺が関わる機会なんてないでしょ」



 母には、リフィアに会ったことすら話すことはできなさそうだ。



 それでも俺が関わる機会がなさそうなのは事実だから、きっと何も問題ないだろう。



 俺は食事を終え、母に不審がられないようにいつも通り寝る支度をする。



 アストリア王国についてネットで少し調べて時間を潰し、母が寝るまで待った。



 そして母が寝たのを確認し、俺は次元の門に入る準備をした。



 冷蔵庫から食べられそうなものを持っていき、魔王城の次元の門付近から俺の部屋の時計が見えるように時計を置き、電気はつけたままにしておく。



 そこまでの準備が整うと、俺は左手から天地刀を抜き、天地之剣を呼び出した。



「魔王城に行きたい。次元の門を出してくれ」


「戦闘訓練に入るのだな。よかろう、次元の門に入るがいい」



 俺の部屋に奇妙な模様が渦巻く空間が発生する。



 その中央には魔王城の広間の様子が映し出されているため、向こうからは部屋に置いてある時計が見えるはずだ。



 俺は食料を持って魔王城に入って行った。



 天地之剣も俺の後に続いて入ってくる。



「例の罠のある部屋に案内してくれ」



 天地之剣は次元の門のある三階から一階まで降り、魔王城の入り口とは逆方向の部屋に向かった。



 その部屋は広く、奥には宝箱が置いてある。



「宝箱を開けようとすると罠が発動し、配置されているすべてのスケルトンソルジャーが襲ってくる。一体ずつ戦うなら棺桶を一つずつ開けろ」



 よく見ると部屋の壁には無数の棺桶が立てて置いてある。



 俺は、一番近くの棺桶を開けた。



 中には横たわっている骸骨があったが。俺が棺桶の蓋を開き終えるとその骸骨が動き出した。

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