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1話 魔王ゼルデミス

 魔王城へとたどり着いた俺たち5人のパーティメンバーは、おぞましい姿をした化け物――魔王ゼルデミスと対峙していた。



 体から生えている六本の腕にはそれぞれ武器を持ち、背中には片側ずつ赤と青の翼がついている。


 頭には角が生え、黒い目の真ん中に光る赤い瞳は生々しい肌と相まって血の気が引くような雰囲気を醸し出している。



 俺たちの中で一番最初に動いたのは弓使いのリデアだった。



 得意の五連続の射撃を魔王ゼルデミスに向かって放つ。



 魔王ゼルデミスは、青い翼を羽ばたかせて冷気を発生させ、矢の威力を弱めつつ、左中央の手に持った盾で攻撃を防いだ。



 その隙に剣士である俺は魔王ゼルデミスに斬りかかる。



 魔王ゼルデミスは俺に反応して左上の手に持った斧を投げてくる。


 俺はその斧を剣で受け止めるが、その間に魔王ゼルデミスは右下の手に持った棍棒を俺に振るってきた。


 俺が反応するより先にパーティメンバーで盾役のアウゼルが前に出て棍棒を受け止めた。



 その瞬間に魔王ゼルデミスの狙いが変化した。



 左下に持ったハンマーでアウゼルの持つ盾を攻撃されると、アウゼルの盾が破壊されてしまう。



 今まで装備がこんなに簡単に破壊されることはなかったため、俺とアウゼルは動揺する。



 俺は、すぐさまそのハンマーを持つ腕に斬りかかった。



 溢れ出す血しぶき、魔王ゼルデミスの左下の腕とともにハンマーは飛んでいくが、魔王ゼルデミスはそれを意に介さずに右中央の手に持つ剣でアウゼルを斬った。



 盾を失っても、アウゼルには防具がある。



 パーティメンバーの誰もがそう思ったが、アウゼルを魔の手が襲った。



 魔王ゼルデミスの剣は防具をすり抜け、アウゼルの体を切りつけたのだった。



「アウゼル!!」



 俺はすぐさまアウゼルを連れて後退し、その間火炎魔法使いのペジウスが俺たちをカバーするために攻撃する。



「ユウ、アウゼルの傷を見せて!」



 ペジウスの魔法と魔王ゼルデミスの赤い翼から放たれる豪炎がぶつかり合う中、回復魔法使いのりリネットがアウゼルの治療を始める。



 魔王ゼルデミスはペジウスと撃ち合いながらもペジウスの方に距離を詰めていたため、俺はすぐに駆け寄る。



 魔王ゼルデミスの剣のすり抜けの能力に細心の注意をしながら、俺はゼルデミスの攻撃を防ぐ。



 ペジウスの火炎魔法が続く中、魔王ゼルデミスの背後から、大きな斬撃が二つ飛んできた。



 その攻撃は魔王ゼルデミスの赤い翼と青い翼を貫通し、翼から放たれていた炎は消える。



 そして下がる俺と入れ替わりでペジウスの火炎魔法が魔王ゼルデミスを襲う。



 さっきの斬撃は、リデアのツインチャージショットだ。



 魔王ゼルデミスの両翼を破壊し、遠距離攻撃を封じたのは大きい。



 魔王ゼルデミスはペジウスの火炎魔法を受けながらもリデアの方を向き、右上の手に持った槍をリデアに投げつけた。



 リデアは横に避けるが、またしても予想外の事態が起こった。



 魔王ゼルデミスの姿は一瞬にして消え、リデアの方に現れており、リデアは剣で斬られてしまった。



 槍を投げた位置に移動するという能力を持っているらしい。



 これでパーティの均衡が崩れてしまった。



 魔王ゼルデミスは槍だけでなく最初に俺に向かって投げていた斧を拾い、こちらに距離を詰めてくる。



 ある程度の距離になると、魔王ゼルデミスは槍をペジウスの方に投げた。



 その後アウゼルを治療しているリリネットの方に走り出す。



 俺がリリネットの方に向かえばペジウスを狙うという算段だろう。



 俺はペジウスと共にリリネットの方に向かった。



 魔王ゼルデミスは斧をこちらに投げる動作に入る。



 しかし、斧が投げられる直前で魔王ゼルデミスの姿は消えてしまった。



 その瞬間、俺の後ろでペジウスの叫び声がした。



 ペジウスの胴体には、斧が突き刺さっていた。



 魔王ゼルデミスは、斧を投げる瞬間に槍の能力を使って移動したようだ。



 魔王ゼルデミスは間髪入れずに槍を今度はリリネットの方に飛ばし、すぐさま槍の能力を使って瞬間移動してきた。



 さらに魔王ゼルデミスはすでに剣を振るっており、アウゼルが体を使って受けようとするが、剣はアウゼルをすり抜け、リリネットを切りつけた。



 俺はその直後にその場所に追いつき、アウゼルが作ってくれた腕の足場を使って飛び、魔王ゼルデミスの首を斬った。



 魔王ゼルデミスは前に倒れるが、そこで見えたアウゼルの腹部に、剣が突き刺さっているのが分かった。




 俺のパーティは今まで洗練された連携によって数々の戦いをくぐり抜けてきた。



 魔王軍の魔の手から、王国を守るために。



 三年に渡るその戦いも、ようやく今日で終わるというのに……。



 魔王を倒し、共に王国に帰ろうと誓った仲間たち。



 思い出されるのは、苦楽を共にし、冒険した輝かしい日々。


 様々なことを経験し、確かな絆で俺たちは結ばれていた。



 仲間たちを失うだなんて絶対に嫌だ。



 俺だけ生き残ったところで意味ないじゃないか。



 俺は、仲間の存命の要であるリリネットの元に駆け寄ろうとするが、その瞬間に俺の足元に魔法陣が現れる。



 なぜだ、なぜこんなことに……。



 俺の意識は、そこでブラックアウトした。

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