悪夢
ノルニスとヘズヴェラちゃんと話していたらすっかり遅くなってしまった。クローバーからライラックまではおおよそ各駅停車で10分くらいか、だがこの時間になると列車の本数はとても少なくなっている。早朝と夕方は2分に一本の間隔で来る、それ以外は基本10分に一本になって、深夜になると30分に一本しか列車はこない。
僕は小走りでライラック駅に向かう「目の前で列車を逃すなんて御免だよ...ん...?」なんて呟いているとそこそこ高身長でガラの悪そうな泥酔状態の男にぶつかった
「あぁん?この俺にぶつかるとはいい度胸してんじゃねぇかようおい!?」ドンっという音と同時に僕はその男に腹を殴られた。「ゲフッ...」酔っているのかなんなのか知らないが、これはちょいとマズい、僕は体術の近接戦闘は苦手だ、だからと言ってこの男を銃撃するわけにもいかない「なんのつもりなのかは知らないけど...やめてくれるとありがたいな...」
「誰がお前の言うことなんて聞くかよ、舐めてんのか?」そう言ってその男はまた一発僕に打ち込んだ、なんなんだよコイツ、酒癖が悪すぎる、「お?コイツ銃二丁も持ってヤスよ?兄貴!!」隣にいた子分的立場の男が僕の銃に気づいた。「じゃあその銃を置いていったらぶつかった分はチャラにしてやんよ、ほら?銃置いてけ?..........グッ...!?」兄貴立場の男が突然後ろに吹き飛んだ、
「やっぱり嫌な予感がすると思ったら、俺、こういう勘は生憎結構当たっちゃうんもんでさ?オマケにお前みたいな正当性の欠片も無い奴を見てると虫唾が走ると言うか何というか」目の前には左足を上げて止まっているノルニスがいた。
「ストフィー!!大丈夫?今治してあげるからね!!」
「う、うん...」
ヘズヴェラちゃんも駆けつけてくれて、無詠唱で打撲した箇所を回復してくれた。これを無詠唱でやるなんてやっぱすげぇや...
「さてと、どうしてくれるかな?俺の友達、怪我したみたいなんだけど?回復魔法で治せるのはあくまでも表面上の怪我だけで、痛みまでは消えないんだぜ?」「す、すいませんでしたぁ!!」その男二人組は案外あっさり帰ってしまった。
「それはそうとお前大丈夫か?」「うん、平気、狙撃手になるんだからこれくらいの痛み、どうってことないさ...」「そうだな...俺たちこれからもっと痛い思いすることになるだろうしな...あ、でもお前、もう発車時間、ヤバいんじゃないのか?」「ヤバい!!急がないと!!今日はありがとう!!」それだけ言うと僕はこれまでに無いスピードでその場から走り去った」
「ハァ...ハァ...なんとか間に合った...」23時35分発、各駅停車フレイティア行にドアが閉まろうとしたコンマ数秒前になんとか列車の中に潜り込めた...
ーーSーーW--O--R--D--
---神歴1789年1月11日,クローバー,ヘズヴェラの家---
俺はふと目を覚ました、「朝か...」布団から起き上がっていつもの服に着替える。今のところは免許が届くまで遠出することはない為、剣は持たない。
「ヘズヴェラはまだ起きて無いみたいだな...というか今何時だ?」壁に掛けられた時計を見ると針は5時30分頃を指している。「よし...散歩でもしよう...」この世界じゃ5Gは勿論4Gの電波すらも当然あったもんじゃないからVTuberの配信も見れない、そう考えると少々寂しくもなるのだが。
中途半端な日の光に照らされた街を歩く、流石にこの時間はどこの店も閉まっていて、人通りも少ない、それに殆どが犬を引き連れた老人や、筋肉質な男くらいしか見受けられない。
「今日はなんだか肌寒いな...」まぁ一月だから当然っちゃ当然なのだが早朝ということもあって余計に寒く感じてしまう。「隅で暖まろう...フェビル・フレイム・リダクション」俺は簡易加熱魔法を出して暖を取った。この世界はエンターテイメント性があっちと比べて大いに欠けているが、あっちの世界では絶対に有り得ない魔法が使えてしまうため、生活環境はこちらのほうが遥かに上回っている。「はぁ...こんなのが出来ちまうなんて、とんでもない世界に来たもんだ...今日は戻ろう...」とりあえず家に戻ることにした。
「でもどうせ戻るならちょっとくらい面白いことしたいよな...じゃあ...」俺は大きくジャンプして民家の屋根に飛び乗った、そのまま全速力で屋根を飛び移りながら疾走する。すごく気分がいい、こういう体験を一度はやってみたいと思っていたのだが、まさか死ぬまでにできてしまうとは、「あ、やっべ」大通りがあって次の屋根まで距離がある、俺は更に加速し、足を踏ん張り大ジャンプをする。
家にはすぐについた。時刻は時計台を見ると6時半頃を指している。丁度いい時間帯に帰宅できた。
ーー◇ーー◇ーー◇ーー◇ーー
「.........すまない...」
少女は既に涙を枯らして立ちすくんでいた、目の前の状況を信じたくないのだろう。
「いいえ...私たち家族の運が悪かっただけです...」
彼女の両親は脈はかろうじてあるものの、呼吸をしていないために気絶していると思われる。
「いや...私が来るのが遅くなってしまったせいだ...」
「................」
「私はもう...行かなくてはならない...本当にすまなかった...」
ーー♤ーー♢ーー♧ーー♡ーー
「はっ...!!」
またこの夢だ、悪夢だ、見たくもない夢だ。
「お母さん...お父さん...」
当時の記憶が仄かに蘇ってくる。あの時、上級曹長の方が駆けつけてくれなければ私も死んでいたと思う。本当にあの人には感謝している。
「私も強くならなきゃ...」
着替えながら呟く、あの夢を見てしまうのは私が弱いということ。まだ強くなれる...
そんなことを思いながら私は部屋の扉を開いた。
東京は最近風が強くなって寒いです、防寒着が必須ですね。
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