敗残兵
俺は栄光あるアメリカ海兵隊の一員だ。
それなのに同じ小隊の生き残り10数名と本国目掛けて敗走している。
俺達に波状攻撃してくるのはこの仮想世界で冒険者と言われている異世界人や、豚、犬、小人等の化け物供。
こんな羽目になったのは3カ月前地球の数百ヶ所に異世界人が造った仮想世界に通じる穴が開いたせいだ。
穴が開いて直ぐに仮想世界の管理者を名乗る魔女のような格好をした女達が現れ、領国内に穴が開いた国々に謝罪し修復に数ヵ月掛かるからと迷惑料として数トンの金塊を置いていった事にある。
その低姿勢に相手を甘くみたのと金塊に目が眩んだ各国政府は、領国内に開いた穴から異世界人が造った仮想世界に侵攻した。
最初は順調で無人の野を突き進んだ。
だが彼方に街らしき物が見えたとき状況が変わる。
管理者達は街の手前に防衛線を引きてぐすね引いて待っていて、俺達侵略者の姿を見つけると攻撃してきた。
攻撃の主力は管理者と巨大なドラゴン。
最新鋭の戦車や航空機が投入されていたのにも拘わらず瞬く間に俺達は駆逐された。
アメリカ軍だけで無く、仮想世界に侵攻した中国、ロシア、北朝鮮、イギリス、フランス、韓国、イラン、イスラエル、トルコ等の侵攻した全ての国々の軍隊が敗北する。
その後はご覧の通り敗走につぐ敗走が続いているって訳だ。
でもチョット冷静に考えれば 勝てないってのは侵攻する前に分かったと思う。
だって俺達が知る仮想世界はゲームの中での物、翻って管理者が所属する異世界は次元と次元の狭間にリアルな仮想世界を造り上げる事が出来る程に文明が進んだ世界。
勝ち目なんて最初から無かったんだ。
辛うじて保持していた無線機に更に俺達を追い込む連絡が入る。
「穴が小さくなって来ている、早く撤退しろ!
このままだと仮想世界に取り残されるぞ!」
冗談じゃ無い。
こんな世界に取り残され異世界人や化け物供になぶり殺しにされるのも、ドラゴンの餌にされるのも真っ平ごめん。
無線連絡が入る前までは各国の軍隊の将兵は秩序ある撤退という名の敗走をしていたのに、無線連絡を聞いた後は我先に本国に逃げ込もうとする無秩序な敗残兵の群れに変わっていた。