資格
---神歴1789年,1月11日,ヘズヴェラの家---
俺は普段通り、ヘズヴェラの家で朝食を食べ、することも無いので適当に新聞を読み漁る。「"ハーデロス大統領、税金の使用用途の見直しを検討"か、そういや俺、この国の大統領についてあんまり知らないな、どんな人なんだ?」
この国の政治については、本当に疎いので、何となく問いかけてみる。
「すっごく真面目で誠実な人で常に国民の為に動くみたいだよ、支持率も結構高いみたい」
「なるほど、つまり大統領には打って付けの逸材ってわけか、すげぇな」
「聞いたところによると、大戦士連合のCEO、モーガスさんとは昔からの親友らしいね」
「モーガス...そう言えば俺、あんまり連合のことが理解出来てないんだよな...」
「まぁそうよね、あなたは収入の確保だけが目的だもんね」
「俺あんまり育ち所が良くなくてさ、国の位置関係とかもイマイチ把握しきれてないんだ、カーリティアの周りってどんな国があるんだ?」
「そうね、まず抑えておきたいのがカーリティアの北に行ってすぐの"アンベルク"ね、あそこはとっても技術が進んでいて機械の国なんて呼ばれてるわ、そして連合の本部があるのもそこ、つまり私たちは何回かお世話になるかもしれない国ってこと」
「そして次、こっからだと1番遠くて、レアス大洋を超えた西にある"ウェラル"って国ね、ここは最近じゃ滅多に見ない王制を採用している国なの、その王様がすっごいイケメンだって有名なんだけどね」
「なるほどな、理解理解」
「で次、アンベルクとは真逆の南にある"浄豪"っていう国、この国は特殊な言葉遣いとか文字を使ったりするの。確かカンタイ文字とかハンタイ文字なんて言ったかしら、この国は真ん中に大きな川があって、この一体の物流はそこを絶対に通るの、だから物資の玄関みたいな立ち位置なの」
「なんだかすげぇ国だな」
簡体文字や繁体文字というのはおそらく中国語のことだろう、つまり浄豪という国は日本語と中国語が混ざっているわけだ、これは中国語の勉強も必要だと思える。
「あ、そう言えばそろそろ来るんじゃないかしら?」時計を見ると、午前9時を指している。確かに手紙やらその類のものが来てもおかしくないような時間帯だとも思える。
すると、俺の目の前が突如にして発光した。そして、まるで遺伝子のような光線が形を作り、やがて一通の手紙へと変わった。
「この世界じゃ面白い届き方をするな...」
「へ?なんか言った?」
「あ、いやいや別に...そんなことよりこれってもう開けていいのか?」
「どうぞお好きなタイミングで」
俺は恐る恐る封蝋を剥がし、中身を取り出す。
ーーー☆ーーー
拝啓 ノルニス・エインワーンに告げる
まずは試験の合格に、祝福の意を述べる。
貴殿の戦いぶり、拝見させてもらった。あのような戦闘を試験で見るのは実に久々だった。貴殿はもしや昔何かを成し遂げた者なのではと、文書で探したが、どこにも記述がなくて驚いた。貴殿には期待している。
それでは最初の任務を与える。貴殿にはストレンジネスの隊員が潜伏している可能性のある街の偵察を行っていただきたい、身分は隠し、一般人として振舞い、相手に気づかれないようにする。
万が一、身分を気づかれ、戦闘状態に入った場合、そこから先は相手を殺害しない程度に自由に戦闘してもらって構わない。
同様の任務を他の3人に与えたので、協力して任務に取り組むように。
任務には後日出動
それでは健闘を祈る
ギル・モーガス
ーーー☆ーーー
中には免許証と少し大きな袋、そして一つ星の印が刻まれたエンブレムが入っていた。エンブレムは肩に付けられるようになっている。
「うわ、私も次の任務ノルニスと同じ場所だ、あの人仕組んだのね」
ヘズヴェラにも手紙が届いたようで、次の任務は俺と同様の物らしい。
「それじゃその任務とやらは、明日出動ってことで良いのか?」
「書いてあるってことはそうなんでしょうね」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「薄々そんな気はしていたが、なんでお前もこの任務にいるんだよ」
「別にいーじゃんかさー、これも何かの縁なんだし、気楽に行こうよ気楽に」
ヘズヴェラが同じ任務であることから、推測はできたが、本当に推測通り、ストフィーもこの任務を与えられたようだ。
「えーっと...君は...」
「トワネット・ルネストン」
「へ、へぇ...」
「何?他に何かあるの?言いたいことがあるならさっさと言えば?」
「いや別にねぇけどよ...」
ヘズヴェラとストフィーとあともう1人、弓を装備した女の子が同じ任務を与えられているようだ、なんだか幸先が不安で仕方がない。
まぁ何がともあれ、これが俺の初任務って訳だ、不備なく遂行出来るならそうしたいが、おそらくそう上手くは行かないだろうと思う。
身分を隠すため、袋に包んだ剣に触れる。やはり連合から配布された袋は配布されるだけあって特別な物らしく、鋼の匂いも気配も無い、あるのはただの重みだけ、だがそれで充分だ。自分はこれで守り守られる。安心できる。
「まずは宿を探すとするか」
支給金は一人5000テスカ(5万円)で一週間の張り込み任務、この街”ゼルウィン”は小さな街で、確かに偵察は4人いれば十分だろう
ーーーーーーーーーーーー
「えっと一週間の宿泊でお願いします、部屋数は....2つでお願いします。」
トワネットがこちらを睨んでいるような気がするし、俺もストフィーと同室はなんだか嫌だ。でも支給金は節約したいので我慢することにした。
「それでは合計1000テスカです。」
「一人250テスカだとよ」
俺は後ろに振り向いて言った
「はーい」
「了解」
「・・・」
なんか反応の悪い奴がいた気がするが、無かったことにしよう...
1人250テスカ、嘘偽りなく出して宿泊できるようになった。
階段を登って部屋の扉を開ける
「やっぱりそんな気はしていたがボロいな...」
部屋に入ったらまず、おそらくもう何年も張り替えてないであろうフローリングと、腐った木製の壁が見受けられる。なんだか凄くどんよりとした空気だ
「まぁ横になって寝れるだけマシでしょ」
「それもそうかもしれんな、それはそうと...まぁとりあえずこれから一週間よろしくな」
新型コロナウイルスの感染者が日に日に増えていますね、皆さんも感染症対策バッチリしてくださいね。
Twitter上で更新報告などをしています。もしよければフォローお願いします。
Twitter:https://twitter.com/sotan3sei2